依存魔のレビュー・感想・評価
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不自由な鳥から自由な鳥へ
ファブリス・ドゥ・ヴェルツ監督によるベルギーの闇3部作の一本。観たのは「変態村」に続いて2本目だ。
「変態村」のときにも思ったのだけれど、どのあたりがベルギーの闇なのかよく分らない。もちろん気持ちのいい物語ではないし、「変態村」はもちろんのこと、それなりに不快な作品でもある。
ベルギー人だったら闇を感じるのだろうか。分からない。
それでも、この作品を見て気になるところはある。それはポールとグロリアを助けてくれる大人についてだ。
最初のフランス人と思われる夫婦は、グロリアの話をどこまで信じたのか定かではないが、二人にこれ以上助けはいらないとばかりに自由に行動する。普通、あの状況で子ども二人を残して出かけていくか?
次にポールたちを助けてくれる、名前はヒンケルかな?。彼はポールが目覚めるなり、自分語り。互いの自己紹介すらままなっていないというのに。
最初のフランス人夫婦同様、自分中心の自由すぎる振る舞いだ。
これらのことから自己中心的な大人の振る舞いというものがベルギーの闇なのかなと少し考えた。やっぱり分からないのだけれど。
次に面白いと思ったところとして「鳥」がある。
鳥は3度出てくるが、その都度グロリアの状況などを示唆している。ポールが世話していた小鳥、ニワトリ、最後のツル?だ。
鳥について話をするポールとグロリアのシーンは実に興味深い。
あとは、「変態村」との比較になってしまうけれど、非常に映像の美しい作品であったと思う。
描かれている内容とのギャップも相まってより美しく見えた。
内容的に全く癒されないけれど、ヒーリング効果の高そうな自然の風景が連続する。
人にオススメできるような作品ではなかったと思うけれど、そこまで悪いものでもなかった。
汚れちまった悲しみに…
素晴らしい作品だ。性に芽生え、肉欲を知る前の少年と少女の純粋無垢な愛の物語。男女の性愛を未だ知らず、純然たる愛に満たされた二人。見事に浄化された愛の形である。少女は精神を病み、パニックに見舞われると凶暴になり、見境なく周りの者を傷付ける。少年は母子家庭であり、鳥だけが友達の孤独の世界に閉じ込められいる。互いの不安定な精神状態が二人を惹きつけ、究極に至る純愛を知ることになる。この監督特有の一筋縄ではいかない美しいストーリーに、映像の美しさが相俟って、自分の中で埋もれてしまった無垢なる精神を思い出させてくれた。少年少女期の夏の日々は意味を必要としない無意識の勝利による喜びに溢れ返っていたのだ。その時を切り取った稀有な映像に誰もが感動を覚えるだろう。エンディングのクロヅルの群れが大空を横切る様は、この時が永遠に続くような予感を与える。実際は一瞬であっても、その一瞬に永遠なる連続性が投影されている。これほど美しく混じり気の無い愛の作品を見せつけられると、馬齢を重ねた今となっては、表題に引用した中原中也の詩が眩しく思える。
余談だが、この邦題は何とかならないものだろうか?内容を低俗に落とし込めるのが楽しいのだろうか?オリジナルの題名(監督が意図したタイトルの翻訳は「崇拝」)からかけ離れ過ぎているばかりか、いささか悪意があるようにも思える。
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