「決着をつけたのは、信仰に基づく叡智(wisdom)」ウーマン・トーキング 私たちの選択 bionさんの映画レビュー(感想・評価)
決着をつけたのは、信仰に基づく叡智(wisdom)
全く予備知識なく鑑賞したので、時代やロケーションを推理する羽目に。
2010年の国勢調査?
アーミッシュが文字を教えないなんて聞いたことないけど?
南十字星が見えるって一体どこだよ?
トンチンカンな状態で鑑賞となったが、信仰と女性の尊厳に揺れる彼女らの真剣な議論に圧倒される。
男たちを「赦す」ことできないと、天国への門が閉ざされるという教えは、僕には博愛の極北のようにしか思えない。しかし、信仰に生きる彼女らにとっては、男らを「罰する」ことと「赦す」ことを同列に扱わざるを得ない。
そして、第3の選択肢である「leave」。これを逃げると考えるのか、新天地に向かって立ち去ると捉えるのかで、またもや激しい話し合いが始まる。
彼女たちは、教育を受けていないために文字が読めないし、基本的人権の概念も薄い。感情的なぶつかり合いになってもおかしくないが、長い時間をかけてロジカルに議論が収斂していく。
コロニーから一度抜けて大学教育を受けて戻っときた青年オーガストが、公平な書記として議論をサポートしたことも大きいが、祖母世代の女性たちが、信仰に基づいた知恵を持っていて、辛抱強く、諭すように結論への道筋を示したことが、彼女たちの団結をもたらしたと思う。
ジェシー・バックリー、ルーニー・マーラ、クレア・フォイの演技派ぞろいなので、議論に退屈するどころか、一瞬たりとも目が離せない。
音楽は、『TAR』に続いてヒドゥル・グドナドッティル。彼女の紡ぐ旋律は、心を揺さぶり続ける。
決着をつけたのは、信仰に基づく叡智(wisdom)。僕はそう感じた。
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