「信仰は解釈によって重大な間違いを引き起こす」ウーマン・トーキング 私たちの選択 カツベン二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
信仰は解釈によって重大な間違いを引き起こす
生命の安全と人間の尊厳を蔑ろにするような「教え」なんか直ぐに捨てちまえば良いのに、と部外者である自分なんかは思うのだが、当事者からすると信仰が生活の全てなわけで、そんなに簡単な問題ではない。
本作は、人を赦さない事や生まれ育った土地を離れてしまう事で天国に行けなくなるなど、古い時代に都合良く解釈された「教え」を現在の自分たちの置かれた立場に落とし込み、適正な「教え」に修正するという第一歩を踏み出せた女性達の話だと思う。
周囲との接触を避け、情報を一切遮断し、教育も受けられず文盲であるため、女性達が村の外で生活する事は実質できず、ある意味見えない『檻の中』におり、男達の都合の良い状況を作っているが、税金ちゃんと払っているのだろうし、犯罪から守られる権利をもっと主張すれば良いものを教養も情報もないため、結局は信仰に対して良いか悪いかのみで動いてしまう。
納屋での話し合いはさながらシドニー・ルメットの「十二人の怒れる男」の如く、真逆の意見がぶつかり合い、心情を吐露し、痛みを共有し、静かにそして白熱しながらも最後は皆が個々の事情や思い込みを悔い、「赦す」「戦う」「去る」の中から彼女達にとって最も革新的な結論に弾着する。
評論家好みで時代に合ったテーマと全てを説明しない堅実な脚本は、派手さはないが見ごたえのある作品に仕上げられている。
作中とエンディングで2度流れた「デイドリーム・ビリーバー」は皮肉っぽく聞こえた。
劇場内は空席が目立っていたが自分以外ほとんど女性で、終演後明るくなった時に何となく申し訳ない感じがして、目立たない様に暫くじっとしていた。
コメントする