「「暴力的表現があります」を入れてほしい。」しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 とべとべ手巻き寿司 cinemaさんの映画レビュー(感想・評価)
「暴力的表現があります」を入れてほしい。
まず最初に、「暴力的表現があります」という注記を入れてほしいです。
3D映画なので、リアルな暴力シーンが流れます。また、壁に叩きつけられたり、一回一回殴られたりするときに、殴られる効果音がしっかり付けられています。
身の回りのものが破壊されるシーンもあります。
また、映画に様々出てくる悪役の言葉づかいが汚いです。職業差別やいじめの描写もはっきり出てきます。それが大画面で流れます。
映画の最後に問題は解決されますが、シナリオ上の解決方法は、誰もに求めることはできないもののようにみえます。
製作者はこの解決方法がよいのかもしれませんが、いじめや差別の描写などを自分ごととして観た観客は、スクリーンから取り残されて救われないように思います。
また、登場人物のセリフが、主人公側も、日本社会がこれから悪くなる(良くなるかどうかわからない)という前提で組み立てられているように聞こえます。
自分たちが希望があるかどうかわからない社会にいる、と画面から言われるのは、たとえ映画の方が間違っていると思っていても、非常に辛いです。
これが大人向けの、不条理さや理不尽さが描かれることが分かっている、社会問題を描く映画や戦争犯罪を描く映画ならまだよかったと思います。
できればこういう試みは、こども向けアニメ以外のフォーマットで、試みてほしかった。
(私ごとですが、1ヶ月の食費が4万円の家では、家族4人のエンターテイメントの出費はかなり大きいです)
多大な人件費と制作費と、多くの入場料が流れたものが、期待した感情を産まないものになっているように、思います。
白組が悪いのか、スペシャルサンクスが悪いのかは分かりません。
ただ私が思うのは、この映画を観たうちの子たちに、嫌な記憶が残っていないことを祈るのみです。
「こども」は楽しませればよい、「大人」は考えさせればよい、という製作者側の考えが透けてみえるような作品のように思いました。製作者には、「こども」と「大人」の間の方がずっと長いということを分かってほしいです。
サンボマスターの歌とエンディングロールの演出はよかったです。