「ひろしはいいこと言おうとしなくていいの!」しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 とべとべ手巻き寿司 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ひろしはいいこと言おうとしなくていいの!

2023年8月6日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

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幸せ

人気テレビアニメ「クレヨンしんちゃん」劇場版の第31作。といってもテレビアニメも20年以上前に観たきりで、劇場版も1本も観たことがないのですが、初の3DCG作品ということで、どんなものかと興味をもって鑑賞してきました。

ストーリーは、ある日地球に降り注いだ二つの光のうち、黒い光を浴びてエスパーとして覚醒した非理谷充が、これまでの鬱屈した思いから世界への復讐を企む中、同じく白い光を浴びて覚醒したしんのすけが、それを阻止しようと活躍する姿を描くというもの。

テレビアニメ同様のふざけたナンセンスな展開の中にも、しんのすけの裏表のない素直な言動が観る者の心を打つ、普通にいい話でした。しんのすけや周囲の人物のドタバタぶりは、3DCGとの相性もよく、映像も見応えがありました。爆笑するほどではないですが、ギャグやコミカルなシーンを随所に仕込み、これだけ観客を楽しませておいて、終盤ではきっちりほろっとさせる展開もうまいです。しんのすけが無条件に人を受け入れ、仲間を思って果敢に立ち向かう姿は、熱く心に響きます。

もうそれだけでよかったのに、最後のひろしの話はちょっと説教くさくて萎えました。あれは蛇足でしょう。さらに「車の修理の話を」と言ってましたけど、ちょっと待って待って!充くんは世間を大騒ぎさせた犯罪者ですよ!なんとなく和やかなラストに丸め込まれそうになりましたけど、まずは充くんは自分の犯した罪と向き合い、しっかり償わねばなりません。「記憶にない」ではすみませんよね。で、身に覚えのない罪を問われて結局また闇落ちしてしまわないように、なんらかの救済シーンが描かれているとよかったかなと思います。とはいえ、エンドロールやサンボマスターの曲もよく、鑑賞後の後味はとてもよかったです。

それにしても確かにこの国の未来は明るくないですね。ヌスットラダマスや非理谷の存在は、現代社会への風刺のようでもあり、だからこそ、しんちゃんのような底抜けの明るさが求められているようにも思います。本作がなかなかおもしろかったので、これまでの劇場版や次回作も観てみようと思います。エンドロール後に次回作の予告のようなおまけがちょろっとだけあるので、これから鑑賞される方は最後まで席を立たないようにしてください。

キャストは、小林由美子さん、ならはしみきさん、森川智之さん、こおろぎさとみさんらのお馴染みのメンバーに加え、鬼頭明里さん、松坂桃李くんらがゲスト出演しています。ただ、この顔ぶれの中では、松坂桃李くんの演技がどうしても浮いてしまいます。大切な役だけにプロの声優さんを起用してほしかったですね。

おじゃる