「可哀想可哀想言うだけの先が観たかったのに」ワース 命の値段 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
可哀想可哀想言うだけの先が観たかったのに
命の値段をつけなければならなくなった主人公が、命に多寡はあるのか?と苦悩する物語だとばかり思っていた。
実際、その要素が全くなかったわけではないし、思い込んでいた自分に非があるので、違ったことによるマイナスは加味しないようにしたつもりだ。
それでも低評価になってしまったのには理由がある。
この作品が、どんな物語だったかというと、過剰なほどに被害者可哀想でしょ、遺族可哀想でしょ、そしてアメリカ可哀想でしょ、するだけのものだった。
確かに亡くなった方は悲劇である。そんなこと言われなくても分かる。そういった要素があることも構わない。しかし過剰だ。
はっきり言ってそれしかなかったともいえる。
被害者や遺族が酷い目にあったことを見るドキュメンタリーが見たいのではない。そんなものが見たいなら最初からそれを観る。
言い換えるならば、「作られた」映画が観たいのである。もう分かりきっている被害者可哀想以上の何かを、創作でもいいので望んでいるのだ。
例えば、「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」のように、被害者可哀想、遺族可哀想からもう一歩進んだ部分が欲しかった。
テーマがテーマなだけに内容が悪かったとは言いにくいし、実際悪くもないと言えるが、映画としては全く面白くなかった。
唯一面白かったと言える部分は、経済の安定のために補償金を出すってところくらいだろう。そんなこと考えたこともなかったので、最初から善意などない訴訟大国の恐ろしさを見た気がした。
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