「どんな法も保障も大事な人への気持ちには勝てない」ワース 命の値段 iccoさんの映画レビュー(感想・評価)
どんな法も保障も大事な人への気持ちには勝てない
どんな法も保障も人が大事な人を思う気持ちには勝てない。一言で言うならこれかなあ。
自分に値段をつけるならいくらか、なんて考えたくもないけど、他人に値段なんてもっとつけられないよ。
すごい仕事だったと思う。
9.11の後に犠牲者に対して支払われる保障金を決める最終的な権限を持った弁護士の話なんだけど、ものすごく考えさせる話だった。
訴訟国家なので、大企業への訴訟を避けるために国が支払うことにした補償金なんだけど、とにかく人一人の価値を数千人分だから気が遠くなる作業だった。一人一人に必ず人間ドラマもあるし。
そもそも自分はいくらだと思う?
彼は仕事から得る報酬によって保障する値段を変えたのね。
膨大な人数を相手にしなければならないので、最初は彼が決めた「それぞれの収入によって決められた基準となる補償額を配る」という提案をしたの。それに遺族が猛反発する所から物語は膨らんでいくのだけど。
弁護士側にとっては保障額を支払う手続きが終わらない限り仕事が終わらないけど、遺族にしてみたらお金だけが問題ではなくて、故人が存在してたことが大事なのよ。
見てきたわけじゃない誰かの人生に対して、見てもないのに価値を決めるなって話なんだと思う。
人間って死ぬまでに膨大なドラマを残して死ぬけど、そのドラマが他人全員に同じ場面を見せるわけではないから、その時出会った人によっても評価も変わるだろうなと思うと尚更数字にされると納得がいかないというか。
そのために基準で切って保障していこうとしたんだけど、それぞれの人間ドラマがあるし、遺族からみたら全員平等に人間だしでなぜ人によって値段が変わるんだ!になってもまあおかしくないよね。。
一言で犠牲者と言ってもさすがアメリカだから国も40数か国の国籍の人がいらっしゃったそうだし、不法滞在の人々もいたしで、本当に大変な仕事だっただろうなと思った。
併せて観るように推奨された『世界一受けたい授業』は、ネタバレ観たくなくて帰りの電車で観たけど、映画で謎だった部分の補助になってとても良かったので、こちらもおすすめ。保存しといて後で見るといいかも。
9.11を知らない今の世代の子どもたちにも観せたい映画です。
すごく泣いた場面があったんだけど、後でエエエエエと若干裏切られた気持ちになった場面もあり。