きみの色のレビュー・感想・評価
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変えられるもの。変えられないもの。
中国で開催された国際映画祭にて最優秀アニメーション作品賞を受賞した作品。
普段アニメ映画はあまり観ないのですが、たまたま空いた時間に丁度上映していたので観ることに。思いがけず素敵な作品に出会えてなんだか得した気分です😊
すごく優しいタッチで描かれたキャラクター達とその雰囲気に合った声。流れる音楽や景色、その全てが観客を優しく包みこんでくれます。キャラクター達の動きがとても可愛らしく微笑ましかったです。
ストーリーは、誰か死ぬとかゾンビが出て来るとか、重大な事件が起こるわけではありません。しかし、バンド結成の流れや、作曲のプロセス等にはワクワクしましたし、それぞれが打ち明けられない悩みを抱えていたりと、起伏のあるストーリーになっていたと思います。「色」を使った演出も良かったです。
変えられるもの。変えられないもの。変えるための行動。受け入れるための葛藤。誰しもが大小の差はあれど悩みを抱えて生きています。そんな悩める全ての人の背中をそっと押してくれるメッセージがたくさんありました。仕事で疲れ切ってた私は凄く癒されました😭
結構キリスト教が関わってくる辺り、観る人によっては刺さりにくい場面はあるかもしれません。それでも、爽やかで優しい気持ちに溢れた今作は、きっと観客の心を癒してくれるはずです。
期待外れ
本作が好きだと感じた人には、確実に気分を害する内容と思うので、読まないでください。
まず、他人の色が見えるという主人公の特性。
非SF作品でも、多少のフィクション要素が物語に彩りを与えるものだが、本作では主人公の特性が、物語の展開に全く活かされておらず、別にこの設定なくてよかったよね?としか思えなかった。
主人公は最後に、自分の色に気付くのだが、色とストーリーが説得的に結び付いていないので、だから何?という感想。
色の場面の演出も、センスを感じない。
きみの色という割に、色に物語上の必然性が与えられていないのは、いかがなものか。
次に、主要キャラの魅力のなさ。
上記のとおり、主人公の特性は全く展開に活かされないため、ただの不思議ちゃんである。
あからさまに冴えないよう描かれたルックスも相まって、現実世界なら陰湿なイジメの標的になっていてもおかしくないだろう。
きみちゃんは美少女で性格も良いようだが、これといったキャラづけもなく、ひたすら地味。
メガネ男子は見た目はイケメンだが、話し方が女々しい陰キャで、主人公やきみちゃんとの恋愛展開もない。
制作陣は何故わざわざ男子を配置したのだろう?
主人公は男子禁制の全寮制女子校で、異性との交流が固く禁じられている設定と思われたが、メガネ男子は当たり前のように主人公らと組んでバンド出演を果たし、そこに何の葛藤もない。
正直な話、知的で生白いイケメンとバンドを組んで青春を楽しみたかったという、オバ…中年女性の気味の悪い妄想を見せつけられたのではないか?
※中年のリビドーを反映した作品自体を否定するわけではないが、こちらは爽やかな(ほろ苦い)青春映画を期待して行ったのである、、
最後に、ストーリーの薄っぺらさも指摘しておく。
(観客の立場からは)よくわからないきっかけで、きみちゃんとメガネ男子は、家族と向き合うことを決意したようだが、そこの過程は殆どすっ飛ばされてしまった。
それぞれの家族にライブ観に来てくださいと懇願し、それに対する家族のアンサーも描かれることもなく、ライブの場面へ。
ライブ後は適当な後日譚が描かれ終了。
何なのこの茶番?
かといって音楽活動に向き合う描写もない。
主人公やきみちゃんは初心者だという割に、なんの葛藤もなく作品を完成させているし、メガネ男子も、親に隠れてという割に何の障害もない。
水金地火木土天アーメンは耳に残る良曲で、その評価としてギリギリ星0.5をつけます。
上映時間中、ひたすらつまらなく、苦痛でした。
本作が気になる方は、サブスク配信で十分です。
※追記
ある人が「この作品は、あえて嫌な部分を徹底的に排除して、女の子からみた綺麗な世界のみ描いている」とレビューされていたのを拝読し、腹落ちした。
なるほど、たしかに本作には主人公らに対して嫌なことを言う奴が全く出てこない。同級生も、教師も。
そういえば、父親も出てこない。
※見送りの場面で父親が出てくるとの指摘を受けたので、訂正します
主人公以外の二人は父親不在の家庭であることが明示されているが、両親がいるはずの主人公も、何故か、母親しか会話のシーンがなかった。周りの大人たちは、主人公らに暖かい声援を投げかけこそすれ、厳しく説教はしない。
そのような方針で作品を作ったようであることは、何となく理解できたが、なおさら、この作品を通して観客に何を伝えたいのか、私には理解できなかった。
※再追記
様々なレビューを読み漁ってみたが、結局のところ、本作はそれっぽい雰囲気とビジュアルを楽しむべきもので、(公式サイトの宣伝を事前に読んだ上で)青春映画として期待して観てしまったのが、そもそも間違いだったように思う。
酷いというより、私にとって期待外れでした。
ストーリーを省き過ぎ
大筋のストーリーは悪くはないのですが、各キャストの生い立ちや、各エピソードが細かく描かれていないので作品に入って行きづらいです。
極力、無駄を省いて雰囲気に浸る作品にしたかったのかも知れませんが、私はストーリーを細かく追いかけながら鑑賞するタイプなので、ちょっと物足りなさを感じました。
他人の色が見えるという設定についても同様で、細かい人物描写よりも雰囲気で表現したかったのだと思いますが、私としては色なんか見えなくていいから、ストーリーを細かく描いて欲しかったです。
印象派?
きみのギターを弾くシーンが良かった
全寮制のミッションスクールに通うトツ子は、幼いころから人が、色、として見える特異な能力を持っていた。そんなトツ子は、同じ学校に通っていて美しい色を放つ少女・きみ、と出会い、また、街の古書店で出会った少年・ルイと意気投合し、3人でバンドを組むことになった。古い教会を練習場所にし、3人は音楽によって心を通わせていき・・・という話。
ほんわかした絵のタッチで優しさに包まれる様なストーリーが良かった。きみがギターを弾いてるシーンが個人的には1番良かった。タイトルの、きみの色、はきみのことなのかな。
トツ子役の鈴川紗由の声はほのぼのとしてて聴き心地良かった。きみ役の髙石あかりはキャラに合ってた。
シスター日吉子役の新垣結衣は優しく包むような声で凄く魅力的だった。ガッキー、声優だけでもいける、と思う。
欲を言えば、きみがギターを弾いてる時の手の動きと音がズレてて気になった。難しいのかも知れないが、そこはなんとかタイミングを合わせて欲しかった、と思った。
映像美と設定が良い!観て良かったです!
総評
脚本と絵作りの勉強として観ました。とても勉強になりました。
アニメーションの表現が素晴らしく、また観たいと思える作品です。
以下、評価。私の戯言です。世間との良い悪いのズレがあると自分
でも感じています。
表記
主人公
青の女性
緑の男性
良かった点
〇始まりは設定の説明。主人公は他人の色が見える。
聲の形とかと一緒で、脚本の中に非日常要素、魔法が1つだけ使える
としたら、この設定は最高。すごい思いつき。
〇日常から青色の女性を好きになるシーン。そして、青色の女性が
突然学校を辞めて、主人公の日常からいなくなる事がきっかけで
1stターニングポイント。ここまでめっちゃ好き。
〇本屋で主人公が行動した事で、青と緑、縁が繋がった表現好き。
〇お楽しみシーン、音楽を通して仲良くなっていくシーンが、プラス
の事柄とネガティブな事柄がうまく回転していて、観ている人の心
を揺らすのが上手だ。
〇クリスマスプレゼントのシーン、色が視える演出好き。
〇音楽作ってる時、青の悲しみの音楽を緑が包み込むシーンが好き。
改善点
〇何を基準に良い色なのかわからない。悪い人、危険な人は何色なの?
色別する能力の説明不足。
〇あの本屋何?現実性皆無の表現は好みの問題なんだろうけど、ネコを
追ってジブリの世界にでも迷いこませたいのか。作者の想い?
〇サブプロット色々詰め込んでるが回収されず、もしくは弱い部分がある。
〇特に最後まで引っ張った青色の女性が学校を何故辞めたのか、が
一番引っかかった。理由が弱い。
〇とにかく青色の女性の感情が弱い。観ている私には全部は伝わらなかった。
特にサブプロットで恋愛出すなら、これでは回収できてないと感じる。
淡い恋心を演出したいとしても、これでは物足りない。
〇緑の男性の秘密、葛藤も弱い。ただ親に隠し事してるレベルでは、何そん
な事なのって思ってしまう。
〇ミッドポイントで最高潮に達して、でもそこから一気に絶望の状況もない。
だから2ndターニングポイントもなく学園祭まで行くから、物足りない。
〇青と緑の親とかへの告白の答えが、学園祭のシーンだけでは回収不足に
感じる。だって、2人ともここまで葛藤して告白を引っ張ったんだよ。
それに対応する保護者との会話作ってもいいでしょ。
脚本考えるなら
〇青と緑のサブ恋愛入れるなら、一例として緑の男性がそもそも親への隠し事
じゃなくて、忘れられない女性がいて葛藤してる事にする。青の女性がそれ
でも好きで、想いを伝えてフラれて、雰囲気悪くなってバンド解散しようか
みたいな展開の方が見やすい。それに挟まれた主人公の葛藤もここで入れら
れるしね。だって、想いの強さとか恋愛感情を色で視れるんでしょ。
青がフラれるのわかっていながら、とかの葛藤作れるじゃん。色別の能力を
設定として出すなら、重要な場面で使わないと。こんな能力持っているのは
嫌だとかの葛藤も入れられるし。
ミッドポイントで皆で音楽を作ってる絶頂期に失恋シーンいれれば、そこか
ら解散危機の絶望へ入りやすい。
そこから2ndターニングポイント作って、学園祭あるから主人公が一緒にやろう
と仲介。練習の時に作ってたあの素人感あふれるしんみりした音楽が、
青春の失恋の切なさが入って、青色の女性の歌がより際立つ。最後の見送り
シーンもまたより深みが出る。
微妙かも。でも、アウトプットはしとく。
明日へ一歩踏み出す元気をくれる映画です。
少しだけ、少しだけ足りなかったかも。
ふんわり
あらまほしきものは何ー山田尚子監督の「反骨心」により通底されたこととは
(まだ見ていない人に)
やりたいことがハッキリあって、そこに全力投球できたなら、結果がどうあれ、それは最高の青春だと思います。
けれど多くの人は、青春時代そこまで燃焼しきれず、自分がやりたいことをハッキリ捉えられず、なんだか思い通りになっていない状況に悶々として、誤魔化したりして、真っ直ぐ歩けずに立ち止まったりしていることが多かったのではないかと思います。
主人公たち三人は、まさにそんな状況です。
題材として扱っている色や音楽は、彼彼女らの心の内を表す一つの舞台装置だと思います。
音楽は何かを訴えたい人間にとっての自己表現でもあります。
彼彼女らの心が、出会いや周囲の大人たちを介して、どう変化し、開けていくのか。自分自身を見つめ、捉え、前に進むことができたのか。
それを、鮮やかな色彩と音で丹念に描いた映画でした。
ストーリーの起伏とか、凄い、圧倒的とかではなく、感性で受け止めるべき部分が多く、多くの場合、物凄く癒しになる映画だと思います。
見終わった後、鑑賞者の中に何かが浮かび上がることも多いのではないかとも思います。
映像美と音の良さ、楽曲の良さはとにかく素晴らしいので、IMAX推奨です。
舞台は長崎と五島。五島列島に一度行ってみたい人にもお勧めです。
また楽器を何かやっていた人にも、感じられる所があると思います。
(以降見た人向け、5行改行)
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この映画には物凄いハッキリした芯が通っていて、それは「嫉妬心や妬み、悪意や敵意を描かない」というものです。パンフレットでの監督コメントでは、「現実社会がストレスだらけなので、映画の中ではそれを描く必要がないのではないか、それが一つの反骨心」と。
主人公たちを見て思うのは、「ああ、こんな風に勇気を持って、やってみたい方向に向かい、最後には保護者にも向き合いしっかり説明することができていたら」
シスター日吉子を見て思うのは、「こんな風に、引き締めるところは引き締めつつ、若い子を支え、寄り添い、エンパワーメントするような指導者であれたなら」
保護者陣を見て思うのは、「言いたいこともあったろうに、それを飲み込んでこんなにも子供のやりたいことに乗っていける保護者であれたなら」
つまり、この映画は、「こんな風であれたなら」=あらまほしきもの を、それが成立するごくごく小さな世界で、色鮮やかに描いたものだと思います。
現実社会は監督の言う通り、嫉妬心や妬み、悪意や敵意、利害の衝突だらけです。ので歳を取れば取るほどシビアにしか世の中を見れなくなる。けれど、こんな風にポジティブにお互いあれたら、と言う気持ちもどこかにあったりします。
大人であればあるほどその価値は分かります。
よほど強くなければ、他人はおろか自分にもそうそうポジティブでいられないのですから。
だからこの映画は人を癒し、泣けるのだと思います。
また女性を描く上ではやはり女性監督は素晴らしく、トツ子やきみの人物造形には一定のリアリティがあったと思います。逆にルイ君は女性の願望全部乗せで男性からするとリアリティはないですが笑(高身長、医学部志望=高学歴、将来の高収入、イケメン、性格穏やか)。
またMr.Childrenの主題歌は映画のテーマや世界を捉えた素晴らしいものでした。
チャイムから始まり、一定のリズムをメトロノームあるいはマーチのように刻むドラムは否応なしに過ぎていく時間、これは同時に何かを選び、進まねばならない圧力を隠喩しているかのようです。その一方でメロディと歌詞は「迷いは去年の上着のポケットに置いてきた」けれど「心はずっと不安定でカーテンのように揺れる」と、リズムの一定感と真逆にグラグラしている様子が歌われて、最後はそれも受け入れて「好きな色を手にとって描いていい」「自由でいる方法はいくつもある」と、まだ覚束ない足取りでも自分を肯定していい、と言う所に向かっていく内容。
主人公3人はバンド活動を始めて、ついにライブまでできたけれど、まだ不安定。
特にきみは、自分の思いを言葉にしてハッキリ表現するのが苦手です。
大サビ前のシャウトは、映画のラストシーン、そんなきみの絶叫に重なります。
ああ、やっと、自分を解放できたんだな。
そういう強烈に浄化されるようなカタルシスがありました。
いや、映画っていいものですね、と水野晴雄さんのように映画館を後にしました。
消化不良。設定の曖昧さがファンタジーではドラマはなりたたない。
青春の甘酸っぱい系のアニメなのだけれど、ちょっと設定などにわかりにくいところがあった。
主人公の女の子の人が色に見えるということ、そのことがうまく消化できなかった。
色弱という障害のことを言っているのか、それとも何か特殊な能力なのか、ファンタジー的な表現なのか。そこが未消化のままドラマが進んでいき、何が伝えたいのかよく理解できない、もやもやのまま進んでいった。
18歳の女の子が高校を退学するのに、保護者の同意無しで可能なのだろうか。お堅いミッションスクールらしいのに。物語の革新部分で設定の少しファンタジーな部分が見えてくると、どうなんだろうと消化できないまま、物語の進行を見つめることになってしまう。そこが微妙な感じがした。
また、音楽が少し残念だったかな。素人の子達が作り出すバンドの音楽なのだから、感動するような演奏を期待するのは間違いだとは思うのだけれど、ラストのライブのところでそれほどのれる感じの楽曲とは思えなかった。歌詞も聞き取りにくかった。
そして、ミスチルのエンディングがかなり唐突な印象があった。正直よくわからない。楽曲に歌詞とかあってる?みたいな。
還暦前のジジイを対象にしていませんと言われれば、それまでなのだけれど、そういった点を上手に織り込んでもストーリーは立てられたようにも思うのだけれど。
学校は長崎なのだろうか。主人公の女の子が自宅に帰る際の手土産(たぶんカステラ)の紙袋のデザインに見覚えがあった。
音楽映画っていいよね🎶
内容が薄く共感できないが音楽と映像は、良かった。
普段は、アニメの映画は、見ないのだけど、長崎、佐世保市が舞台と言うことで、期待してIMAXで見てきた。世代や性別が違うからか、共感があまり出来なかった。しかし、学園祭のバンド披露時は、音楽と青春を実感出来た。特に、3曲目で生徒、シスター、お婆ちゃん、お母さんが音楽に合わせてダンスするシーンは、涙がこぼれた。ただ、残念なのは、音は大きくて良かったが、歌詞が全然聞き取れなかった。また、映像で佐世保市を実感したかったが、長崎市は、実感できたが、できなかった。エンドロールで佐世保市が見えた時、ここか~って思った。期待が大きかったため残念な、作品に写ってしまった。
単なる映画ファンではわからないような気がする
台風の中の封切り。初のオリジナル作品。山田監督を観てきたからこそ、期待感は嫌でも高まっていた。。
第一所感。正直、レビューに困る。大方の方と同様、きれいだし、ストーリーもいい。イズムはそれなりにある……けど内容の起伏が少なく、映画としてのエンターテイメント性に欠ける。物足りなさは否めない。
今日は4日目の朝。
日を追うごとに自分の誤解、先入観を感じ入る。
山田さんがしたいことは何か?
この視点が無かった。
不思議だが、本作を観て思い浮かぶのは、唯だった。けいおんの唯。もちろん、系統は違うのだけれど、日常の平穏。まだ何者でもない純粋と優しさ。山田さんの根底はいつもここにある。脚本で確かに起伏は付くけれど、最も大切なのはそこなのだ。
本作の公開前にはびっくりするほどの宣伝があった。毎時間流れてくるトレイラー、記事、インタビュー、番組まであった。それをほぼシャットアウトして臨んだのだけれど、もしかしたらあまりに単純な、それでいて難解な作品のために、事前に答えを教えてくれていたのではないか?とも思う。
普通に映画を観る感覚で行ったら、私と同じようになるのではないか?それは、他の方のレビューを読めば確認できる。
でも、そこは天邪鬼なのかもしれない。答えを教えそうで教えない。迷路みたいに色々投げ散らかしては、そして、どうせこんな感想ばっかになるんだろうな、でも、実はね……みたいに曇りガラスの向こうから楽しんでいる。
どなたかのコメントで、2回目が感動した、と有りました。私もそれを感じて来ようかと思います。
やっぱり、山田さんは凄いな…そう感じた4日目の朝でした。
主人公たちの苦悩や葛藤がまったく伝わってこない
淡い色彩の美しい絵柄と、悪人が一人も登場しない優しいストーリーには癒されるが、面白かったかと言えば、首を横に振らざるを得ない。
まず、タイトルにもなっている、主人公の「人の色が見える」という能力は、一体何だったのだろうか?
主人公のトツ子は、その能力のことを秘密にしているが、それで悩んでいるような様子はなく、その能力が、生活に役立ったり、支障をきたしたりすることもない。
トツ子だけでなく、バンド仲間の3人は、それぞれに秘密を抱えているのだが、3人が自分の秘密を打ち明ける場面では、他の2人の秘密は現実的なのに、トツ子の秘密だけは何ともファンタジックで、そのギャップに違和感を覚えてしまった。
トツ子の能力のお陰で、何か問題が解決したり、物語が大きく動くような展開もなく、どうしてわざわざこのような設定を導入したのか、最後までよく分からなかった。
同級生のきみちゃんにしても、学校をやめた理由がなかなか明らかにならなかったせいで、共感することも、感情移入することもできなかった。3人の打ち明け話の場で、それが、「良い子を演じることに嫌気が差したから」だということが分かるのだが、その割には、学校をやめた後も、そのことを祖母に内緒にして、良い子を演じ続けていたのはどうしてなのだろう?反抗しているのか、お婆ちゃん孝行なのかが、よく分からなかった。
先輩のルイくんに至っては、受験生なのにバンド活動をしていることを親に黙っていることを悩んでいたのだが、バンドか進学かを選ぶのならいざ知らず、どちらもあっさりと両立させて、めでたく医学部に合格してしまうところには、あまりの優等生ぶりに唖然としてしまった。
物語そのものも、フワフワとしている分、テンポが悪く、バンドを結成して、「さあこれから!」と思っていると、トツ子が修学旅行をサボってきみちゃんを寮に泊まらせたり、雪のために3人で離島に取り残されたりといったエピソードが続いて、一向に話が転がらない。ここで、印象に残るのは、シスターの日吉子先生の「善い人」ぶりばかりで、肝心の3人の結束の強まりのようなものは、今一つ感じることができなかった。
皆で作っていた曲も、何の苦労も困難もなくいつの間にかでき上がっているし、クライマックスのコンサートのシーンも、初心者のはずなのに演奏が上手すぎて、逆に心に響かなかった。
創作活動には、苦悩や努力や葛藤がつきものであり、そうした「産みの苦しみ」があってこそ、作品は輝くと思えるのである。
ガラス玉に光を透かしたかのようなきらきらした作品
人の大きな岐路の物語ではなく、不幸な人間が救われるわけではなく、強力なライバルが現れたり躓きに奮起する作品ではない。退屈だと思う人は多くいる作品かもしれません。
おそらく多く語る必要も深堀る必要もない、基本的に普通の人間たちばかりの物語なので、強い個性や所謂キャラクター性を愛でたい人にもあまり向いていないでしょう。
けれど人生をそれなりに送っていると悩みきっていたことが「話してみれば意外と」という機会は多いし、自分が硬く高い壁だと思っていた障害は実は薄いベニヤ板だったとみたいなことはよくあることだし、何よりキャラクター性の強い人間というのは実際のところあまりいない。この設定や世界観の抑揚の少なさは逆にリアリティを感じました。
この国のどこかにこんなにやわらかな愛ばかりに溢れた世界があったらいい。
きみちゃんの自主退職の理由とか、兄と家を出たとか、確かに気にかかるエピソードはありましたが、正直この映画の物語の中では語る必要はないと思ったので、個人的にはあまり気になりませんでした。
寧ろそういった終わってしまったことの深堀りはノイズになりそうだし、そもそもきみちゃんは自分のしたことの大きさも理解しているので反芻させる意味が無い。
きみちゃんがたくさんの優しさを受けて、ゆるやかにまた進み出せることに喜びながら鑑賞していました。
こういう友達が欲しかった、こういう大人にいて欲しかった、そういうものの疑似体験のようで、劇場から離れたくなくなるほどとても居心地が良かったです。
色がテーマというだけあって色彩と、何より光が美しく眩しい。
極彩色ともパステルカラーとも違う華やかさと穏やかさで、この色彩を浴びるだけでも行った価値があります。
劇中歌たちは彼らが白い画用紙に好きな色や画材で描いた絵で、しろねこ堂、そして「きみの色」は彼らの小さな展示室なのではないかと感じました。
なので「水金地火木土天アーメン」を主題歌にしなかったのは良い選択だったなと思います。様々な色を楽しむ作品なのに、水金〜だけを強調してしまうと、作品がトツ子ちゃんの色の絵ばかりになってしまうので。
彼らの音楽は彼らが自由に描いた絵なんだと教えてくれるミスチル、という構成が素晴らしく胸を打ちました。
自由に絵は描くのは実はとても難しくて、力がいる。彼らが自分の作品を舞台で披露できたということは彼らが小さな力と自由を手に入れた証明。
何よりかつて「大切なことを大切な人に伝えることができなかった」彼らが大きい声や音で好きなものを主張できたことはとてもすごいこと。人生を大きく動かすことはないけれど、人を少し良い方向に向かわせるような、半歩前に足を進ませるような経験なのだと思います。
子供が懸命に描いた作品が張り出されているを見て「この色がすてきだね」と言っていたい、そんな気持ちで心にちょこっと余白を作りながら観るととても楽しめる気がします。
ミスチルも言っています。堅苦しくならずに楽しんでいいんだって。多分これはそういう作品なのではないでしょうか。
(後日追記)
池袋グランドシネマサンシャインでIMAX、立川シネマシティで極音、川崎チネチッタでライブザウンドを観ました。
それぞれの音響設備の違いとこだわりに映画初心者は圧巻です、というのは余談。
回を重ねるごとに気付きがあり、とても驚いています。これは作品の中にというより、見る側がどれだけ考えながら視聴し、見終わったあと余韻に浸れるかなのではないかと思いました。かっこいいアクション大作のような見るだけで楽しい作品とは全く別の作品です。これはハンバーグとスルメくらい違います。
噛まないと味が薄いですが、噛めば噛むほど味が出る。受け身で見たい人にはあまりおすすめではないかも。
なのでストーリーを追うだけでは足りない二回目以降がとても良かった!
初見では作品の流れに任せていましたが、主にきみちゃん、そしてルイくんの救いの物語なんだなと思いました。
きみちゃんという女の子は純粋できれいなんだけれど押しに弱くて、良くない友達が出来たらきっと流されるしかなくなってしまうんだろうなという危うさを感じました。そこから自分で立ち上がる力もなく、拠り所がないからどんどん悪循環を重ねていってしまいそう。きっとあのままおばあちゃんから逃げていたらそう傾いていってしまって、事が起きてからようやく気付いてもらえるような気がしました。
学校に連れ込んだのもルール違反ではあっても、学校が子供を守る施設なのだから、学生という選択肢が少ない中でよく決断したなあと感心します。
きみちゃんが最悪の結末にならなったのはトツ子ちゃんの愛のおかげなんだよな……としみじみ思います。まあ、これはただの妄想で、きっとトツ子ちゃんは特に意識していないのでしょうが。
そんな子供間の優しさと、大人たちの子供に対する信頼が眩しい。
トツ子ちゃんとお母さんとの修学旅行の話が最も印象的で、お母さんはこの時叱らずに済ませたのは、トツ子ちゃんがきちんと状況を理解し、今後こんなことはしないという反省を自分の中で出来ているとわかっているのではないか、叱る必要がなくただ傷付けるだけになるという判断なのではないかと思いました。
これを優しさや愛と呼ばずに何と言うか、私には分かりません。
きみちゃんとおばあちゃんとの会話、ルイくんとお母さんの会話も根底には「自分の人生の決断に対する責任は自分できっちり持たねば」という心を感じ、これは三人が大人になる話なのだと思いました。
きみちゃんが学校を辞めたことを謝らず、秘密にしていたことを謝ったのが個人的にすごく良かったです。
きみちゃんにとって学校を辞めた判断は彼女が熟考した結果、それはリスクやこれからの大変なこともすべて自分のもので、他者に謝ることではないのだと思ったので。
そして何より、おばあちゃんがこれまでどれだけきみちゃんを大切にしていたかを言外に感じた気がします。
しかし普通年頃の男女が揃ってこっそりバンドをしていたら不純異性交友を怪しまれそうなものですが、そこで一切問題になっていないのは、彼らがこれまでそれだけ素行が良かったのか。
でもかっこつけたがりそうなバンドのライブで「昨日のごはんはあったかソーメン」をあんなに楽しそうに歌われてしまったら、毒気も抜かれてしまうかもしれません。
何度見ても新しくて眩しくて、人生でどれだけこんな作品に出会えるだろうと感じています。
苦労や不幸、ドラマチックな展開ばかりが物語ではないと教えてくれてありがとう。人の苦しみからくるものではなく、優しいからくる幸福を喜ばせてくれてありがとう。
これは私がずっと出会いたかった作品だったのではないでしょうか。ひとまず、わざわざアカウントを作って、こうして長いレビューを二度書くくらいには。
当初「あまり大衆受けはしなさそうだな」と思って4.5を付けましたが、とんでもない。世間が好きでなくても私が愛していればそれでよし。
私にとって大切な作品になるに違いないので5を付けます。私の世界に優しい光をありがとうございます。
説明不足はエモでゴリ押せてない
主人公トツ子が聖歌隊の次期トップとも言われるも急に学校を辞めたキミ、医者になるように親からプレッシャーを与えられてるルイの3人でバンドを組む話。主人公は他人のオーラが色で見える特性を持つが自身の色は見えない。でもバンドを組んで見えるようになったね♪で映画は終わるしバンドは速攻解散。
他のメンバーもあまり深掘りされずモヤモヤ感が残る。説明不足で何故学校辞めた未成年がいきなり古本屋経営?しているのか分からない。保護者も全く知らないって学校はなにしてんだ。最後のルイの別れ時の行動も他人が持ってたアイテム強奪して海に放棄したのもよく分からん。厳格シスターのキャラ付けと男子といるのバレたらまずいって言うシーンに意味はあったのだろうか。
けれど雰囲気エモ系が好きならきっと楽しめるし小さい子もカラフルな映像と音楽で喜びそう。主人公が作った相対性理論みたいな曲がすごく良かった。
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