「映像も音楽も良かった、内容は薄かった」きみの色 Theo5さんの映画レビュー(感想・評価)
映像も音楽も良かった、内容は薄かった
映像が綺麗で、特にとがった癖のある登場人物も出てこないし、
逆境という逆境もなくて気楽にゆったり観れる映画。
でも逆にそれだけ平和なのが無味無臭な仕上がりになってしまっている。
3人のバンドメンバーそれぞれに人に言いにくい悩みがあるのだけど、
人が色で見える子は自分の色が見えないと悩んでいたけど、
見えない事で何が問題なのか解らないし、
察するに幼少時代から人と違う事で軋轢が生じて、
ちょっとした差別やいじめを受けてたのかもと邪推するけど、
劇中で彼女の口からそんな悩みが出される事はなかった。
足が綺麗なギターの子も学校を辞めた理由が全く解らない、
祖母にそのことを知られるのを恐れているのだけが一番の悩みで、
辞めて本当にやりたい事があるとか、神が信じられなくなったとかの理由もなく薄い。
重箱の隅をつつくけど、そもそも生徒が学校辞めるってなったら祖母に連絡が行って当然だと思うんだけど、規律に厳しそうな学校だし。
テルミン男子も医者よりもやりたい事があるのかもしれないけど、
全くそれも語られないし、影が薄い。
でも最後の方は全員スッキリした感じになって学園祭の集大成のバンド演奏。
過剰にキャーキャー盛り上がるわけでもなく、静かに盛り上がる感じで、
曲もシリアスな感じからポップな曲まで幅があって良かった。
でもそこで初めてギターの子がボーカルなんだって知ったぐらいバンド要素も薄い。
結成してたのは知ってたけど気付いたら舞台に上がってた。
思い返すとこの映画結局何が見せたかったのが解らない。
ふわっとした波だけ立てて、最後はバンド演奏で感動したでしょ?って言われた気がしてならない。
最後に自分の色が見えたと言われてもそれが何となってしまう。
もっとおぞましいぐらいの汚い色の人を登場させて、その人との対比で綺麗な色の人の意味を教えてほしかった。
目を引く要素が色々出て来てつまらなくはないのだけど、それに対するアプローチが薄くて物足りなさを凄く感じる映画。