「ことばに頼らない丹念で繊細な語り口」きみの色 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
ことばに頼らない丹念で繊細な語り口
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主人公トツ子のナレーションで始まるが、見終わってみると、秘めていた心情を打ち明けるような説明くさいセリフはない。主人公たちの過去も匂わせるだけで具体的な説明はなく、心のうちはほぼちょっとした身体の動きやさりげない間で表現されていて、これが最初に観る山田尚子作品なわけではまったくないが、なんと繊細な語り口だろうとしみじみ思う。終盤になっての恋愛っぽい要素(恋愛だと断言はしない)も、序盤の本屋のシーンからいかにきみちゃんがルイくんのことが気になっているかを丹念に積み上げていて、言葉は少なくとも非常に親切な作りでもあると思う。しかしそれにしてもミス◯ルについては、作品世界に寄せようとしているだけに余計にノイズに感じてしまい、しかも最後にお口直しみたいにポストクレジットがあるのだから、ミス◯ルだって立つ瀬がないでしょ!と思ってしまった次第です。監督らがいくつかのインタビュー記事で主題歌について語ってはいたが、やっぱりあの3人の物語の後に、誰かが書いた歌詞はいらなかったのではという意見です。
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