「期待通りの山田尚子作品」きみの色 テツヲさんの映画レビュー(感想・評価)
期待通りの山田尚子作品
まずは山田尚子監督にこの作品を作らせてくれる日本の映画界、アニメ界に感謝したいです。正直この映画は商業的な大ヒットは難しいと思いますが、ひたすら美しい画(え)で観客に引き込んでくれます。どこまでも柔らかい繊細な画をアニメという媒体に落とし込む労力と凄まじい作画カロリーに感激です。作品のテーマが音楽なので音もすごく良いです。
特に劇間に挟まれる長崎の美しいの風景がすごく良いです。
傾向的にはテレビアニメ平家物語やリズと青い鳥に近い作品なので、かなり芸術映画的な作品なので、ストーリーもふんわりしているし、キャラクター描写もふんわり繊細な感じでスッキリ見れる作品が好みだと合わないかもしれません。
ラストはやっぱり走ります。
リズと青い鳥は走ってたっけ?
追記
キャラクターの心情とかセリフにしないしモノローグもないし、記号的な描写もしないので観客が読み取るしか無いです。
おそらく意図的にキャラクターの背景も徹底的に削いでしまっているので、キャラクターの行動理由が理解できないという部分が多いと思いますが、説明しちゃったらキャラクターを分ったつもりになってしまい作品が成り立たなくなると思うのですよね。
自分の解釈だと。
トツ子は自分が何者なのかわからない、自分が好きな事、モノがぼんやりしているのが悩みでまさに迷える子羊。キミは周囲の期待に押しつぶされてぷっつり切れてしまったけど、イケイケなおばあさんに心配かけたく無い良い子ちゃん。ルイは自分の役割を理解しつつ自分の中の音楽をやりたいという欲求を押し殺して無いような気もするけど表に出せないシャイボーイ。
3人が自分に向き合って歌として表現で自我を獲得する話を観客が外から覗き見しているような作品なので、最近のなんでも説明する作品に慣れているとよくわからないが、なんとなくバンドで演奏してそのまま終わるわからないモヤモヤする作品に見えるよなぁと思います。
多少設定に無理があると感じる部分もあるけど、そんなもの合宿するために必要な設定だと思うし、バンドやるのに必要な設定だと思うし、ラストシーンで走らせる為に必要な設定だと思うし作品を成立させることを考えると些細なことだと思います。