「「淡い」映画」きみの色 キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
「淡い」映画
「けいおん!」は見てないけど、サイエンスサルの作品は観てきたし「聲の形」や「平家物語」は好き、という、もしかするとこの監督のファンにとっては「にわか」に類するかも知れない。
例によって予備知識はほぼ入れずに観賞。
中高生のカップルから中高年の独り男まで、客層は幅広い感じだった。
人にそれぞれ「色」が見えるという特性を持った、ミッション系の女子高に通う女の子のお話。
登場キャラクターはそれぞれ魅力的だとは思うが、各人物について背景とか描写があまりないので、このコは今ナニを考えているのか、私の様な中高年男性にはイマイチ伝わって来ない。
それぞれ帰る場所はある。
家庭もお金にはそれほど困ってない。(むしろお金持ち?)
家族にも愛されている。
そんな、一般的には「恵まれた家庭」に育った思春期の彼女たちの「小さな嘘と冒険、自立と葛藤のお話」なので、全体としての印象はすごく小ぢんまりしている。
いわゆる「日常系」を得意とする監督の手腕として、ファンは喜ぶのかも知れないが、私の様な「にわか」には、やはり映画として物足りない。
そしてこういう「音楽」をテーマにした作品、特に映画オリジナルの楽曲を作中で重要なファクターとして扱う映画にはついて回る、「その曲が好きになれるか問題」が立ちはだかる。
案の定、ラストは主人公が作った「♪水金地火木土天アーメン」。
私には、初めてあの曲を聞いて文化祭で見ていた観客が世代構わずあんなに踊り出すとは到底思えない。
(あくまで個人的な見解です。)
主人公トツ子の、人の色が見えるという力も、昔習ったバレエの話も、時折差し込まれる割には、あまり物語の具体的な要素として絡んで来ないし、ルイはなぜテルミンをあえて使っているのか、きみはなぜ学校をやめたのか、その辺りもあまりちゃんとこちらが共感できる言葉では説明されていない気がする。
結果、あまりキャラクターとして掴み所のない3人が、最後にイベントで曲を披露。
それはノレないよね。
こういう、大きな波風の立たない映画、きれいな色や自然の風景、日々の生活の小さな動きを描く映画が好きな人にはいいんだろうが、私には全体に物語が「淡白」に見えてしまった。
あわせて、ミスチルのテーマ曲も正直、新鮮味に欠ける印象。