「何もかもが悪い意味で『甘い』駄作」きみの色 映画拝見さんの映画レビュー(感想・評価)
何もかもが悪い意味で『甘い』駄作
まず前提として自分はリズと青い鳥の大ファンです。何回も見てその繊細な感情描写と、甘えのない客観的かつ愛に満ちたふたりへの目線に感服しました。
聲の形も、展開が強引なところはあったがそこそこおもろかったです。
だけど、今回の映画。
なんですか、これ?
ただただ思いつきと作者の都合で流れていく強引な展開、その割にドラマの軸もなく散漫で、山田尚子さんの好きをぼんやり並べただけの価値のないもの。
キャラクターの葛藤も浅く、その解決もやりたい演出のオマケで「なんとなく形だけ整えた」ようなもの。
なんか名作作った監督さんって、自分に甘くなって視野が狭くなって、こういう作品に逃げ込みがちですよね。
押井守がパト2、攻殻機動隊以降、パッとしない思い込みの垂れ流し的作品を続けてたことにも近いです。
原作キャラをお借りして、足りない部分を埋めてもらって、良い距離感で作品作ってた一番評価されてた時期を忘れないで生涯謙虚に創作してもらいたいものです。
後、作品内での「音楽」の置き方が本当に雑で、響け!ユーフォニウムというあれだけ真剣に音と向かい合った作品からなんも学んでないんかなと。
練習もろくにせず、才能裏付けもなく(色がどうこうといった曖昧なものはありましたが)、思いつきでパッとやったものが、何故か大評価されて客は踊りだす…みたいな作者の内面願望ご都合世界。
そもそも見せ場のライブシーンに関してもたいしたドラマがなく、とりあえず置いただけの家庭の事情が「なんとなく」解決するだけで感動のかけらもない。
雰囲気だけで良いという一部のファンだけ見て、これで良いんだと突っ走ることがないように、謙虚に初心に帰ってほしいと山田尚子監督には心から思います。
大好きだった作家が、これから一生自己愛垂れ流していくだけの作家に変貌することほど悲しいことはないので。
でもまぁそういうの心地良いんでしょうね。
そういう「気持ちよく作ってるな」というのだけは悪い意味で伝わってた映画でした。
まぁとりあえずご都合なキャラの発作で話を展開させる開き直り、演出家のエゴだけは最低限なくして欲しいものです。