「私が惹かれるのはあなたの色。その言葉にヤラれた。」きみの色 GOさんの映画レビュー(感想・評価)
私が惹かれるのはあなたの色。その言葉にヤラれた。
「きみ」というキャラの苦しみについて、どう感じるのか。
そこで、この映画の見え方は大きく変わるのだろうと思う。
私は「きみ」というキャラクターに痺れてしまった。
彼女は、祖母の期待にこたえたいという強い意識を持ちながら
それでも自分の中から溢れてくるものを留めることが出来ない。
だから、祖母の期待に沿うだけの自分に耐えられずに学校をやめる決意をする。
それは、とても辛い決断だ。
自分で自分を肯定することも難しい。
なんでそんなことをしたのか、言葉で説明することは難しいだろう。
でもそういうことはある。私はそう思う。
そしてそれは、身を切られるよりずっと辛いものだと思う。
それを救うのはトツ子の感覚だ。
「私が惹かれるのはあなたの色。」
そんな素敵な言葉があったのか。
「きみ」の境遇とトツ子のこの言葉で、私はやられてしまった。
「きみ」は救いのない地獄をさまよっている。
祖母でも彼女を救えない。
祖母がもし、私の期待に沿う必要はないよ、と伝えても
「きみ」は救われないだろう。
それは自分が自分にかけた呪いなのだ。
そして今の時代は、みんな自分に呪いをかけて生きているのだろう。
それが多様性の時代。
自分自身でいいんだよ、と許されるということはつまり、
すべてが自分の責任として重くのしかかる、ということだ。
だからこそトツ子の言葉は胸に刺さる。
その言葉から巻き起こる些細なエピソードの一つ一つに惹かれてしまう。
そこで小さな罪を犯しても、
批判されるようなことをしてしまっても、
心からあの言葉を口にできるトツ子は、
無条件で素晴らしい。
そしてそれに救われて、まっすぐな目で前を向く「きみ」は
なんてカッコいいのだろう。
こんな説得力のあるカッコよさは、久しぶりに出会った気がする。