きみの色のレビュー・感想・評価
全246件中、1~20件目を表示
悩みを共有しながら築かれる絆
山田尚子の作品はゆるい雰囲気が特徴で、本作でも彼女の独自性が表れていました。
京アニ出身ということで、『けいおん』のバンド演奏や『リズと青い鳥』の心理描写など、過去作の要素がたくさん盛り込まれていました。近年の大ヒット作にありがちなリアルな背景と激しい動きとは異なるテイストになっており、絵本のような温かいタッチに癒されました。そのため、「こういうのが観たかった!」と思えるぐらい新鮮な気持ちになれました(勿論、大ヒット作ならではの面白さもありますが)。
メインの登場人物も魅力的でした。トツ子は相手の色が見える不思議ちゃんで、きみはクールで友達思い、ルイは2人を支える存在みたいで素敵でした。それぞれが悩みを共有しつつ、バンド練習を通して築かれる絆が素晴らしかったです。たとえ変えられない現実に直面しても、それを受け入れて3人が成長していく姿に感動しました。
池袋のIMAXで観ましたが、大画面を活かした派手な作品とは違った良さがありました。柔らかくて引き込まれるような色彩や、全身に響くギターと電子ビートの臨場感が凄かったです。特に最後のライブシーンは、学園祭に参加したような迫力がありました。「水金地火木土天アーメン」も、独特な歌詞とメロディが癖になるぐらい印象的でした。
全体的に平和で、不思議な感覚を味わうことがでした。ゆるい雰囲気が好きな人にはおすすめです。
さて、トツ子さんは何色だったのか。
とても淡いタッチのアニメーション。ストーリーにロジックを感じないシーンの連なりは、それぞれ柔らかく楽しく美しく描かれていた。気が付くとスノードームの中に居たという演出が素晴らしかった。
登場人物にまったく嫌味を感じない。清廉なシスターの先生は、信仰の視点から理解が深く優しかった。お洒落なおばあさんはしっかりと厳しく優しそう。主人公、トツ子さんもそのお母さんも、微笑ましくなるプニプニとした安心感。その優しさに甘えたくなりそうになる。退学してしまったキミさんも、医師の家系のルイ君も、そんなトツ子さんに頼ることも大きいだろう。
演奏する姿も良いですね。初心者なのか一本指で叩くキーボード。ルイ君のテルミンは、あんなに滑らかな手つきを再現して貰っているのに、トツ子は2枚絵のパタパタアニメーションってw そこ、笑うところですか?
見せ場のライブ、三曲三様でまったく違う音色で鮮烈。キミさんのまっすぐな歌声がとても美しい。今時、ビブラートはかけないんですね。昔からビブラートの歌声に憧れたものだったけど。昔話と言えば、先生、まるで「けいおん」の「さわちゃん先生」じゃないですかw リフとか言い出したから、セリフより前にピンときた。当時の面影は見せなかったけど、チラリと軽やかに舞う姿が美しい。他にも、暗がりで舞い踊る観客の姿も面白い。
舞うと言えば、花壇の中を華麗に舞うトツ子さん。自分が何色なのかを掴んだのか。この踊るシーンも説明がなく、解釈が難しい。「色を掴んだ」イコール「将来の進路決定」の暗示かな。「色が見える」という不思議な才能。それ自体も何かの暗示か、単なる能力者か。そういえば、「音」も「音色」と、「色」と表現するんですね。
全体通して、友情の楽しさ、面白さ、清い尊さが描かれた映画だったのかと思う。友達と一緒に遊んでご飯を食べて、悩みを相談したり秘密を共有して隠し事をしたり。そんな友情を描いた青春群像というべきでしょうか。
最後のスタッフロール、尻尾の先まで面白かった。映画館で観る人、灯りが点くまで席を立たない方が良いかも。
(追記)
勢いで書いたレビューから少し考え足したことがあったので追記。
先生がまるで「けいおん」の「さわちゃん先生」みたいだと書いたけど、その先生の過去を書いたお陰で、おばあさんに打ち明けるキミさんや、母親と将来を話すルイ君、それぞれの親御さんにも過去があり、その「共感」から産まれる優しさを感じられる気がする。どんな話になったのか画かれてはいないけど、トツ子さんのエピソードでは具体的な会話シーンがあり、つまりは、他の子達もそんな感じなのだろうと類推できていた気がする。
登場人物の三者三様、それぞれ悩みを抱え、それを打ち明け、語り合うことで乗り越えていく。ライブの歌が三曲三様だったのもそのためか。レビュー文頭でロジックを感じないと書いたけど、自分の感じた映画のロジックはこんな感じです。懐かしさを感じさせる映画の舞台、親や教師の目を盗んで友達同士でする隠し事、それぞれに悩みを抱えながら、社会に向かって卒業していく。共感、ノスタルジー、そこからくる優しい映画であったのだなと考える次第です。
映画のスタッフロールでも、曲作りはパソコンでシーケンスソフト使っておきながら、カセットテープで生録とかw テープの懐かしさの共感ってこともあるけど、あの音色の感触もテープならではだったのかな。CD屋とか行くと、テープ版とか結構売られてますよね。
「衝突」ではなく「理解」で描く、暖かな青春物語。
◯作品全体
この作品には青春の苦悩にありがちな「衝突」の可能性がいたるところにある。男女関係、家族との不調和、学校のルール、そして「色が見える」という人とは違う特性。誰かと衝突し、傷つき、大人になる…こうした描写によって物語に起伏を作る。そういう作品になる要素にあふれている。
しかし山田監督がそうしなかったのは、相手を理解することの暖かさにスポットを当てたかったからじゃないか、と感じた。
トツ子ときみの関係性が象徴的だ。トツ子は退学したきみに対して、退学した理由を聞こうとしたりしない。一緒に時間を過ごす中で、ポロッとこぼれ落ちるようにきみは退学した理由を語りだすが、そこには衝突では描けない、理解の暖かさがあった。
ルイが島を出て遠くの大学へ通う、と伝えるシーンもそうだ。ともすればバンド作品特有の解散問題に発展する流れだが、トツ子ときみはそれを暖かく受け入れる。トツ子ときみは自身の嘘で誰かに迷惑をかけながらも、自分のやりたいことを成している。だから、衝突をしなくても理解できる。それぞれが自分自身にとってとても大事な問題を抱えているから、それを誰かに伝える難しさも知っている。それでも、離れ離れになるのは寂しい…その別れは普遍的かもしれないけれど、登場人物の心を繊細に描いているからこそ、「青春のほろ苦さ」が燦々と輝いていた。
そして誰かに気持ちを伝えることが苦しさだけではないことを、本作では音楽で表現していた。気持ちを表現することがどれだけ人を惹きつけ、心を踊らせてくれるのかは学園祭のシーンのとおりだ。
その後の中庭で踊るトツ子は、気持ちを表現できた喜びに溢れていた。トツ子のバレエは上手ではないけれど、見ているこちらまで溢れ出てくる達成感のような感情が印象的だった。
必要なのは衝突による物語の起伏ではなく、それぞれがそれぞれを理解して包み込む、暖かさ。先生や家族、クラスメイトたちも含め、その暖かな人の気持ちの描写が徹底されていて、とても優しい気持ちにさせてくれる映画だった。
◯カメラワークとか
・山田監督がよく使う、人物を画面端に寄せて空白を作る画面。今作は今まで以上に「感情の隙間」を感じさせる画面になってた。自分の中でもはっきりとしていない、相手に伝えるのも難しい感情、みたいな。きみが退学したあとの教会のシーンとかで使われていた。
・きみの造形は山田監督のこだわりを感じるなあ。クールな外見からフード付きのダボダボパーカー着てるのとか(『けいおん』の秋山澪っぽい)、パーカーで髪の毛が膨らんでる後ろ姿とか、髪の毛を耳にかける仕草とか(『リズと青い鳥』の鎧塚みぞれっぽい)、自分の気持ちを話すときに爪を見る芝居とか。
・瞳のアップショットの演出がやっぱり好きだなあ。本作だと本屋できみを見つけたトツ子のシーンとかで使われてたけど、その目線の先にあるトツ子だけの特別な光景っていうのを、その目線の先を見せずに表現するっていう。山田監督のが一番濃度濃い気がする。
・島を出ていくルイを追う、堤防できみが走るカット。引きのカメラで横位置、手ブレのドラマティックさがとても良い。山田監督作品だと『けいおん』1話とか『劇場版けいおん』、『たまこラブストーリー』、『聲の形』、『モダンラブ・東京』とかいろんなところで使ってる演出だけど、心の機微を感じる山田監督作品での「走る」はすごく大きなアクションとして映えるなぁと感じる。
◯その他
・ルイのデザインとか芝居作画はちょっとかわいくなり過ぎちゃってる。「ゆるふわ男子」をちょっと通り越してしまってるような…。
・きみ役・髙石あかりの声がすごく良かった。『べいびーわるきゅーれ』でも思ったけど、声の芝居がすごく自然。
・宗教上の理由で山田監督作品に点数は付けられません。
音の良い映画
山田尚子監督は、このところ張り詰めた緊張感の作品が続いていたのだが、久しぶりに軽やかな作風に戻ってきた。この軽やかさは『けいおん!』や『たまこ』シリーズの頃を思い出させるのだけど、退行では決してなく、進化した上でのあえての軽やかさといった感じだ。音楽を題材にしていることも含めて、懐かしさもあり、同時にサイエンスSARUに拠点を移して獲得した新しさもさらに突き詰めている。
色々な魅力がある作品なのだけど、ここでは音楽を含めた音について書いてみたい。山田監督の映像の心地よさというのは、音のセンスにもある気がしている。音楽に対してこだわりが強い人というのは、多分ファンにとっての共通認識だけれど、本作ではその意識が特に高い。色々な楽器が出てくるのも色々な音色をスクリーンで聴かせたいという現れだろうと思う。アニメは映像について語られることが多いのだが、映画の構成要素は映像と音である。山田監督はアニメ作家の中で、かなり音にもこだわりがあるタイプ。自然音もSEこすごい心地よい作品なので、これを味わうために、是非劇場で見てほしい作品だ。
ことばに頼らない丹念で繊細な語り口
主人公トツ子のナレーションで始まるが、見終わってみると、秘めていた心情を打ち明けるような説明くさいセリフはない。主人公たちの過去も匂わせるだけで具体的な説明はなく、心のうちはほぼちょっとした身体の動きやさりげない間で表現されていて、これが最初に観る山田尚子作品なわけではまったくないが、なんと繊細な語り口だろうとしみじみ思う。終盤になっての恋愛っぽい要素(恋愛だと断言はしない)も、序盤の本屋のシーンからいかにきみちゃんがルイくんのことが気になっているかを丹念に積み上げていて、言葉は少なくとも非常に親切な作りでもあると思う。しかしそれにしてもミス◯ルについては、作品世界に寄せようとしているだけに余計にノイズに感じてしまい、しかも最後にお口直しみたいにポストクレジットがあるのだから、ミス◯ルだって立つ瀬がないでしょ!と思ってしまった次第です。監督らがいくつかのインタビュー記事で主題歌について語ってはいたが、やっぱりあの3人の物語の後に、誰かが書いた歌詞はいらなかったのではという意見です。
音と色、そして青春の息遣いが柔らかく沁み渡っていく
主人公トツ子は何かにつまずいたり、壁に直面している女の子というわけではない。むしろ普通の子と同じ。でもだからこそ、この歳ならではの漠然とした感情を抱え、ふんわりとした穏やかさを持ちつつ、彼女は今日も教会堂で人知れず祈りを捧げる。人の色が見えるというトツ子。彼女がずっと友達になりたかった、綺麗な色を持つ同級生。さらにもう一人を交えて、突如組むことになった3人バンド。話はとんとん拍子で進んでいくが、淡いタッチで感情を柔らかく湛えるアニメーションや牛尾憲輔による虹色の音楽も相まって、彼らの友情の日々は澄み切ったハーモニーを奏でゆく。巨大なことを成し遂げるわけでも、大きな発見があるわけでもないし、よくある仲違いから和解へと至る物語というわけでもない。でもどうしてこんなに深遠に触れるのか。個々の音が重なり合う瞬間、無性に心が震えるのは何故なのか。鑑賞後も一筋の色がずっと胸中を照らし続ける作品である。
青い春!キュンな気分を思い出す!
良いな〜、若いって!もう、最初から最後までそんな気持ちでいっぱいです。
若いゆえの悩みがあって、秘密があって、苦悩があって・・・、一人だと押しつぶされそうな時に手を差し伸べてくれる仲間に恵まれた。
楽器を始めたばっかりだと言いながら、一生懸命練習して、学園祭の舞台に立つ。クライマックスのステージは、見てるこっちも熱くなった。その場にいるようなライブ感で楽しめた。
余談ではありますが、自分の高校時代とオーバーラップしちゃいました。
高校時代は部活動中心の毎日で朝練から放課後の練習まで。(授業中は休憩時間?)休みも殆どないほど頑張ってました。それが3年生になって、夏の初めに最後の大会を終えると引退で部活動は終了。
時を同じくして、3年生になったばかりの頃から文化祭のステージに立ちたいという想いが強くなった。そこで急遽、バンドっていうかデュオを組んで、部活動のなくなった夏休みの、ほぼ毎日を練習につぎ込んだ。近所の河原に出かけて、ここなら迷惑もかからないだろうと、暗くなるまで大声で歌いまくり!
いや〜、懐かしいな。
ステージ自体は、この作品みたいな感動は与えられたとは思わないけど、みんなが盛り上げてくれて、楽しい思い出として残ってます。
今なら配信なんて、洒落た形で思い返せるんだろうけど、当時はカセットテープへの録音がメインだった。でも、それも失敗して、ホント記憶の中にしかあのステージは残っていない・・・
いや〜、青春だったな〜
作品自体は、絵が優しくて、パステルカラーっていうんですか、ホンっとホンワカします。
そして、主役三人の個性的な会話、ガッキーの包み込むような言葉等、全てに優しさが溢れている温かい作品って感じで、それなりに楽しめました。
でもそれよりも、自分にとっては、ノスタルジックな記憶が蘇ってオーバーラップした、その想いが強い一本でした。
全然面白くなかった
なんともふんわか
「ぼっち・ざ・ろっく」を劇場に観に行ったときに、予告編で知った「きみの色」。
作品名は忘れたけれど、別の予告編もアニメでバンド・音楽モノが流れていた記憶がある。
だからなのか、最近またバンドブームなのかな、って思った。
バンド映画というと「リンダ!リンダ!リンダ!」(2005年公開)かな。
ティーンズ音楽系だと「スィングガールズ」(2004年公開)を思い出す。
その辺のキャラクタの熱量と比べると、「きみの色」に出てきたトツ子、きみ、ルイというのはおとなしいなぁって思えた。ミッションスクールが舞台になっているせいもあるのかな。
主人公たちの葛藤のようなものの熱量が、昔の作品と比べると抑えられている感じ。
これは演出の意図なのかもしれない。
トツ子の世界においての世界観自体がおとなしいモノなのかもしれない。
テルミンが使われたのも そんな演出の一つなのかもしれない。
心の結びつき
田舎町の高校を舞台に音楽を通して絆を深める若者たちの
青春映画。
音色を色で表現するやり方を取り、全体を淡い色合いでまとめ主人公たちの固まっていない心を表現している様に思えた。全体のバランスとしては心情に訴えかけるものがある訳ではないので、どうしても色合いと相まって淡白に感じられた。
きっと自分は曇天のような色
映画館で観たらまた違った感想かもしれない
なんといっても美しい色彩を放つ映像が素晴らしい。
トツ子の不思議ちゃんとも思われる行動もルームメイトや優しい教師が見守っている。主人公3人のもつ悩みや葛藤、後ろめたさは青春時代限らず社会人になってからもあって、大きな衝撃や悲劇はないものの続いていく日常を丁寧に描ききった作品でもある。人によっては物足りないかも、映画館で観たらまた違った感想かもしれません。
最後のバンド演奏は楽しさが伝わってきて、自然と口ずさんだり体を揺らしたりしていました。恋愛要素がなかったのはよかった。
青春の揺らぎ、悩みのカケラが、散りばめられているけれど、もどかしさを感じてしまう。
とても叙情にあふれる詩的な作品で、作画もパステルカラーで
ふんわりと美しい。
トツ子が、人の姿が、色で見える・・・
このテーマ、
明確な形に出来てない気がする。
きみちゃんは・・・青。
ルイ君は・・・緑。
トツ子は、
自分の色は・・・?
“分からない“と、答える。
色が見える・・・トツ子の心が揺れるとき、
…………………………トツ子の心が騒いでしまうとき、
…………………………エモーショナルな感情・・・
つまり、感動・・・それが“色“なのかな。
とも、思う。
《変えること出来ないものを、
《受け入れる、心の平安をください》
トツコは聖堂で毎日、毎日、祈っている。
トツコにとって《変えることのできないもの》
それは何だろう?
成績?
容姿?
身長?
体重?
性格?
案外この中にあるかも知れない。
きみちゃの退学の理由?
これはやはり知りたかった・・・
確かなことは、ルイ君、トツ子、きみちゃん、
この3人でバンドを組んで、
一つになり、
結果的に一つの答えは出た。
夢中になれるものを見つけるのが、
生きること・・・だと思うので、
結果的に、答えは出た。
ライブは面白かった。
“水金地火木土天アーメン“は
リズミカルで楽しく
盛り上がったね。
テルミンなんて楽器、
今でもあるのかなぁ!?
しろねこ堂のライブの後に、
ミスチルがエンディング曲を歌うのは、
賛否が分かれると思う。
ミスチルは、さすがの解釈で、この映画を完全に説明していて、
なるほどと感心したけれど、
(ミスチルの桜井さんに代弁、補足してもらうのは、
この映画のメッセージ性の弱さだと思う)
山田尚子監督の「聲の形」は、
生身の傷に塩を擦り込まれるような映画だった。
(この映画は、ずうっとマイルドで穏便・・・
(それが悪いわけでは勿論ない)
“水金地火木土天アーメン“で、盛り上がって7分間くらい
暴れ回って、
ロックして、
スタンディングオベーションの、
津波と洪水の嵐の中、
くるくるまれ、キラキラと、
で、終わっても良かったと、思う。
きみの色、
それはYouであり、
Yourだろう。
各々の、みんなの色が、
あってもいいというメッセージ。
ボヤーっとした文学性を感じるしメッセージはあるけど、エンタメ度が低いです。
評価が難しい作品です。最後まで見た印象は悪くないのですが、エンタメとしての盛り上がりがないので「面白かった」という感想は素直には出てきません。
テーマ性、私小説としての作家性などはあまり感じません。もちろん生き方に関する自分らしさ、自分の気持ちなどの含意はなくはないですが、あえてそこをボヤッとさせている印象があります。となると文学を目指したのかな?という気がしなくはないです。
一見人間に色がついて見える共感覚の持ち主トツ子がヒロインに見えますが「きみの色」のタイトルが示すとおり「きみ」という名の少女がどちらかと言えばヒロインです。内面描写も抱えている問題も「きみ」に焦点が当たります。
逆にトツ子はおそらくですが、無垢で純粋、色で人の本質が見える、音楽で踊り出す…などの性質は「聖性」なんですよね。カトリック系の学校であることと合わせて、トツ子の役回りは「天使」です。
そう考えると、生き方を迷っている「きみ」のところに舞い降りた天使に触れることで「自分らしさ」を確認する話なんだと思います。だから一緒にいてくれるんでしょう。
「きみ」の退学の理由とか、男の子ルイの葛藤とかそういうところを明確に描かないのは、その内容が大事なんじゃくて、そういう状態の人に向けてのメッセージを含むからと考えられます。
つまり「きみ」が意味するのは、ヒロインであると同時に我々視聴者のことでもあるということでしょう。感情移入するように、自分事として考えられるように、ヒロイン「きみ」の事情を明確にしなかったんだと思います。そこに高校生の進路を考える時や人生に悩んでいる人に対するメッセージがこめられているのかな、と思わなくはないです。
そういう「意図」がありそうなので、私が読み取れない何かが含まれているのかもしれませんが、1回見ただけではそれくらいしか感じ取れませんでした。そうなると、作品としてのエンタメ性がかなり不十分なので、一般的な評価は悪くなるだろうなあという気はします。
最後に素直な感想を言えば、面白くないわけじゃないし、感じられるものはありました。見て損だったとは思いませんでした。しかし、これを劇場まで行って見たら頭に来てたかも。作画が素晴らしいので逆に満足したのかもしれませんけど。
あーあ、今日で奉仕活動が終わっちゃうね!
こちらでは遅ればせながら今から5日くらい前に上映開始になりました。
こちらのサイトでは全体評価で星3.5と、アニメ作品にしては少々辛口評価が気になりましたが、私には色々刺さった作品でした。
最近は日本女性もなかなかたくましくなっているし、ギャルだの頂き女子だの、したたかな女子が目につきがちですが、私の経験上、実際の女子高生は大半が優しくて真面目でおしとやかで頑張り屋でいい子ばかりです。
トツコちゃんの一見、天然で宇宙人のようなキャラにしても、いいとこで育った友達思いの優しい、典型的、敬虔なお嬢様だし、お菓子交換したり、片耳イヤホンしたり、色々見ていて癒されました。
どうしてもキミちゃんの退学理由がはっきりしない点だけモヤモヤしてリアリティに欠けましたが、あの体育館でのライブシーンは、友達がクラスTシャツを着ていたり、あんな感じで段々人が集まって盛り上がったりするところなど、めちゃくちゃ文化祭あるあるで青春みを感じて熱くなりました。
なんだかんだでヒヨコ先生が一番美しかったし、なかなかの秘密をぶっちゃけた、一番胸熱なキャラだったかなwww
エンディングのミスチルの歌も良かったなぁ。30年以上も第一線の、超スーパーバンドなのに、この曲はまるで高校生が体育館で演奏してそうな、特にドラムのシンプルさに心を持ってかれました。(もちろんあんな上手いボーカルは高校生に滅多にいませんが)
少子高齢化がどんどん進んでる日本とはいえ、大人たちもみんなが通ってきたあの眩しい青春時代を、不器用ながら真面目に頑張る登場人物に重ねて思い出させてくれるような、キラキラした作品でした。
no chemistry
思春期を描いた佳作
後味の良い映画だった。映画の画も音楽もそうだが最高を目指していない。どこにでもいる、どこにでもある話を描いている。
特筆するほど良い場面はないが、たんたんと丹念に描く監督の姿勢は好感が持てる。
最後が演奏会で終わるのもうまい終わり方だと思う。
音楽が凄く好きな人が脚本を書いたようだ。
主人公たちは音楽家を目指していない。
その意味このコンサートは唯一のハレの舞台だ。
監督は音楽を食い物にしてのしあがろうとする人たちを描きたかった訳ではない。
音楽に携わる名もしらぬ人たちを描きたかったのだ。
そういう意味で、成功していると思う。
個人的にはきみの横顔が好みだった。
絵は魅力的だった。
人がさりげなくうまいく描けている。
全246件中、1~20件目を表示