きみの色のレビュー・感想・評価
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悩みを共有しながら築かれる絆
山田尚子の作品はゆるい雰囲気が特徴で、本作でも彼女の独自性が表れていました。 京アニ出身ということで、『けいおん』のバンド演奏や『リズと青い鳥』の心理描写など、過去作の要素がたくさん盛り込まれていました。近年の大ヒット作にありがちなリアルな背景と激しい動きとは異なるテイストになっており、絵本のような温かいタッチに癒されました。そのため、「こういうのが観たかった!」と思えるぐらい新鮮な気持ちになれました(勿論、大ヒット作ならではの面白さもありますが)。 メインの登場人物も魅力的でした。トツ子は相手の色が見える不思議ちゃんで、きみはクールで友達思い、ルイは2人を支える存在みたいで素敵でした。それぞれが悩みを共有しつつ、バンド練習を通して築かれる絆が素晴らしかったです。たとえ変えられない現実に直面しても、それを受け入れて3人が成長していく姿に感動しました。 池袋のIMAXで観ましたが、大画面を活かした派手な作品とは違った良さがありました。柔らかくて引き込まれるような色彩や、全身に響くギターと電子ビートの臨場感が凄かったです。特に最後のライブシーンは、学園祭に参加したような迫力がありました。「水金地火木土天アーメン」も、独特な歌詞とメロディが癖になるぐらい印象的でした。 全体的に平和で、不思議な感覚を味わうことがでした。ゆるい雰囲気が好きな人にはおすすめです。
さて、トツ子さんは何色だったのか。
とても淡いタッチのアニメーション。ストーリーにロジックを感じないシーンの連なりは、それぞれ柔らかく楽しく美しく描かれていた。気が付くとスノードームの中に居たという演出が素晴らしかった。
登場人物にまったく嫌味を感じない。清廉なシスターの先生は、信仰の視点から理解が深く優しかった。お洒落なおばあさんはしっかりと厳しく優しそう。主人公、トツ子さんもそのお母さんも、微笑ましくなるプニプニとした安心感。その優しさに甘えたくなりそうになる。退学してしまったキミさんも、医師の家系のルイ君も、そんなトツ子さんに頼ることも大きいだろう。
演奏する姿も良いですね。初心者なのか一本指で叩くキーボード。ルイ君のテルミンは、あんなに滑らかな手つきを再現して貰っているのに、トツ子は2枚絵のパタパタアニメーションってw そこ、笑うところですか?
見せ場のライブ、三曲三様でまったく違う音色で鮮烈。キミさんのまっすぐな歌声がとても美しい。今時、ビブラートはかけないんですね。昔からビブラートの歌声に憧れたものだったけど。昔話と言えば、先生、まるで「けいおん」の「さわちゃん先生」じゃないですかw リフとか言い出したから、セリフより前にピンときた。当時の面影は見せなかったけど、チラリと軽やかに舞う姿が美しい。他にも、暗がりで舞い踊る観客の姿も面白い。
舞うと言えば、花壇の中を華麗に舞うトツ子さん。自分が何色なのかを掴んだのか。この踊るシーンも説明がなく、解釈が難しい。「色を掴んだ」イコール「将来の進路決定」の暗示かな。「色が見える」という不思議な才能。それ自体も何かの暗示か、単なる能力者か。そういえば、「音」も「音色」と、「色」と表現するんですね。
全体通して、友情の楽しさ、面白さ、清い尊さが描かれた映画だったのかと思う。友達と一緒に遊んでご飯を食べて、悩みを相談したり秘密を共有して隠し事をしたり。そんな友情を描いた青春群像というべきでしょうか。
最後のスタッフロール、尻尾の先まで面白かった。映画館で観る人、灯りが点くまで席を立たない方が良いかも。
(追記)
勢いで書いたレビューから少し考え足したことがあったので追記。
先生がまるで「けいおん」の「さわちゃん先生」みたいだと書いたけど、その先生の過去を書いたお陰で、おばあさんに打ち明けるキミさんや、母親と将来を話すルイ君、それぞれの親御さんにも過去があり、その「共感」から産まれる優しさを感じられる気がする。どんな話になったのか画かれてはいないけど、トツ子さんのエピソードでは具体的な会話シーンがあり、つまりは、他の子達もそんな感じなのだろうと類推できていた気がする。
登場人物の三者三様、それぞれ悩みを抱え、それを打ち明け、語り合うことで乗り越えていく。ライブの歌が三曲三様だったのもそのためか。レビュー文頭でロジックを感じないと書いたけど、自分の感じた映画のロジックはこんな感じです。懐かしさを感じさせる映画の舞台、親や教師の目を盗んで友達同士でする隠し事、それぞれに悩みを抱えながら、社会に向かって卒業していく。共感、ノスタルジー、そこからくる優しい映画であったのだなと考える次第です。
映画のスタッフロールでも、曲作りはパソコンでシーケンスソフト使っておきながら、カセットテープで生録とかw テープの懐かしさの共感ってこともあるけど、あの音色の感触もテープならではだったのかな。CD屋とか行くと、テープ版とか結構売られてますよね。
「衝突」ではなく「理解」で描く、暖かな青春物語。
◯作品全体
この作品には青春の苦悩にありがちな「衝突」の可能性がいたるところにある。男女関係、家族との不調和、学校のルール、そして「色が見える」という人とは違う特性。誰かと衝突し、傷つき、大人になる…こうした描写によって物語に起伏を作る。そういう作品になる要素にあふれている。
しかし山田監督がそうしなかったのは、相手を理解することの暖かさにスポットを当てたかったからじゃないか、と感じた。
トツ子ときみの関係性が象徴的だ。トツ子は退学したきみに対して、退学した理由を聞こうとしたりしない。一緒に時間を過ごす中で、ポロッとこぼれ落ちるようにきみは退学した理由を語りだすが、そこには衝突では描けない、理解の暖かさがあった。
ルイが島を出て遠くの大学へ通う、と伝えるシーンもそうだ。ともすればバンド作品特有の解散問題に発展する流れだが、トツ子ときみはそれを暖かく受け入れる。トツ子ときみは自身の嘘で誰かに迷惑をかけながらも、自分のやりたいことを成している。だから、衝突をしなくても理解できる。それぞれが自分自身にとってとても大事な問題を抱えているから、それを誰かに伝える難しさも知っている。それでも、離れ離れになるのは寂しい…その別れは普遍的かもしれないけれど、登場人物の心を繊細に描いているからこそ、「青春のほろ苦さ」が燦々と輝いていた。
そして誰かに気持ちを伝えることが苦しさだけではないことを、本作では音楽で表現していた。気持ちを表現することがどれだけ人を惹きつけ、心を踊らせてくれるのかは学園祭のシーンのとおりだ。
その後の中庭で踊るトツ子は、気持ちを表現できた喜びに溢れていた。トツ子のバレエは上手ではないけれど、見ているこちらまで溢れ出てくる達成感のような感情が印象的だった。
必要なのは衝突による物語の起伏ではなく、それぞれがそれぞれを理解して包み込む、暖かさ。先生や家族、クラスメイトたちも含め、その暖かな人の気持ちの描写が徹底されていて、とても優しい気持ちにさせてくれる映画だった。
◯カメラワークとか
・山田監督がよく使う、人物を画面端に寄せて空白を作る画面。今作は今まで以上に「感情の隙間」を感じさせる画面になってた。自分の中でもはっきりとしていない、相手に伝えるのも難しい感情、みたいな。きみが退学したあとの教会のシーンとかで使われていた。
・きみの造形は山田監督のこだわりを感じるなあ。クールな外見からフード付きのダボダボパーカー着てるのとか(『けいおん』の秋山澪っぽい)、パーカーで髪の毛が膨らんでる後ろ姿とか、髪の毛を耳にかける仕草とか(『リズと青い鳥』の鎧塚みぞれっぽい)、自分の気持ちを話すときに爪を見る芝居とか。
・瞳のアップショットの演出がやっぱり好きだなあ。本作だと本屋できみを見つけたトツ子のシーンとかで使われてたけど、その目線の先にあるトツ子だけの特別な光景っていうのを、その目線の先を見せずに表現するっていう。山田監督のが一番濃度濃い気がする。
・島を出ていくルイを追う、堤防できみが走るカット。引きのカメラで横位置、手ブレのドラマティックさがとても良い。山田監督作品だと『けいおん』1話とか『劇場版けいおん』、『たまこラブストーリー』、『聲の形』、『モダンラブ・東京』とかいろんなところで使ってる演出だけど、心の機微を感じる山田監督作品での「走る」はすごく大きなアクションとして映えるなぁと感じる。
◯その他
・ルイのデザインとか芝居作画はちょっとかわいくなり過ぎちゃってる。「ゆるふわ男子」をちょっと通り越してしまってるような…。
・きみ役・髙石あかりの声がすごく良かった。『べいびーわるきゅーれ』でも思ったけど、声の芝居がすごく自然。
・宗教上の理由で山田監督作品に点数は付けられません。
音の良い映画
山田尚子監督は、このところ張り詰めた緊張感の作品が続いていたのだが、久しぶりに軽やかな作風に戻ってきた。この軽やかさは『けいおん!』や『たまこ』シリーズの頃を思い出させるのだけど、退行では決してなく、進化した上でのあえての軽やかさといった感じだ。音楽を題材にしていることも含めて、懐かしさもあり、同時にサイエンスSARUに拠点を移して獲得した新しさもさらに突き詰めている。 色々な魅力がある作品なのだけど、ここでは音楽を含めた音について書いてみたい。山田監督の映像の心地よさというのは、音のセンスにもある気がしている。音楽に対してこだわりが強い人というのは、多分ファンにとっての共通認識だけれど、本作ではその意識が特に高い。色々な楽器が出てくるのも色々な音色をスクリーンで聴かせたいという現れだろうと思う。アニメは映像について語られることが多いのだが、映画の構成要素は映像と音である。山田監督はアニメ作家の中で、かなり音にもこだわりがあるタイプ。自然音もSEこすごい心地よい作品なので、これを味わうために、是非劇場で見てほしい作品だ。
ことばに頼らない丹念で繊細な語り口
主人公トツ子のナレーションで始まるが、見終わってみると、秘めていた心情を打ち明けるような説明くさいセリフはない。主人公たちの過去も匂わせるだけで具体的な説明はなく、心のうちはほぼちょっとした身体の動きやさりげない間で表現されていて、これが最初に観る山田尚子作品なわけではまったくないが、なんと繊細な語り口だろうとしみじみ思う。終盤になっての恋愛っぽい要素(恋愛だと断言はしない)も、序盤の本屋のシーンからいかにきみちゃんがルイくんのことが気になっているかを丹念に積み上げていて、言葉は少なくとも非常に親切な作りでもあると思う。しかしそれにしてもミス◯ルについては、作品世界に寄せようとしているだけに余計にノイズに感じてしまい、しかも最後にお口直しみたいにポストクレジットがあるのだから、ミス◯ルだって立つ瀬がないでしょ!と思ってしまった次第です。監督らがいくつかのインタビュー記事で主題歌について語ってはいたが、やっぱりあの3人の物語の後に、誰かが書いた歌詞はいらなかったのではという意見です。
音と色、そして青春の息遣いが柔らかく沁み渡っていく
主人公トツ子は何かにつまずいたり、壁に直面している女の子というわけではない。むしろ普通の子と同じ。でもだからこそ、この歳ならではの漠然とした感情を抱え、ふんわりとした穏やかさを持ちつつ、彼女は今日も教会堂で人知れず祈りを捧げる。人の色が見えるというトツ子。彼女がずっと友達になりたかった、綺麗な色を持つ同級生。さらにもう一人を交えて、突如組むことになった3人バンド。話はとんとん拍子で進んでいくが、淡いタッチで感情を柔らかく湛えるアニメーションや牛尾憲輔による虹色の音楽も相まって、彼らの友情の日々は澄み切ったハーモニーを奏でゆく。巨大なことを成し遂げるわけでも、大きな発見があるわけでもないし、よくある仲違いから和解へと至る物語というわけでもない。でもどうしてこんなに深遠に触れるのか。個々の音が重なり合う瞬間、無性に心が震えるのは何故なのか。鑑賞後も一筋の色がずっと胸中を照らし続ける作品である。
no chemistry
早稲田松竹で鑑賞 空いてました これは温い… キャラクターの掘り下げが全然されていないような 見方は観客に委ねらているかのような 期待していたライブシーンもぐっときませんでした 残念 鈴川紗由、髙石あかり、木戸大聖の声優はよかったです 最近の俳優は上手ですね
思春期を描いた佳作
後味の良い映画だった。映画の画も音楽もそうだが最高を目指していない。どこにでもいる、どこにでもある話を描いている。 特筆するほど良い場面はないが、たんたんと丹念に描く監督の姿勢は好感が持てる。 最後が演奏会で終わるのもうまい終わり方だと思う。 音楽が凄く好きな人が脚本を書いたようだ。 主人公たちは音楽家を目指していない。 その意味このコンサートは唯一のハレの舞台だ。 監督は音楽を食い物にしてのしあがろうとする人たちを描きたかった訳ではない。 音楽に携わる名もしらぬ人たちを描きたかったのだ。 そういう意味で、成功していると思う。 個人的にはきみの横顔が好みだった。 絵は魅力的だった。 人がさりげなくうまいく描けている。
皆いい子で人間ドラマがない。絵が綺麗なだけならイラストで充分
絵はため息が出るほど美しい。演出もセンス抜群。でもキャラクターとストーリーが弱すぎた。 登場人物が全員いい人だから葛藤が生まれない。キャラ同士の相克がない。最初からみんな仲良し。親に対して秘密があっても、親もいい人だからどうせ分かってくれると話が読めてしまう。 後半はひたすらあくびが出た。 劇中歌がダサいとかカッコイイとか正直どうでもいい。最初から大した悩みも乗り越えるべき困難も何もなく、周りの大人も先回りして察して分かってくれる。これじゃ全くドラマが深まらない。こんな話は語る価値がない。 何も主人公と対立するのが悪人である必要はない。価値観や主張が違えば利害がぶつかる。それだけでいいのにみんな考える事が一緒。 平家物語が面白かったのは美しい絵にキャラクターの相克がしっかりと描かれていたから。オリジナルだと京アニっぽいぬるい内容になってしまうというなら、これからは原作モノでやってほしい。
リアルな描写とそれを包み込む優しさ。
[あらすじ]
他人持つ「色」が見えるミッション系の女子校の寮生の日暮トツ子(CV鈴川紗由)は、同級生の作永きみ(CV高石あかり)の持つ美しい青色に惹かれて彼女に関心を持つ。
高校を退学したきみを探したトツ子は再会した古書店しろねこ堂で、きみの奏でるギターの音色に惹かれ、同じく彼女のギターに惹かれた影平ルイ(CV木戸大聖)とともに、バンドを結成する。
ルイが暮らす離島での小さな教会が、バンドの練習場所だ。行き帰りのフェリーでの船酔いや慣れないピアノの演奏を練習する中で、トツ子は天体の授業を元に作曲のインスピレーションを得て、バンドは曲の完成を目指していく。
一方で、きみは同居するおばあちゃん(CV戸田恵子)に高校を退学した事を言い出せず、島で唯一の診療所の息子であるルイは肉親に音楽に熱中している事を秘密にしていた。
「僕たちは、好きと秘密を共有しているんだ」
バンド活動は周囲との秘密の中で進行していくーー。
[所感]
素晴らしい作品を観ました。
四季を通してしっかりと描写して、光と色に関する解説は実験的な描写もあり、迫力のある天体の描写もあり。
しかし、この物語はトツ子の他人の色が見えるという能力も特に超常的な展開を見せることはなく、それぞれの成長と別れに着地します。
この作品のすごいところは、現実の美しい風景を描写し、しかしアニメならではの美しい箱庭として成立させる事に注意を払い、完成させた事でしょう。
パンフレットやエンドロールでは、ロケ地が長崎市や五島列島である事が明記しているけれど、教会がなければ、日帰りできる離島があり、市電が走る瀬戸内地方だと誤解する事もできるでしょう。なにしろ、トツ子の通っている高校の名前も出てこないのです。
山田尚子監督はこの作品を描くとき、キャラクターを優しく包み込み、慈しむ目線で描いていると思いました。
例えば、幼いトツ子のバレエの動きは可愛い。同年代の子に比べてもワンテンポ遅れているのだけど、それがまた幼いトツ子のかわいらしさやキャラクター性に結びついています。
また、トツ子やきみを観た時、デザインの思い切りの良さに驚きました。
トツ子の眉毛もまつげもまぶたも瞳も、繊細な線をいくつも重ね合わせた描き込みによって描画されています。しかし、その体型はスレンダーでスカートも膝丈で、リビドーを刺激するようには力を割いていないのです。キャラクターのシルエットは現実の人間に近く、だからこそ楽器の描写やバレエのダンスもリアルに描いても違和感がないのです。
ルイが演奏するテルミンという楽器は初めて知りましたが、弦もない中で空中の手の仕草だけで演奏する描写をギターやキーボードに劣らないリアルさで表現出来たのではないかと感じました。
リアルさとそれを上回るキャラクターへの優しさは、観ていて安心感があり、トツ子と退学したきみの事を否定しないシスター日吉子(CV新垣結衣)など、周囲の大人が暖かく見守っており、ストレスの多い世の中だからこそストレスのない作品を作りたいとインタビューで答えていた山田尚子監督の言葉も納得できる物でした。
しかし、きみやルイの保護者であるおばあちゃんやお母さん(CV井上喜久子)は、本当に秘密を知らなかったのか、考えてみると彼女たちは知っていて秘密を打ち明けてくれるのを待っていたのかもしれないと感じさせられました。例えば、おばあちゃんはきみに聖歌隊を引っ張っていける実力があると聞いたと話しているシーンがあります。他の方がツッコまれていましたが、生徒の退学に保護者に話が行かないわけはなく、裏ではお話を聞いていたりしたかも知れない、とは思っています。後述するライブのシーンで校長と腕を組んでダンスをしたのは、その場の感情の爆発ではなく、何か縁があったのではないか、と妄想しています。ルイのお母さんも果たしてパーカーで顔を隠したくらいで息子の姿が分からなくなるでしょうか?
聖ヴァレンタイン祭のライブのシーンは、観ていて作中の人物も楽しんでいる感じが伝わってきて良かったです。
はしゃぐシスターたちの姿は『天使にラブソングを』を思い出しますし、おばあちゃんの弾けた姿と校長先生と腕を組んでダンスをするシーンは、作中では全く面識のなかった二人の女性がつながる事に、そこまで楽しんでくれたんだ・・・と最近の言葉で言えばエモく尊かったです。
山田尚子監督と吉田玲子氏と並んで現在のアニメ界の女性作家で旬な方は、岡田麿里氏だと思いますが、『心が叫びたがっているんだ。』で描写された娘の演劇に衝撃を受ける母親とは対照的な学園祭で、こんなアプローチもあるんだと表現の幅を見せつけられました。
これからしろねこ堂のみんなの将来が気になりますが、エンドクレジットの後のSee you! は果たして上映後にyoutubeで「水金地火木土天アーメン」の動画を見てね、という意味なのか、それとも続編を制作する予定があるのかは気になります。
インタビューを見る限り、きみとルイの歌はそれぞれ自身の作詞をお互いが曲を付けたという事で、続編があるとすれば『たまこラブストーリー』のようなきみとルイの恋愛なんかがあっても良いような気もしますが・・・どうなる事でしょうか。
喧嘩と色事の無い娯楽作品
タイトルの言葉は
ある脚本家がお師匠様に言われた教えから
「芝居が持たなくなったら喧嘩か色事を入れるんだよ」
その言葉にあるように
多くの娯楽作品では
バトルやラブストーリー(またはエロ)が大きな売りになる
特に最近の多くの大ヒットアニメ映画がそうだし
だが本作には見事にそれらが無い
メインキャラもサブキャラも
みんな平和的
トツ子がきみを寮に泊めた問題も
労働奉仕で済んじゃうし
メイントリオが男1人女2人だと
普通はトライアングラーであわやバンド解散とかなるが
本作は全くそんなことは無いし
合宿しても全くエロい展開にはならないし
事件らしい事件も無く
クライマックスは教会でライブ
尼さんが踊りまくるのは
「天使にラブソングを」か「ブルースブラザーズ」辺り
意識したのかも知れない
ルイが船で去るシーンでは
ルイが海に飛び込まないか焦った
(ヴァイオレット・エヴァーガーデンじゃねえよ!w)
京アニ出身の山田尚子監督ということもあってか
絵がとにかく綺麗
カチッとした感じではない
ほんわかした画風は「リズと青い鳥」を想起させる
あと主人公が人を色で見えるという設定のせいもあり
色使いがまた淡くて綺麗
個人的にはまた京アニに戻って来て欲しいとも思うけど
本作見てからは監督は京アニ流を日本アニメ界で布教する為に
旅立ったと認識することにした
そんな訳でとても平和的な秀作
物凄い感動ではないが
ほんわかいい気持ちにさせる
ただ最近の大ヒットアニメで
感動した泣いたと騒いでる層には
良さが理解出来ないかも知れない
濃い味付けのインスタント食品や総菜に慣れた人が
京風の上品な味が薄味と感じるように
期待はずれ。ただのよくあるくだらん青春もの。
人の色が見えるというストーリーが楽しそうなので劇場で鑑賞したが、
色が見える描写が少ない。表現の仕方が薄っぺらい。そしてやっと「何色だ」と言ったと思ったら対してそこに深い意味はなかった。
一体何が言いたい映画なのだ。
バンドの男の子がもう思春期のいい歳なのに、女の子に対して距離感近くてなんか天然すけこましで普通に気持ち悪い。
そして髪をちゃんと切れ。
あと主人公の女の子が微妙に太ってるのがなんか嫌だった。
ぽっちゃりの天然はなんか腹立つからやめた方がいい。
主人公が細くてスタイル良かったらまたちょっと違ってただろうに。
全体的にそこらへんの中身のないほのぼの青春アニメ系で、劇場料金で観る価値はなかったかもしれん。。
変えられないものに折り合いを付けていく
予告の曲で一気に引き込まれ、前々から気になってはいたものの滑り込みの鑑賞になってしまった。良い意味で期待通り、なおかつ想定していた展開と違い少し驚いた。
悩みを抱えた少年少女3人の物語といえば必ずと言っていいほど心の沈む展開があるが、この作品にはそれがなくとても優しい物語だった。僅かばかりの人物らの心の痛みは秘密を抱える辛さを柔らかく伝えてくれる。
秘密を抱え込んでしまう人たちの背中を優しく押してくれるような作品でとても心が温かくなった。
秘密を抱えていると、どうしても心も抱えるものも重くなっていくもので…吐き出してしまえば思っていたより周りの反応は優しかった、なんてことは現実でもままあること。
本作は変えられないものとどう向き合っていくかを大きなテーマとして掲げているように感じる。
人が色で見えるトツ子の祈り「変えることのできないものについて…」は人の色が見えるという自分の特性を疎ましく思った上での祈りかと考えたが、意外にも前向きに受け入れている様子が見て取れる。
しかしながら自身の特性を内に秘めたまま日常を送るさまは自身と他者の間のギャップを確かに映している。
きみの秘密である中退は、自己評価と他者の評価のギャップによって引き起こされたものだった。祖母に打ち明けられず、負い目を感じながらもなあなあにしながら過ごすさまは、親に言いづらい事を抱えながらもひた隠しにした幼い頃の自身をみているようでむず痒くなった。
ルイの親の期待と自身のやりたいことの板挟みにあいながらもひたすらに自身の音楽の道を一つ一つ、中古屋を巡り、古本屋を巡りと積み上げていく姿はとても眩しく映った。
物語を通してみるとトツ子は自身の特異性、きみは自身の意志、ルイは医者の息子という出自、これらが彼らにとっての変えられないものだろう。
トツ子は秘密の共有を経て、人に合わせ特性を隠す生き方から自身をようやく表に出したことで自分の色が見えるようになったのだと思う。
きみは単純に祖母に自身の気持ちを伝え負い目を乗り越えた。また、ライブ前には友人らの変わらない態度に改めて気づくことがあったのだろう。
ルイは自身の変えられない出自を受け入れながら音楽も楽しむ、初期と変わらないスタンスながらも確実に前を向いている、そんな印象を受けた。
秘密の共有以前以後で行動自体に明確な変化はないが、それでもどこか自己肯定感を持って終わったように感じる。
もとより彼らは最初の一歩を踏み出すという一番大変な行程を終えているようにも思う。トツ子は自身の特性に関しては既に踏ん切りがついている様子、きみは中退というとてつもなく大きな一歩を踏み出したあとだ。ルイは楽器の練度からみて音楽を追うことをやめる気は毛頭ない。しかもバンドを組むという唐突な提案にも踏み出せる勇気もある。最初からある意味で決着はついていた。
ただ、心を軽くするあと一歩、秘密を打ち明けることができていなかっただけなのだ。この心を軽くするための一歩の重要性をこの作品は教えてくれたように感じた。
唯一気になったところはルイくんの万能さだろう。楽器を奏でることは当たり前、勉強も申し分なく医者志望、バンド云々も彼が発端、さらには離島の古教会という雰囲気バッチリな場所の提供。完璧すぎる。トツ子の特異性も彼の前では無力だ。ルイくんの持つガラケーには親の圧力があったのかなどと考えてみたり、抜け道としての勉強用のパソコンという口実を作ったりしたのかな、などと邪推も捗る。イケメン高身長知的メガネ穏やかジョン・コナーなんて属性が盛りすぎもいいとこだ。
変えられないものに時折立ち止まって考えてしまう自分にはとても刺さった映画だった。重い展開を苦手とする自分にはとても受け入れやすい、穏やかな気持ちで観れる今作はとても好みの作品だった。
キリスト教のミッションスクールという舞台も全体の雰囲気に加えて、過ちを犯したあとのシスターのスタンスなど考えさせられるものが多かった。最後のライブシーンのノリノリシスターなんかは「天使にラブソングを」を思い起こさせたがあれはやはり狙っているのだろうか。
近年まれに見る面白くない映画でした。。
他の方がレビューで書いているように、設定に無理がありすぎるうえ、感情の動きの描写が大雑把で全く感情移入できず、内容が入ってこない、感動も何もないです。。 私はこの監督の映画を初めてみたのですが、最後のミスチルの曲を聴けたのでチャラかなーくらいでした。。この監督の作品はもうみないと思います。。ざんねん。
映像も音楽も良かった、内容は薄かった
映像が綺麗で、特にとがった癖のある登場人物も出てこないし、
逆境という逆境もなくて気楽にゆったり観れる映画。
でも逆にそれだけ平和なのが無味無臭な仕上がりになってしまっている。
3人のバンドメンバーそれぞれに人に言いにくい悩みがあるのだけど、
人が色で見える子は自分の色が見えないと悩んでいたけど、
見えない事で何が問題なのか解らないし、
察するに幼少時代から人と違う事で軋轢が生じて、
ちょっとした差別やいじめを受けてたのかもと邪推するけど、
劇中で彼女の口からそんな悩みが出される事はなかった。
足が綺麗なギターの子も学校を辞めた理由が全く解らない、
祖母にそのことを知られるのを恐れているのだけが一番の悩みで、
辞めて本当にやりたい事があるとか、神が信じられなくなったとかの理由もなく薄い。
重箱の隅をつつくけど、そもそも生徒が学校辞めるってなったら祖母に連絡が行って当然だと思うんだけど、規律に厳しそうな学校だし。
テルミン男子も医者よりもやりたい事があるのかもしれないけど、
全くそれも語られないし、影が薄い。
でも最後の方は全員スッキリした感じになって学園祭の集大成のバンド演奏。
過剰にキャーキャー盛り上がるわけでもなく、静かに盛り上がる感じで、
曲もシリアスな感じからポップな曲まで幅があって良かった。
でもそこで初めてギターの子がボーカルなんだって知ったぐらいバンド要素も薄い。
結成してたのは知ってたけど気付いたら舞台に上がってた。
思い返すとこの映画結局何が見せたかったのが解らない。
ふわっとした波だけ立てて、最後はバンド演奏で感動したでしょ?って言われた気がしてならない。
最後に自分の色が見えたと言われてもそれが何となってしまう。
もっとおぞましいぐらいの汚い色の人を登場させて、その人との対比で綺麗な色の人の意味を教えてほしかった。
目を引く要素が色々出て来てつまらなくはないのだけど、それに対するアプローチが薄くて物足りなさを凄く感じる映画。
つまらなすぎる。
これまで観た映画の中でも、ワースト3に入るほどのつまらなさでした。まず、この映画を通して何を伝えたいのかが全くわかりません。山田尚子監督作品ということで期待して観に行きましたが、途中で退席したくなるほどでした。時間とお金を返してほしい。
エンドロールを見て、脚本が他の方であったと知り「なるほど」と思いましたが、それでも多くのスタッフが関わっているはずで、誰もこの脚本に対して異議を唱えなかったのかと疑問が残ります。
主人公の言動が終始理解不能なうえ、例えばキミの高校を辞めた本当の理由が不明のままであったり、男の子が医学部進学を目指していてそれが音楽の足枷になっているのかと思いきやそうではなかったりと、それぞれの悩みやキャラクターの個性が薄いまま、全く物語がいきいきとしていません。悩みを乗り越える描写もなく、キャラクター設定が浅すぎて感情移入ができず、途中で眠くなりました。
また、長崎の美しい風景を描きたかったのかもしれませんが、キリスト教系女子校の設定が映画の内容に意味を持たせず、主人公の「他人の色が見える」という設定も全く活かされていません。恋愛、進路、友情など多感な時期の要素を詰め込みすぎた結果、どれも中途半端に終わってしまい、映画として大失敗しています。むしろ意味不明なシーンで無理に尺を引き延ばしているように感じ、観客を侮辱しているのかとさえ思いました。例えば、冒頭から「自分の色が見えない」と繰り返していたのに、最後には何の伏線もなしに突然見えるようになったり、謎のバレエシーンが挿入されたりと、意図の伝わらないシーンで構成されており、途中から笑ってしまうほどです。結局、脚本家の自己満足に終始した作品になっており、作画や声優が良いだけに非常に残念です。
最後に、主人公には「人を色で判断するな」と言いたいですし、もっと寮の友達も大切にするべきではないでしょうか。
優しく平坦であることの良さは理解しつつ低評価
監督のこれまで作られた作品のファンだったのでいち早く劇場へ。
情景や人物描写の美しさは期待以上でした。
特に最後のライブシーンは素晴らしく、劇を締めくくるにあたり、かなり捲り上げた感じがあったように思います。
ですが、私はこの映画を高く評価できませんでした。
その理由をあらすじとともに以下に記載します。
【あらすじ】
主人公のとつこは人物の「色」が見える。つまらなく言ってしまえば共感覚やオーラのようなものだろう。
このことが理由で人とは少し違った世界の見え方をしているため、やや人間関係では不器用なところがある。
そんな中、学校で出会った美しい青色を持つきみに憧れを持ち、訳あってバンドを組むことになり、美しい緑色をもつルイをメンバーに加えて互いの心を自己開示をしながらこっそりと練習をし始める…というのが大筋。
評価できないと感じた点:
①どうしても物語に浅さを感じてしまうこと。
この映画の大切な要素として、悪人が登場しないという点がある。
とつ子の優しさや純真さも相まって、劇中を一貫して事件は大きくは起こらず、微笑ましいシーンの数々も私は楽しめたつもりだ。
一方で、物語としてどうしても起伏に欠ける構成とも言えるように感じた。
きみやルイは親には言えない隠し事があるのだが、物語としてはこの要素が弱く、見るものを引き込むには不十分な仕掛けであるように思う。
要は彼らは周囲や親からの期待に迎合出来ないのだ。
それは思春期に誰もが陥りがちな、一種の通過儀礼であり、この映画は現代の若者の、脆くて過敏な彼らの感受性を監督の視点から描いたものだと解釈した。
私はこの理解の上で、やはりストーリーには起伏が必要であったように思う。
上記の通り、穏やかで平坦なところがリアルっぽく感じられるのだが、それにしては台詞回しが芝居がかっていて妙に没入できない。
また、彼らの持つ暗い陰の成分が中途半端にチラつき、穏やかな物語が良さなのを理解した上でも全体がぼんやりしすぎている印象を持った。
②ルイに成分を詰め込みすぎて没入しずらい
バンドの唯一の男性メンバーであるルイに属性を詰め込みすぎではないだろうか。
小さなことに感じられるかもしれないが、かれが演奏する楽器としてテルミンを出す必要はなかったのではと思う。
音楽を大きなテーマとして扱う上で、楽器や音色の持つ意味について、もう少しパリッとしたテーマを打ち出しても良いのかな、と言うのが率直な感想だ。
乱暴な言い方かも知れないが、テルミンの音色は今作に意味をもたらさなかっただけでなく、むしろやや浮いている、ノイズになっているように感じた。
肝心なシーンで弾かれるテルミンが妙に魔が悪く、それなら単純にキーボードのほうが良かったなと思ったシーンが複数ある。
また、ルイ自体が物語上での舞台装置的な立ち位置を持ち、彼の言動が無理に芝居がかっている感じが終始見受けられた点も残念だった。
総じて、話もビジュアルも美しさを感じるが、映画としてはやや散漫出会ったように思う。
私が小賢しく老いたために、本作の良さだけを見つめられず、このように起承転結や小道具の意味を考えてしまっている可能性があるのが少し忌まわしいが、正直な感想として書き残したい。
素敵な青春映画
監督が京アニ出身というだけあって、繊細で美しいアニメーションでした。 出てくる本屋、学校、教会がすべてツボ。最後のライブシーンもよかったです。しばらく「すいきんちかもくどってんアーメン」が頭から離れませんでした。 でも、正直学校辞めたのに保護者に連絡いくでしょ、普通。。とは思いました。
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