劇場公開日 2023年2月3日

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「武闘派サンタクロースからの過激で普遍的なプレゼント」バイオレント・ナイト 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0武闘派サンタクロースからの過激で普遍的なプレゼント

2023年5月5日
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鑑賞方法:DVD/BD

笑える

楽しい

興奮

開幕、酒場に入り浸ってるサンタクロース。酒を煽り、世の子供たちに悪態付きながら。
以前ビリー・ボブ・ソーントンが演じた“バッド・サンタ”的な…?
しかし何故かこのサンタ、その店の女主人の孫の名を知っていて、プレゼントを置いていく。仕事だと言って屋上へ。
トナカイが引くソリに乗って、空へ。
そう、彼は本物のサンタクロースだった…!
これだけだったら素敵なクリスマス・ファンタジー。(…いや、素敵か? やさぐれてるし、リバースするし)
そんなサンタさんが遭遇する聖なる夜(ホーリー・ナイト)ならぬ、バイオレント・ナイト…。

設定やあらすじをほとんど知らぬまま見たので、あらびっくり!
武装集団がサンタクロースの格好をして襲撃するクライム物だと思ってた。でなければ、主人公がサンタの格好をして武装集団と闘う。
どちらも違った。まさかの本物のサンタさん!
サンタさんがある屋敷で武装集団と出くわして闘う…!
よくまあこんなおバカなアイデア思い付いたもんだ。
そう、はっきりとおバカ映画なのだ。立派なおバカ映画。それでいて、ちゃんと面白い。
プロデュースはデヴイッド・リーチ。彼が立ち上げ、『Mr.ノーバディ』や監督した『ブレット・トレイン』と同じ“87ノース・プロダクションズ”作品。
サンタとは言え中年親父アクション、ブッ飛び設定…なるほど、通じる。

サンタクロースのキャラが最高。
“ホッホッホッ”と笑う優しいイメージは何処に…?
物欲まみれの世の子供たちを毒づき、酒を飲み、訪れた家々でお菓子をつまみ食い。
メタボ体型で、やさぐれ、うんざり。
嗚呼、サンタさんのイメージが…。
一応…と言うか本物のサンタなので、闘いのエキスパートではない。
武装集団に、サンタとしての特殊能力や袋の中の“プレゼント”や周りのクリスマス・グッズを駆使して。
彼は最初からサンタクロースではなかった。その昔、大昔、野蛮なヴァイキングだった。(あれ、『ノースマン』見たばかり!)
その時の記憶が覚醒。かつての相棒は“脳天潰し”。今またハンマーを手にして…。(あれ、雷神様…!?)
危機や傷付き。孤軍奮闘。
聖夜にぼやきながら悪党どもと闘う。完全に『ダイ・ハード』。
その姿に手に汗握り、興奮。
デヴイッド・ハーバーがピタリとハマり。またまた現れた中年アクションスターの新星!

まあとにかく、アクションが過激。
痛々しいわ、血はたくさん流れるわ、首や身体も裂かれるわ、手榴弾で吹っ飛ぶわ、グッサグッサ、人もたくさん死ぬわ…。
♪︎きよしこの夜 血は流れ…
…な~んて言うとヤベーホラー映画みたいだが、本当にそう。
クリスマス時期に見なくて良かった…?
くれぐれも痛いのやグロいのが苦手な人、“良い子リスト”に載ってる子は見ないように。
でもちゃんと血まみれになるのは“悪い子リスト”。

コメディ要素もたっぷり。でもこちらもファミリーで見れるゲラゲラ楽しいんじゃなく、ブラックな笑い。
武装集団が押し入った豪邸。その地下金庫にある3億ドルが目的。
武装集団は非情だが、囚われた金持ち一族が何て言うか、武装集団リーダーの言葉を借りれば、“ムカつく家族”。
女帝のようは女当主、私利私欲まみれの子供たち…。
一応危険に晒されているのに、全く同情心が…。
常にチクチクいがみ合い、皮肉言いまくり。そんな彼らの狼狽ぶりを醜態丸出しに。
これがある意味、一番の笑い所なのかもしれない。

そんな“強欲家の一族”に於いて、唯一の“良い子リスト”の孫、トゥルーディ。
サンタクロースを信じるピュアな女の子。武装集団から逃れ、サンタに協力。
最近『ホーム・アローン』を見たばかりで、迫る武装集団に“ホーム・アローン作戦”。(本当に“良い子リスト”…?)
『ダイ・ハード』×『ホーム・アローン』もさることながら、クリスマスネタもいっぱい。
クリスマスが嫌いな武装集団リーダーの呼び名は“スクルージ”。
バイオレントなアクション・シーンを、クリスマス・ソングが彩る。

下手すりゃトンデモ作。
それを痛快スカッとなバイオレンス・アクション、ブラックな笑い、ちょいファンタジー、そして意外や普遍的な感動メッセージでデコレーション。
信じる事。
家族の絆。
クリスマスや子供たちにうんざりしていたサンタクロースがクリスマスや子供を救い、彼自身も子供に救われる。
だって今宵は聖夜。
案外真っ当な作品…だったのかも。

武闘派サンタクロースからの過激なプレゼント。
あなたの家にもお届け。
歓迎? 勘弁?

近大