マイヤ・イソラ 旅から生まれるデザイン : 特集
旅と恋が芸術活動の源泉!マリメッコのデザインを生んだ女性アーティスト
話題の映画を月会費なしで自宅でいち早く鑑賞できるVODサービス「シネマ映画.com」。北欧フィンランドの国民的ブランド「マリメッコ」の伝説的デザイナー、マイヤ・イソラのドキュメンタリー「マイヤ・イソラ 旅から生まれるデザイン」が、劇場公開直前プレミア上映として、2月23日~26日まで先行独占配信されます。
19歳でシングルマザーとなり、マリメッコを代表するデザインの多くを手がけたデザイナーであり、多くの絵画を発表したアーティストの知られざる人生と創作の源を、彼女が残した作品、娘クリスティーナの証言と送られた手紙、アーカイブ映像とともに映した本作について、映画.com編集部が見どころを語り合いました。
シネマ映画.comで今すぐ見るマイヤ・イソラ 旅から生まれるデザイン (2021年製作/100分/G/フィンランド・ドイツ レーナ・キルペライネン監督)
<あらすじ>19歳で娘を出産後に芸術大学へ進学したマイヤ・イソラは、在学中にマリメッコ創業者アルミ・ラティアに認められ、デザイナーとしての道を歩み始める。旅することを原動力とした彼女は、激動の時代の中で世界中を旅しながら、その経験をエネルギーに変えて新たなデザインを次々と生み出し、38年間でマリメッコに500以上のデザインを提供した。
座談会参加メンバー
和田隆、編集部スタッフM、ドーナッツかじり、今田カミーユ
■旅と数度の結婚&恋多き日々 「マリメッコ」デザイナーの知られざる激動の人生に驚き!和田 独創的な花柄などのデザインは、いつもどこかで目にしていたように思いますが、それがマリメッコというブランドのものであること、代表するデザインの多くを手がけたのがマイヤ・イソラであることを、この作品を見てちゃんと認識しました。皆さんはご存じでしたか?
M マリメッコというブランドや定番のデザインは知っていましたが、デザイナーのマイヤ・イソラについてはこの映画で初めて知りました。
ドーナッツ 私も同じです。マイヤ・イソラさんのお名前も、イメージするマリメッコのデザインの多くが彼女の手によるものだということは、初めて知りました!
今田 私も同じくです!北欧らしい洗練されたデザインが素敵だなあと思っていましたが、マイヤさんがこんなに波乱万丈の人生を生きていたことに驚きました。
ドーナッツ 「旅から生まれるデザイン」という邦題がまさに! という、旅をし続ける人生を送っていらっしゃったのですね。
M 20年くらい前だったかな。表参道にお店ができたりして、日本でもブームになりましたよね。北欧デザインの火付け役というイメージです。シンプルな黒いリュックも人気がありますよね。
和田 日本でもブームになっていたんですね。確かに、ケシの花をモチーフとした「ウニッコ」など、38年間で500以上のデザインを提供したマイヤさんの創作への情熱はすごい。
M 花や植物をモチーフにしたデザインのイメージが強かったので、彼女の生き方はなんだか意外でした。私の勝手な北欧のイメージで、もっと牧歌的な感じを想像していたというか……。
和田 激動の時代の中で世界中を旅し、恋多き人で、何物にも縛られない自由な生き方は、現代の多くの人に刺激を与えるのではないでしょうか。
■ムーミンの作者とも交流が パワフルな北欧の女性アーティストたちM ムーミンの作者のトーベ・ヤンソンさんも戦時中にムーミンを創作していたり、北欧のイメージが変わりました。
ドーナッツ 劇中にマイヤさんとトーベさんが一緒に食事をしたという、手紙の言葉があり、ふたりに交流があったんだ!と、静かな興奮ポイントでした。
今田 トーベ・ヤンソンさんもかなり苛烈な人生を送っていましたよね……
ドーナッツ 去年映画「TOVE トーベ」を見て、トーベ・ヤンソンさんの人生を知り衝撃的でした。そんな時代を生きながらも、クリエイティブに創作を続けたということが、まずシンプルにすごいですよね。
■19歳で産んだ娘、クリスティーナがマイヤの一番の理解者今田 マイヤさんはシングルマザーで、その後も様々な場所で創作活動されていましたが、本編にも出てくる娘さんは、いわゆる一般的ではない生活を送ったお母さんに協力的な感じでしたね。幼少期にはさみしい思いもされたとは思うのですが……大人になって、お母さんの偉業を継承されているのは素敵ですね。
M 私も娘さんが後にマイヤさんのデザインを手伝い始めたのはちょっと意外でした。創作活動と恋愛に生きたマイヤさんだけど、一番の理解者は娘さんだったのかなって感じましたね。
ドーナッツ 最初は、マイヤさんのことを語る娘さんの横顔が、少し寂しそうにも見えたので、どのような関係だったんだろう……と不安になったんですが、終盤の一緒に美術館を回ったり、デザインをしたり……というお話や、おふたりの写真を見て、あたたかい気持ちになりました。Mさんの仰る「一番の理解者」という言葉がしっくりきます。
和田 娘さんもデザイナーとなり、孫の三代に渡ってデザインが継承されているそうです。
■恋のエネルギーを創作活動に活かしたマイヤ今田 それにしてもマイヤさん、結婚や恋愛でつらい思いもされたようですが、行く先々の土地でモテモテでしたね。お相手もそれぞれマイヤさんとは異なる文化圏で生まれ育っていたり、年の差もあったりと刺激的な恋だったのでしょうね。
M 「創作は生きている実感を得る唯一の手段だ」「フィンランドでは決まった思考や習慣に囚われてしまう」っていう言葉が印象的でした。芸術家として旅に出ずにはいられなかったのかなって。そんなマイヤさんに対して、娘さんが「母にとって恋は芸術活動の1つでした」「新しい恋人からエネルギーをもらって自身の作品に活かすのです」「そのことを母は“人を食べる”と表現しました」って達観していたのがすごいなって。娘さんにインタビューしたくなりました笑。
和田 常に貪欲に挑戦し続けるその姿に惹かれるのでしょうね。“食べられた”旦那さんたちも彼女のデザインに少しは刺激を与えられたのでしょうか(笑)
一同笑
M 少し前に瀬戸内寂聴さんのドキュメンタリー映画「瀬戸内寂聴 99年生きて思うこと」を見たんですけど、マイヤさんと寂聴さんにちょっと重なるところを感じました。恋愛って創作活動の源なんだなぁって。
ドーナッツ 住む場所も恋愛も、自分も含め多くの人は、早くどこかに落ち着こうとしがちだと思うのですが、マイヤさんは、常に新しいことを求めて、変化せずにはいられないという感じでしたよね。マイヤさんの人生をたどることと並行して、年代と発表したデザインのシリーズが挿入される構造なので、本当にそのときに過ごした場所、一緒に過ごした人、衝撃を受けた事件が、創作にたっぷりと生かされていることが、見ていてよく理解できました。
■マリメッコを創業した女性経営者との関係も面白い今田 マイヤさんの作品は、さまざまな人生経験や、いろいろな土地を経るごとにどんどん良くなっていきましたよね。あとは、学生時代の作品を見てマイヤさんをスカウトしたマリメッコ社の女性オーナー、アルミさんとの関係も興味深かったです。
和田 そうですね、いい意味で経営者と芸術家の関係だったのでしょうか。もしくはバチバチの関係だったのかw
今田 マリメッコ創業者アルミさんの人生も「ファブリックの女王」として映画化されてますね。
ドーナッツ 本作は素晴らしい女性たちがたくさん登場しますね。会社を背負っていた、そしてマイヤさんを見出して信頼し続けたアルミさんも、かっこいい女性でした。手紙には、ちょっとバチバチだったのかなと思わせる描写もありますよね(笑)。心のままに創作するマイヤさん、「売れる」デザインを量産しなければならないアルミさん、意見を戦わせたことも多かったのではないでしょうか。
今田 アーティストではなく、デザイナーという技術者として求められる才能はまた別ですものね。映画の冒頭で「優れた芸術が商業デザインに息を吹き込む」というマイヤさんの言葉がありますが、今回の映画ではデザイナーという職業のみならず、画家(アーティスト)としても生きたかったマイヤさんを知ることができて良かったです。北欧の美術館にあるというマイヤさんの絵画作品の数々も見てみたいですね。
M アルミさんがマイヤさんに宛てた手紙で「今の私はとても孤独。仕事しかない人生に何が残るのかしら?」って心の内を明かしていたのが印象的でした。強い女性だけど、孤独や弱さも抱えていたんだろうなって。一方でマイヤさんは孤独や沈黙に心の安らぎを感じていたり……。
■この映画、どんな人におすすめ?和田 どのように暮らしを彩って生きるべきか、考えさせられました。最後に、どんな人におススメできる作品と言えるでしょうか?
今田 マイヤさんの作品が、一部アニメーションで見られるのが面白いです。ちょっと自分の人生やキャリアを見直したり、新しいことをやりたいなと考えてる人はマイヤさんから良い刺激をもらえると思います。また、恋愛で悩んでいる人は、マイヤさんのようにとりあえず転居してみると素敵な出会いがあるかもしれませんよ。
M マリメッコのファンはデザインが生まれた背景を知ることができるし、人生に行き詰まりを感じている人は「もっと自由に生きていいんだ!」って勇気をもらえるんじゃないかな。
ドーナッツ 私は劇中の「孤独というものを私は決して恐れない。むしろ私の望むものであり、心の安らぎさえ覚える」という言葉が印象的でした。孤独でいることは、自分と向き合うことだと教えてもらえた気がしました。音楽を聞きながら、マリメッコの図柄を作っていたのと対照的に、ご自身の創作は、静寂のなかでされていたようですね。いま、孤独や不安を抱えている人にこそ、見てほしいです。また、本作と合わせて、「ファブリックの女王」「TOVE トーベ」などを見れば、映画で同時代の北欧のアーティストたちについて学べますね。
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