「女は母親、主婦という立場から、生きることから何があっても逃げられない」波紋 未佐緒00さんの映画レビュー(感想・評価)
女は母親、主婦という立場から、生きることから何があっても逃げられない
一人息子は大きくなって手がかからなくなったけど、介護しなければいけない人間が一人いるだけでも主婦の生活というのは大変だと思います。
震災で生活の全てが変わってしまっても生活、生きることまで変わる訳ではない。
介護の為におかゆを作るとき水道水を使う依子の姿には、思わずわかるというか、少し共感してしまいます。
旦那が突然、いなくなって戻ってきて、癌治療の為に金を出してくれという頼みには思わず「何を言っているんだ」と普通の人間なら怒って追い出すと思うのですが、それを主人公はしない。
最終的には見捨てず治療費を出すのですが、人は悪にも善にも簡単になれけど見捨てられないのは元、夫だから、そりとも多少の愛情の欠片が残っているのかと考えると妙な気持ちになってしまいます。
生活から、夫という立場から逃げ出した男が生きることに執着する姿は人間なら仕方ないと思うのですが、それが依子にはできない。
夫だけでなく息子も逃げた、しかも戻ってきたと思ったら女を連れて。
普通でない、障害者なら殆どの母親は反対するのは当然だと思うけど多分、息子は分からないというか、理解しようとはしないだろうと思うのだ。
しかも妊娠までしている女は可愛い義理の娘ではなくて母親というたちばなら尚更だ。
宗教に縋って生きる依子の人生には、これでもかというくらい色々な出来事が降りかかってくるのですが、これって現実、自分の身にもあるよなと思うと観ていて複雑です。
旦那が死んで、息子は帰ってしまい一人になった家の中にはがらんとして何もなくなってしまった。
これが自由というなら生きるというのは良いこと悪いこと半々なんて嘘っぱちじゃないかと思ってしまうのです。
でも最期に踊る彼女の姿に、いや、まだ答えを出すのは早いのではと思ってしまうのです。