「【”パン、パパン!貴方のした事、無かった事にならないから!”筒井真理子さんの駄目夫を見る氷の如く冷たい眼が恐ろしいブラックシュールコメディ。新興宗教、障碍者差別など重いテーマテンコ盛り作品でもある。】」波紋 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”パン、パパン!貴方のした事、無かった事にならないから!”筒井真理子さんの駄目夫を見る氷の如く冷たい眼が恐ろしいブラックシュールコメディ。新興宗教、障碍者差別など重いテーマテンコ盛り作品でもある。】
ー いやあ、”荻上監督どうしちゃったの?”という位、今までと違う作風に吃驚し、筒井真理子さんの駄目夫を見る氷のように怖い目に、身がすくむ様な気分になった作品である。-
■須藤依子(筒井真理子)は、夫、修(三石研)の突然の失踪と、義父の介護のストレスからか新興宗教「緑命会」に傾倒し、漸く心身共に穏やかな生活を送っていた。
失踪から10年以上も経ったある日、修が戻り”癌になった”と言って同居を始める。
夫へのストレスがドンドン増して行く中で、一人息子拓哉(磯村勇斗:最近、この俳優さんを頻繁に映画で目にする。良い俳優さんだもんな。)が聴覚障碍者の彼女を連れて、就職先の九州から出張で帰宅する・・。
◆感想<怖かった所、面白かった所。>
・冒頭、須藤夫婦がベッドで頭の位置を逆にして寝ているシーン。そして夫の鼾が五月蠅くて依子が早朝ベッドを抜け出すシーン。
ー 妻の夫に対する苛苛あるある・・。(我が家ではない!)
1.鼾が五月蠅い
2.加齢臭が臭い
3.とにかく、存在自体が嫌!!
可哀想な、働きバチの夫たち・・。(涙)ー
・で、修はある日、庭の花壇に水をやっている時に、フラリと居なくなる。
ー 後年、拓哉が言った言葉”父さんは原発じゃなくって、母さんから逃げたんだよ!”-
・依子は夫が失踪した後に、新興宗教”緑命会“に傾倒していく。
ー 家中にある緑命水ボトル。どう見ても怪しい水晶玉。庭は枯山水である・・。
そしてキムラ緑子演じる”緑命会“の親玉の掛け声で信者たちは、不思議な踊りを踊るのである。
可笑しくてシュールなシーンである。信者役の平岩紙や江口のりこがグッドキャスティングである。-
・そんな中、修が戻って来て癌治療のために高額なお金を要求してくる。水晶玉に付いていた夫の指の跡。
ー 依子の苛苛MAX!マジで水晶玉で修の頭をカチ割るかと思ったよ。そして、修を”緑命会“に参加させた後、高額点滴のシーンは笑ったなあ。
ポトリと一滴落ちると”10まーん、20まーん”と数える依子の姿。
さらに修の歯ブラシで洗面所を掃除しちゃったり、修の洗濯物に消臭剤を掛けるシーンも怖いが、可笑しい。-
・”緑命会“のホームレスの人達への炊き出しシーンも可笑しい。
ー ムロツヨシ演じるホームレスがやって来て、修に”貴方、前世カマキリの雄ですよ。交尾中にメスに食われちゃう奴。”というシーン。クスクス。修と依子の関係マンマじゃん。-
・一人息子拓哉が聴覚障碍者の彼女を連れて帰宅するシーン。物凄く気まずい雰囲気の食事シーン。
ー で、息子に頼まれ彼女をスカイツリーに連れて行った時に依子が言った言葉。
”息子と別れて下さい。”だが返す刀で彼女がニッコリ笑って言った言葉。
”拓哉さんから言われてます。あの人頭オカシイから別れてくれって言われたら言ってくれって。”-
・何でも”半額にしてくれ”の高圧的オジサン(柄本明)や、息子を亡くしていたお掃除オバサン(木野花)の存在感あるアクセントも良い。
<漸く修が死に、簡素な葬式が済んだ後に焼き場にも行かずに、満面の笑顔で高笑いする依子の姿。(怖いよお・・。)
そして天気雨が降る中、喪服で真っ赤なパラソルをさして、枯山水の庭で、フラメンコを踊るのである。(更に怖いよお・・。)
今作は、主要な俳優さん達の演技が素晴しく、且つ今までの作風をガラリと変えた荻上直子監督のオリジナル脚本が冴えわたる恐ろしくも可笑しき作品である。
家人をもっと大切にしようと思わされた作品でもある・・。>
■補足
・上映中に笑い声を上げていたのは、ほぼ中高齢の女性だったと思う。
私は笑うどころか”大丈夫か?俺の歯ブラシ!大丈夫かオイラの家人(いつも優しいけれど、あれは見せかけか?)などと思いつつ、背中にヒヤッとした感覚を持ってしまった作品である。荻上監督、何か心境の変化があったのでしょうか?
中年男にとっては、ホラーに近い映画でした。
こんにちは!
今作、男性陣にしたらホラーですよね。でも依子さんはまだ優しいと思います。私ならきっと追い返しちゃいます。看病なんて絶対しない。私が鬼ですね。
歯ブラシは恐怖ですよね。ひょっとして私がダンナや子供達にやられてたら、、、と思うと恐ろしいので、流石に鬼の私でもやりません。
途中での軽快な手拍子が最後のフラメンコで納得でした。
怖いけど面白い映画でした。
コメントありがとうございます。
ワタシ、パートナーと一緒に観てきたのですが、彼女はずーっと笑い声を噛み殺し、いまだに「一滴の水〜♪」と歌っています。コワイコワイ・・・
年月を経てもふと思い出す、そんな作品になる気がします。