「フレームの上からは無防備でした」最後まで行く たあちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
フレームの上からは無防備でした
藤井道人大先生が大ヒット韓流ノワールサスペンスミステリーアクションをリメイクした今作はあまりにも前評判が高くて期待ハードルがMAXになりたまらず公開初日に観に行ってしまった。やあ参りました。
藤井道人も綾野剛もそして藤井組のスタッフも「これでいい」という妥協をしないそうで、これまで妥協が当たり前の現場で仕事してきた岡田准一は「諦めない、レベルが高い、希望の持てる現場」と評している。札束の山がいくつも築かれた密室での格闘でスタッフは全ての札を刷ったのだというし、ヒット作を作り続ける藤井監督はいまや黒澤明に近い存在かも知れない。そして黒澤の時代と違ってデジタル技術やCGはもとよりステディカムやドローン等の撮影技術が飛躍的に進歩した現在においてはこれまで予算的に諦めざるを得なかった映像表現が可能になったことが大きい。なによりあて書きだと言う綾野剛とのタッグが生み出した傑作であることは間違いなく、綾野剛にしかできない役を綾野剛にやらせてどうすんの!という感じ。
グッとくるシーンがいくつもあるが特に県警の上司の娘との結婚式前日に彼女がスピーチの練習するのを聞きながらクラシックのBGMに合わせてテーブルの下のスマホでチンピラ役の磯村勇斗とメッセージのやりとりをするくだり。クライマックスのタイマー式手製爆弾が爆発するまでの4分をリアルタイムで見せてハラハラさせる演出。そしてフレームの上からいきなり鉄の塊が落ちて来るシーンでは本当に驚いた時は心臓ではなく腹にドスンと来るのだということを知った。
観終わった後に何も残らないことも事実。しかしそれが娯楽映画なのだ。
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