劇場公開日 2023年5月19日

「不死身の二人」最後まで行く ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0不死身の二人

2023年5月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

難しい

韓国映画〔A Hard Day(2014年)〕のリメイクと聞く。

臨終間際の母親が入院する病院に急ぐ
刑事の『工藤(岡田准一)』。

飲酒運転に加え豪雨の中、
他のことに気を取られたスキに人を撥ねてしまう。

指定暴力団からの裏金の受領(それも組織ぐるみの)との
脛に瑕を持つ身でもあり、
あろうことか事件を隠蔽するため、
死体を車のトランクに押し込んでしまう。

そこからは次々と降りかかるトラブルの数々。
しかしその裏に、更に大きな組織の陰がチラつき出し、との
{クライムサスペンス}。

とめどなく堕ちて行く主人公の姿は、
自業自得とは言え、観ていて憐れみを感じるほど。

しかし、隠した死体の扱いの数々については、
失礼なハナシだが、途中で何度も笑いが込み上げる。

ぞんざいに加えて奇抜で、
なるほどこれはアイディアと、唸ってしまうほど。

一方で、『工藤』を追い詰める人物は早々にその姿を現してしまい、
謎解きの要素はかなり弱め。

その分、とりわけ組織内での人間関係を濃く描き、
いかにも日本らしいと思わせる練り込み。

手に汗握らせる疾走感は最後まで続くものの、
展開そのものは相当に強引。

韓国の刑事モノで典型的と思われる
(邦画でも、駄作では往々にしてある)警察の側が
相当に無能で捜査も杜撰な設定は一番に気になるところ。

転がり出す死体の行く末や、
とりわけ終盤での車が潰されるシーンでのご都合主義は
口をあんぐりとさせてしまうほど。

登場人物の殆どが直情的で、
怒りに任せ暴力に訴える姿勢は、
その後の結果をあまり見据えていないようにも取れ、
大きな犯罪に手を染める器に見えぬのも辛い。

ため、最初から最後まで冷静さを保つ
ヤクザの組長『仙葉(柄本明)』の姿が際立ち、
大きな筋書きを描く裏の人物の見当が却って付いてしまうことに繋がるのだが。

もっとも、あまり細かいことに目くじらを立てていては、
この手の物語りは楽しめないのは事実。

かなり現実から遊離はしているものの、
ギリギリ許容範囲としておこう。

『工藤』に目を光らす
県警の監察官『矢崎(綾野剛)』の存在が本作の他方のキモ。

追う側。追われる側の関係性が、中途からひょいっと変換するも
それ以降の展開はますます荒唐無稽となり、更には混沌の状態に。

強引な語り口は{韓国映画}らしい面目躍如も、
最後には何の為に諍いをしているのか判然としなくなり、
この二人の間に、捻じれた友情が生まれてしまったの違いない、との
考えを巡らせる。

ジュン一