「ミスチルの歌が誰かにとって形を変えながら届いていることの良さを感じる作品」Mr.Children「GIFT for you」 たいよーさん。さんの映画レビュー(感想・評価)
ミスチルの歌が誰かにとって形を変えながら届いていることの良さを感じる作品
初めて、自分のお金で買ったCDはREFLECTION{Drip}(と星野源)だった。それから数年…。いままで、生活の中にある様な音楽に留まっていた彼らの音楽は、この映画でようやく頂いたGIFTだったことに気付く。
ずっと聴いていたのに遠い距離にいたのには理由がある。長くなりそうなので簡単に言うと、音楽を日常的にしていった自分の生活に、いただあるものとなっていたのだ。ライブはそんなに多くない。安くない。ライブハウスで育った自分には、何処か他人事だった。そんな自分に転機が訪れる。ACIDMANによるフェス、"SAI2022"でMr.Childrenの音楽を初めて、それもアリーナの前から5列目辺り。どんな言葉でも形容できない歌声が、今、目の前から降り注ぐ。これがなければこの映画も観ていなかっただろう。
これは、30周年を迎えたMr.Childrenと、共に生きる人々と過ごした2022年のライブを追ったDocumentary Film。「終わりなき旅」から始まった半世紀へのエントランスは、日常の中にミスチルがいた人たちへの案内状とも取れる。時代を感じさせない名曲たちが、名もなき人の半生と重なりながら音を奏でる。その力の大きさを改めて感じると同時に、音が奪われた2年の痛みを改めて刺さる。一段と噛みしめるメンバーの表情が鮮明に映る。
その一方で、ライブにも終わり方があるように、クライマックスの作り方がある。その点、ドキュメンタリーとしてはダレてしまった印象もある。伝えたいことを再構築している以上、難しい部分があるとはいえ、沸点が分かりにくかった。
当たり前に鳴っていたはずの音楽が再び自分の人生に入り込んでくる。この感覚を求めてライブに通い、心を揺さぶられながら、明日の活力へと変えていく。初めてのミスチルでは「HANABI」で「もう一回 もう一回」と声を出すことが出来た。歓声を聞いた桜井和寿さんは嬉しそうに噛み締めていた。いつか笑顔が咲き誇る会場で声を出せる時、私もそこにいれる様に、今を生きる。