「違和感の正体」マイ・エレメント やまちょうさんの映画レビュー(感想・評価)
違和感の正体
火・水・土・風の四つのエレメント(元素:精霊みたいなもんかも)が暮らす、その名もエレメント・シティという架空の都市のお話です。街のルールとして「違うエレメントと関わらないこと」というのが前提にあるというのを予告編で知りました。
ただ、互いに反目し合ってる感じでもなく、どうも見た感じ火以外のエレメントはそれなりに共存している様なイメージです。
火以外のエレメントは皆、専用の公共交通機関(直通便?)から街への乗り入れあったりし、街の主要施設にほとんど火のエレメントが居ないことにまず最初の違和感を覚えます。
これは彼らが移民で、その持って生まれた危険な特性(触れたものを無造作に燃やしてしまう)から忌み嫌われて差別され、住む場所もスラムみたいな場所(ファイアタウン)に限定されている、というのがこの世界観の骨子になります。
冒頭、この奇異ながらも大変美しく精緻に積み上げられ異世界が拡がる様を拝見し正直心躍りました!さすがピクサーです。本当に芸術的で目の保養となりました。
そして火のエレメントである癇癪持ちで勝ち気なヒロインであるエンバーと、水のエレメントである感情豊かで優しいけど泣き癖が酷い(笑)ウェイド・・・全く属性と性格が真逆の二人の恋路が物語の中心となりますが、感情表現がストレートかつコミカルで個性的でもあり、彼らの絡みは飽きることなく見守ることが出来ました。
まあ、言ったら「ガールミーツボーイもの?」なんですけど若い時分の純愛が色彩鮮やかに表現されていて、接触シーンなんかはちょっと感極まり、ウルっとしてしまいました。
ただ、映画冒頭より示された火のエレメント=移民が差別されていて格差が生じているなど「現実社会の諸問題」は本当に上っ面だけしか捉えられてなく解決策も示されておらず、これだったら無理に設定に取り入れなくても良かったのではないか、いっそ恋愛描写に特化すべだったのではないか、と考えます。
監督が移民の子と自負している割に、結果、被害者意識しか生まれなかったの?・・・と、疑問視したくもなります。その社会は嫌々でもあなたがた移民を受け入れてくれ、それどころかチャンスを与えてくれた恩義はあるでしょうに。
また、ストーリー上、小売店経営やその客なんかを下に見てる表現が多々あったり、クリエイティブな仕事が報酬も高く、とんでもないコネで人生の進路が決まる「特権階級?の利益の寡占」を堂々示したりと・・・民族差別を否定しながら、無意識に職業、階級差別を肯定してしまうのは、監督の成功した人生に沿う内容であったにせよ、やっぱり悪い意味でアメリカ的価値観に基づいてるからでしょうか。
上記が私のストーリー上の違和感の正体ですが、そう感じたのは私が日本的な価値観を有し、実家が小売店(私が継がなかったから廃業)というエンバーみたいな立場だったからかもしれません。エンバーに家業を否定するセリフは心で思っていても、言葉で言わせちゃダメだと思ったのです。
それらを抜きにしたら満点あげたいくらい美しい恋愛映画です。ぜひ、ご鑑賞ください。
追伸:小さな子供向けじゃないが、子連れさん沢山いらっしゃってました。お子さんら皆後半もじもじしてましたが、未就学生は特に途中で飽きてしまうのは仕方ないかもなあ。