「文化の違い、イデオロギーの違いなんて 乗り越えろ」マイ・エレメント asukari-yさんの映画レビュー(感想・評価)
文化の違い、イデオロギーの違いなんて 乗り越えろ
またもやピクサーはやってくれた。
いや、ピクサーでないとこんな発想は思いつかない。その唯一無二である発想力こそピクサーが世界最高のアニメーションスタジオであることを証明していると、個人的には思っている。そして本作は、それを改めて十分に感じさせる作品であると私は思う。
あらすじとしては、“元素”がキャラクターである世界。そこには“水”“風”“土”などといった種族が一緒にエレメントシティという街に住んでいた。しかし“火”だけは、その燃やしてしまう性質からほかの元素により避けられていた。しかし、火の種族であるエンバーと水の種族であるウェイドが出会い、種族間の垣根を越えていく、てな感じです。
まず観て惚れたのが冒頭の水の描写。CGといっても小さな波が美しく波打っているシーンで「これはヤバい」と思いました。次にキャラクターの細かい描写。風や水は3Dぽく、土は人形ぽく、火は2Dぽく描かれていて、どれも的を射た感じに絵的な美しさを感じたんですな。それに元素の特徴を表すシーンがいくつも存在し、そのシーンを見るごとにキャラクターの良さを思い、細かい部分にまでこだわるピクサーの良さを思うわけです。
しかし、それ以上に、いや最高の部分は“火”と“水”が交わるストーリーであると思う。まず思いつくだろうか、火と水が交わることを。普通に考えれば交わることはない。火が消えるか、水が蒸発するか。それを人間社会の中でも起こる、ごく普通の恋愛映画に置き換えている。
そんな発想、思いもしなかった。
しかし、もう少し考えて見る。なぜキャラクターを元素にしたのか。なぜ火と水を持ってきたのか。自分が思うに、
文化の違いやイデオロギーの違いによる争いに対する反論ではないか?
文化とは、その地域の人が長年培って出来たモノであり、そこからその地域の常識が生まれる。しかし違う文化を培ってきた人はその常識がわからず、忌み嫌ってしまうだろう。そらそうだ、相手からすれば非常識なことに反発するのは当然。この文化、イデオロギーの違いが争いを生んできた。しかしピクサーは提示する。
「真正面からぶつかって、合わなくったって投げ出さず、膝を突き合わせてこそ、融合(受け入れ)ができるのではないか」
それが、争いをなくし、融和に至る。それを、本音を突き合わせる恋愛に置き換えて問うている。自分はそう思った。人間ではなく元素に置き換え、アニメにして観やすいようにして、そうつたえているのではなかろうか。
そう思った時、ピクサーの偉大さを改めて感じたんです。正直ストーリーの展開で二番煎じ感が否めないシーンが所々あり、その分真新しさが欠けてしまった部分はちと物足りなさを感じる部分はあれど、全体を見た時に、
なんと美しい映画か・・・!
そう思ったのは事実です。そして映画館を出た後から来る余韻、いや満足感・・・久々に良質な満足感を得ました。
改めて言います。ピクサーはやってくれた。