「謎解きとはまた異なる爽快感」ミステリと言う勿れ Uさんさんの映画レビュー(感想・評価)
謎解きとはまた異なる爽快感
原作・TVドラマは知りません。単純な遺産相続の命の取り合いが進んでいると見せて、実は「家」の始まりにまつわる伝奇的なホラーが潜んでいたと言う話。
そして、一見整君が自分中心キャラに見えたが、とんでもない。観察力や思考力が豊富で、人や世界を深く思うあまり、自分をすぐに失いかけるような青年が、己を取り戻そうと少し意固地になっていただけ。
◉鬼の内部粛清
ある時、悪心から生まれた「鬼」たちは、代を重ねるうちに悪の濃度を高めていった。そして遂に、鬼が成した家系を護ることこそ正義であると言う狂信に変わっていく。
ただ、天然パーマと色白だけで、世間がその者を鬼の末裔と思うのでないかと言う怯えには、無理があったかなと思います。どこかの時点で例えば、娘の血族が狩集の家は鬼だと、世間にリークしたとかのエピソードなどが挿入されていたら、鬼の必死さが現実味を持ったと思います。
◉鬼に叛旗を翻す
プロローグで提示された日本人形、有田焼、座敷牢、日本刀が絡む蔵の謎解きは、狩集家を継ぐ者を決めると共に、娘の血筋を鬼がつき止めるためのものだった。汐路の親が殺された時点では、暗殺者は娘の血筋の手がかりは持っておらず、その後に娘の末裔が生きていることを知った…と言う理解でよいのでしょうね。汐路たちの親4人は娘の血筋にたどり着いていたのであり、つまり親たちは家の真実を知って、初めて背いたジェネレーションだったことになります。
狩集家の真実を知った汐路の父親たちの驚愕や落胆は、明瞭には描かれなかったけれども…
◉謎解きの後の光
そして汐路たち4人は、そうした重苦しくのしかかる恐怖や怯えに支配された「家」に負けることなく、新たな死者を出すこともなく、新しい出発点に立った。
エンディングには不思議な爽快感が漂った。その訳は、最初本当に殺し合うと思われながら、次第に気持ちを通い合わせていった4人兄弟もさることながら、ひとえに久能整君が呟く、目の前の人に寄り添う言葉にあった。
幸せは男によったり女によったりするのではなく一人一人の個性によるんですとか、傷ついて体力や気力が衰えたら退場せずにその場所で休んでいたら良いとか、ある出来事の結末を独りで背負う必要などないとか、ボソボソと棒読み気味に湧いてくる久能君のセリフが、柔らかく心に沁みて仕方なかった。それでいて、しっかり謎には迫っていて、優しいだけの青年ではなかった。
ミステリーより人の人生の方が、得体が知れないけれども、少しずつでも解いていきましょうと言う物語。
今作は、菅田将暉君の大当たり役ですね。
松坂慶子が何かしでかすはずと言う期待は、ハズレでした。
共感そしてコメントありがとうございます。
菅田将暉の当たり役。
菅田さんがアクションしたりドンパチなんかしないですものね。
頭脳明晰に謎解きしてそして事件で傷つく人を優しく癒す。
映画はスケールを大きくした分、よく考えるとUさんが、
書かれてるように色白と天パーが鬼の印・・・って
リアリティがなかったですね。
でもそんなこと忘れて見入ってました。
整くんの目の前の人に寄り添う言葉の魅力に共感です。
その独特の視点が、ものごとの真理をつきつつ、柔らかく伝える。
すべてに意味があることを教える。
演ずる菅田さんの澄んだまなざしは整くんが憑依していますね。
Uさん、共感&コメントありがとうございます。
おっしゃる通り、本作の魅力の大半は、整くん自身の魅力だと思います。そして、彼の言葉によって周囲の人たちが、ちょっと肩の力を抜いたり、歩みを緩めたり、気持ちが楽になったりする。その姿を見て、私たちもほっこりする。そんな温かさが、この作品にはあると思います。ぜひテレビドラマの第2期を作ってほしいです。