劇場公開日 2023年9月15日

「心整う金言集」ミステリと言う勿れ 赤ヒゲさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5心整う金言集

2023年9月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

原作もTVドラマも大ファンという妻と一緒に観に行きました。直前まで妻が大ファンだったことを知らず(汗;)、何か話そうとする妻に「何も言わないで!」とお願いしつつ、無事に事前情報ゼロで観賞できました(笑)。狩集家の怪しい相続会議あたりからぐいぐい引き込まれました。妙な話なのに、段田安則さんが言うと説得力があるし、「お前は誰だ?」みたいに言われた久能整(菅田将暉)のとぼけたリアクションにクスッと笑えて、松山監督の緩急ある演出がとても気持ちよかったです。ミステリじゃないとしながらとてもミステリアスな物語、縦横無尽に張り巡らされた伏線回収の爽快感など魅力満載の作品でしたが、それらを土台に散りばめられた久能整の金言集が心に刺さりますね。セメントの例えもそうですが、「半分こして大きい方をくれる人が優しいとは限らないです。」とか、ここぞという場面で的を射た言葉がピシッとはまるので、スカッとしました。原作者(田村由美)が伝えたいことが凝縮されているような台詞を菅田将暉が淡々と話すのが、とても印象に残りました。常に無表情、話す熱量も低く大袈裟なところがまるでない。なのに、心に染みてくる。甘言、暴言、詭弁…、本当のような嘘が洪水のように溢れている情報化社会にあって、なんだかしっくりこないモヤモヤした苦悩を整えてくれる言葉の数々、これが今作の人気の秘密だったと知り、観賞後は、封印していた妻と延々話し合いました(笑)。

赤ヒゲ