「菅田将暉だからこその作品」ミステリと言う勿れ bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
菅田将暉だからこその作品
テレビの連続ドラマで初めて知った作品だったが、整君の探偵キャラがなかなかユニークで、毎回楽しみに観ていたドラマの映画化。公開も楽しみにしていたし、舞台となった広島・宮島には、8月旅行したばかりだったので、その旅の思い入れも重なって鑑賞。
菅田将暉演じる潔癖で、理屈っぽい大学生探偵・久藤整が、人々の何気ない動きや言葉を、きめ細かな観察眼によって、推理を積み上げていくのが本作の魅力。そこに、今回は旧家の狩集家に受け継がれる遺産相続に関わる親族争い柱となっていく。そこに鬼伝説の話も絡めることで、整君も劇中で狩集家を「犬神家の一族」というセリフがあった様に、この後の展開で横溝文学の様な、血縁関係の醜い遺産争いがおこるものとばかり思っていた。
しかしながら、そこがこの作品らしい所なのだろうが、期待していた血生臭く、おどろおどろしい展開ではなく、軽いミステリーとして、人情味あふれたエンディングへと繋がっていった。しかも、鬼伝説に纏わるミステリーが、鬼のイメージとは真逆な、臆病でネガティブな真相にも、横溝ミステリーを想起させる序盤だっただけに、個人的には消化不良だった。
物語は、広島での美術展見物を終えた整の前に、突然、犬童我路の知り合いだという少女・狩集汐路が現れるシーンから始まる。そして彼女から、狩集家の莫大な遺産相続に関しての探偵依頼を受け、狩集家を訪れる。そこで、当主の遺言状が読み上げられ、遺産相続権のある4人の孫に、敷地内にある4つの蔵に隠された謎を解く難題が課せられる。実は、狩集家の遺産相続に関しては、これまでにも死者も出るという忌まわしい過去が隠されていた。
そこから、整君自身も、遺産相続争いの渦中に巻き込まれていくのだが、屁理屈を並べながらも推理が冴えわたり、意外な真実へと導いていくあたりは、整君を演じる菅田将暉のアカデミー俳優としての演技に魅了される。
但し、今回は自分にも、最初にある人物が登場したシーンの台詞に、「?」と違和感を感じ、犯人が分かってしまったのは、脚本ミスではないだろうか…。題名通り『ミステリーと言う勿れ』の内容で、正月の特番ドラマでも良かったかな。