「いよいよ最終章も終盤へ」ガールズ&パンツァー 最終章 第4話 緋里阿 純さんの映画レビュー(感想・評価)
いよいよ最終章も終盤へ
①試合開始早々、あんこうチームが撃破されるという衝撃のラストで幕を閉じた前作から2年半、ようやく大洗vs.継続戦の決着を見届ける事が出来た!
主人公チームが真っ先に撃破された事により、残されたチームメイトがそれぞれの知恵を絞って戦わなければならず、結果として西住みほら主人公勢の台詞が過去一で少ないというかなり異色の第4話となった。
しかし、その分これまで脇役であった大洗女子の面々の活躍が存分に描かれている。
西住みほ→角谷杏(会長)→澤梓と、戦況の変化に応じて即座に臨時隊長を立て、対処していくチームとしての連帯感、最終的な試合運びを任された梓の活躍が新鮮。
また、後輩の梓にしっかりと西住みほがTVシリーズで見つけた戦車道が受け継がれているのが感慨深い。こういった感動は、流石10年の積み重ねがあってこそだろう。
②思えば、西住みほらあんこうチームの物語(成長)は、TVシリーズで十分に完了している。だからこそ、個人的には劇場版はあくまでファンサービスの番外編、あるいはオールスター集結による集大成のような印象を抱いていた。
最終章に至っては、河嶋桃(桃ちゃん)の大学進学をサポートするという意味で無限軌道杯への参加を決意したが、廃校という絶体絶命の危機を脱した後では、些か動機として弱い印象は否めなかった。だからこそ、最終章では途中敗退からの敗者復活戦等の思わぬ流れも想像していたし、極端な話、大学へのアピールポイントを桃ちゃんに持たせられれば良いのだから、優勝する必然性すらないと思っていた。それが、結果的に先の読めない展開を後押しするスパイスにもなってはいるのだが…(今回の継続戦もそう)。
だからこそ、最終章で何を描きたいのかが、これまではイマイチハッキリしない印象があった。2回戦の相手である知波単学園が“突撃”頼りの一本槍ではなく、撤退や緻密な作戦を練るという「成長」、新しい戦車道を発見するという点から、大洗女子と関わった事で、他校がそれぞれ独自の戦車道を見つけていく様子がメインになるかとも思った。
しかし、今作でようやく「継承」が最終章のテーマとしてハッキリと出てきたように思う。勿論、そこには「成長」もある。
大洗女子のウサギさんチームの活躍は勿論、同じく準決勝である聖グロリアーナvs.黒森峰戦にもその様子が顕著だった。
聖グロリアーナでは、次期隊長のオレンジペコに経験を積ませる為にと、ダージリンは試合運びに口出しはせず、あのダー様がまさかの格言タイムすらないという徹底した一歩下がるぶり(笑)
対する黒森峰は、逸見エリカ率いる新生黒森峰の“泥臭くとも勝利に貪欲に、だからこそ仲間を第一に臨機応変に”という姿勢が、どこか大洗女子を彷彿とさせつつも、エリカの戦車道がしっかりと確立された印象。個人的に、キャラクターの成長としては、彼女の姿が今作で1番印象的だった。
伝統ある黒森峰の重圧に戸惑いながらも、前回で自分なりのやり方を掴んだエリカは、今作ではチームメイトと積極的に意思疎通を交わし、砂嵐というその場ならではのチャンスを物にしと、かつての憎まれ口を叩く姿からは想像もつかない姿だ。
また、かつてみほに助けられた小梅が、イキイキと戦車道を続けている様子も嬉しい。
そんな成長を十分に見せたからこそ、彼女らの無限軌道杯は、ここで幕を閉じたのだろう。
③戦車アクションとしては、大洗vs.継続戦の雪山の斜面を下るシーンが今作の白眉だろう。目まぐるしく視点が変わる様子や、下るというよりほぼ落ちているといってもいい戦車の数々が、徐々に斜面の操縦に慣れていきながら砲撃戦を繰り広げる様子は、先述した「どちらが勝つか分からない」点も含めて、非常にスリリングで楽しく、手に汗握る。
シレッとソリを装備しているミカ達のBT-42にもクスリとさせられる。
何より「まだこんな引き出しがあるのか…!」と、ガルパンならではの自由奔放な戦車アクションを体験出来るのが素晴らしい。
そんな白熱した試合の最終的な決着が“筋肉”というのも、ガルパンらしくて微笑ましい。
④サプライズとしては、「もう一度、西住みほと戦いたい」と口にしていた島田愛里寿の聖グロリアーナ転入だろう。
決勝戦の相手が、大洗女子にとって天敵とも言える聖グロリアーナなのに加えて、愛里寿というこれまた因縁のある相手と再び対峙するというのは、クライマックスを盛り上げるのに申し分ない。
大洗女子の聖グロリアーナとの戦歴は、0勝2敗。とはいえ、そのどちらもが練習試合や他校と合同のエキシビジョンマッチという特殊な条件下で、公式の試合としての対戦は初めて。
個人的には、ここまで来たら、最後は天敵たる聖グロリアーナを倒して大洗女子に優勝してもらいたいし、それによる桃ちゃんの大学進学も決定しての大団円を期待したい。
その為には、そろそろ桃ちゃんにもプレイヤーとして覚醒してもらいたいが(笑)あるいは、今回の継続戦がそのトリガーになるかとも思ったのだが。
⑤次回は、また2年〜2年半後だろう。今年はガルパン10周年だが、恐らく、完結を迎える頃には15周年を迎えているのだろうなと思うと、また気長に待ちたいと思う(笑)
それでは。パンツァー・フォー!
※入場者特典の色紙は、エリカ&ダージリン。