「【”祖国の夜明けの為に・・。”苛烈なる状況下、日本の傀儡国家”満州国”に旧ソ連から潜入し旧日本陸軍の悪行を暴こうとする中国人男女4人のスパイと満州国特殊警察との闘いをスリリングに描いた作品。】」崖上のスパイ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”祖国の夜明けの為に・・。”苛烈なる状況下、日本の傀儡国家”満州国”に旧ソ連から潜入し旧日本陸軍の悪行を暴こうとする中国人男女4人のスパイと満州国特殊警察との闘いをスリリングに描いた作品。】
ー 今作では、日本軍は”敢えて“描かれないが、旧日本軍が中国人を秘密裏に処刑していた秘密施設からたった一人逃げ出した男を救出し、旧日本軍の悪行を全世界に知らせるために、密かに旧ソ連で訓練を受けた男女4人のスパイが豪雪地帯に落下傘で舞い降りる処から物語は始まる。
その作戦名は”ウートラ計画”
劇中でも屡々触れられるが、”夜明け”と言う意味のロシア語だそうである。
そして、その直後に満州国特殊警察の、同胞である筈の中国人への苛烈な処刑シーンが描かれる。ー
◆感想
・日本人としては、”中国共産党が正義の名のもと、旧日本軍の悪行を世界に知らしめる。”という設定はやや心中複雑であるが、事実であるのだから仕方がないと割り切り、”チャン・イーモウ監督のスパイ・サスペンス・映画を愉しもう”。”と気持ちを切り替え鑑賞。
・冒頭の落下傘シーンから、中国人男女4人のスパイが二班に分かれて、列車を使って、ハルピンに向かう途中での列車内での満州特殊警察との攻防など、ハラハラしながらも面白く鑑賞続行。
ー トイレの中に書かれた暗号や、アクション。切符すり替え・・。-
・スパイチームは張と王の夫婦と、小蘭と楚良との恋人の4人であるが、特に張と王は祖国の為に、幼き子供達を残して、旧ソ連で訓練を受けていた事が徐々に分かって来ると
”そこまでして、祖国を復権させようと思ったのか。”
と言う想いや、張が物乞いをしている長男の所に命懸けで言った時に”名前はない。”と言われた時の、張の哀しみの表情には何とも言えない感情に包まれる。
・一方、特殊警察の中に潜入している中国共産党の周と、特殊警察を仕切る高科長との緊迫感溢れる遣り取り、騙し合いのシーンなども魅入られる。
■強いて、残念だった点を記せば、日本の秘密施設からたった一人生還した男の登場シーンがワンシーンであったことかなあ・・。あの男とスパイ達との交流シーンは入れて欲しかったかな・・。
<当時を再現した雪中のハルピン街での、レトロな車を多数使用したカーアクションや、中国人男女4人のスパイと、満州国特殊警察との騙し合いのシーンなども面白く鑑賞した作品。
ラスト、雪降る中、総ての事を終えた王の元に、幼き息子と娘が駆け寄るも躊躇する中、王が二人を抱きしめるシーンは、沁みたなあ・・。
今作は旧満州国を舞台にしたハラハラドキドキのスパイ・サスペンス映画である。
チャン・イーモウ監督、作品制作の幅が広いなあ・・。>