怪物のレビュー・感想・評価
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圧倒的没入感と、二つの断絶。
前半部は雑感。
出だしの安藤サクラがまずいい。ネガティブを抱えながらポジティブを装うが、いつも気持ちは臨界点寸前のシングルマザー。
そして永山瑛太もまたいい。安藤サクラパートでの不気味なテイストと打って変わり、なんやワレ好青年やないかい。怪物は人間だった。
この二人の演技力、静謐な映像美と音楽によってこの映画の基礎は出来ているんだと思った。伏線が多く、時間軸があっちこっちに行きがちな映画なのに、集中力を途切らせずに入り込んで見る事ができました。
演者の力量だなぁと思うのは、実質的にみんな「怪物役」と「人間役」の二役出演をしてる感じですよね。無表情だった田中裕子の最後の温かい表情だったりもよかった。
で後半部、核になる部分であるところの「子供の世界」に入っていく訳ですが。
いじめってすごい即席にも関わらず、とても強靭な組織構造ですよね。いろんな感情が未文化で錯綜するであろう子供でさえも規律正しく従ってしまう「オマエこいつと仲良いの?仲良いんならハブるよ?」の同調圧力。見たいものを見、感じたいものを感じる事が許されない世界。この映画の中で「大人の組織構造」として描かれた先生たちの社会に対し、「子供の組織構造」として描かれるのがいじめの構造。
ただ一点違うのは、自分たちなりの「ふざけんな!あんたたち人間じゃねぇ!」を怪物である他者に突きつけた大人の二人に対して、子供たちはそこまでの「生きしぶとさ」を持っておらず、怪物を自分自身と定義してしまいます。上手くやれない僕ら。生まれつきの欠落がある僕ら。他と比べて劣っている僕ら。
どんなに不幸があっても、辛くても、解釈の違いで他者を不幸に貶めても、貶められても、私たちは生きていかなければなりません。時にはふざけるなと誰かを罵倒したり、枕を涙に濡らしても。それが、「アナタが大人になるまでは頑張るよ」と誓った早織の言葉。大人にとって生きるというのは、そういうことなんだと思います。
しかし、子供は違います。簡単に(とあえて言いますが)自分の生まれを呪い、世界の全てに絶望する事が出来てしまう生き物です。その絶望は、繊細な保利先生には最後にようやく片鱗が伝わったように思えますが、生きしぶとい早織には最後まで伝わっていなかったように見えます。
「怪物」を描くにあたり、早織や保利先生それぞれの怪物との理解の断絶を描いていたこの作品ですが、実は最も深い断絶が、大人と子供の間にあったように思えるのです。
世の不幸とどこかで折り合いをつけなんとか生き抜いていく大人。自分たちの世界で良いも悪いも増幅させ、無限に進んでいってしまう子供。彼らを理解する事ができる大人は、一人もいなかった。(最後の校長が一番寄り添っていたかも知れません)結果、彼らは不幸に進んでいった。その痛切な読後感が本当に痛く、観劇後しばらくボーッとしてしまいました。
総じて、腹の中にゴロンと重い石を投げ込まれたような映画だったと思います。もちろん良い意味で。いい映画でしたね。
それはスタンド・バイ・ミーと同じ感情が湧く。
ラストの廃橋。柵が無かったように見えた。ということは二人は天国に行ったんかなぁ。是枝監督はそう見えるかもという演出してた様な気がします。
二人にはどちらも幸せになってほしいよ。でも天国行っちゃったんかな?
そう思わせる。
小学校の頃の友人を思い出しました。
それがこの映画の成功だと思いました。とても良かった。
誰人の中にも怪物はいる
映画『怪物』カンヌでパムドゥールでもよかったよね
全部の参加作品見たわけではないけど、少年期の細やかな心の動きや切なさが痛いほど伝わ
ってくる。だから題名も含めて直球勝負でも良かったよね、複雑な時代背景を盛り込んだあ
たりがしょうがないのかな。
オーソドックスなテーマなんだけど
見せ方と今風なLGBTという表現。
まあ、惹きつけるキャッチコピーは必要なんで。
それも今風ということになるのでしょうか。
少年同士の純愛。
言葉にするとなんか下世話な感じもしなくないのですが。
主人公の少年は、小学校五年生。
このあたりは、同性愛は普通でしょう。
同性愛なんて大げさな言葉使わなくても、ただ同性に惹かれるということで。
洋の東西を問わず、この時期の少年の性的志向の作品は多々あり。
別に目新しくはないのですが。
それをLGBTやいじめの問題とからめたところが、心憎い。
性的志向や性自認はまださき
異性に関心が向くのは、この先だと思うのですが。
だから、主人公の少年が、別に同性愛と決めつけることもなく。
このあと、性的志向が、異性にむくことだって十分考えられることだと。
ただ、この年齢でも自分の性に違和感をおぼえるとなるとそれは別の問題かな。
性同一性障害は、判定も難しいし。
だから、主人公とその友達が惹かれ合うのもごくあることだと。
それを同性愛とさわぎたてるには、年齢的に早すぎると。
ただ、学校という現場では。
また子どもたち同士では、どうなっているんでしょうね。
情報過多な時代ですから。
純文学的にこの時期の少年を描いた
爽やかなラスト。
みずみずしい少年の演技や心の動き。
秀逸な作品だと思います。
映画『スタンド・バイ・ミー』や『少年時代』に匹敵するかな。
ただ、多少カーブをかけた題名やキャッチコピーは、しょうがないかな。
直球勝負でもいいような気がするけど。
一人でスタオベする人と中盤で帰る人がいる映画
あの是枝監督と坂元さんの脚本
このコンビだけで大きな賞を取るのだろうと期待大で鑑賞。
視点は相変わらず面白いし、上手く誘導もされた。
しかし、テーマが広すぎて全体的に薄く感じたのと、学校のシーンは多かれ少なかれ近い状態はあるものの、とはいえ恣意的な部分を感じて、違和感が強かったし、映画とはいえ先生方に失礼にも感じた。
それだけ真実ぽく作っているからこそなので、逆説的には素晴らしい出来なのだが。
仕事として近い存在だからこそ、校長や周囲の教師の反応は許せない。
角ちゃんの言葉だけでは納得はいかない。
しかし
途中で帰る人が3名もいたのはビックリした。
満席だったからこそインパクトがあった。
体調でも悪かったのだろうか?
スタンディングオベーションした人がいたが、誰もついてこなかった。
中々日本だと試写会でもないと難しい。
あの人にはこの作品は心に響いたのだろう。
安藤さん、永山さん、田中さんの演技は素晴らしい。
一見すると怪物感は出ていた。
獅童さんもいい味出していた。
音に惹きつけられる魅力的な認識論的作品。
内容、舞台はとある田舎町夜一件の火事🔥の音から物語が始まる。田舎町の小学校に通う少年二人。麦野湊と星川依里を中心に取り巻く人々の三章構成によるサスペンス👥群像劇。印象的な台詞は田中裕子が扮する校長が言う『皆んなが幸せになれる事が幸せって言うんだよ。声に出さない事は楽器に🎷乗せて言うんだ。』この言葉が自身の嘘から自縄自縛になる各々の心情のカタルシスの解放と希望に繋がり非常に印象に残りました。この時の楽器の音🎷が悲鳴にも叫びにも聞こえ心象に訴える良い演出だと感じました。その楽器の音で自殺を思いとどまる保利先生も良かったですし、校長と湊くんの二人も素晴らしい。たまたま学校で聞こえ他、湊の母早織には響かない所など台詞と言うより音が非常に印象深い作品でした。印象的な場面では、年代毎に関わる問題が表に出されて見る人の年齢層を広げてるように感じました。でも来ている人の平均年齢は60歳ぐらいと高めだったのには驚きました。印象的な場面では、最後付近で二人が大雨の秘密基地廃電車内で地鳴りがした時の音が『出発の時間が来たのかな?!』と話す場面。二人の不安な喜びに満ちた表情が非常に心を揺さぶられました。映画を通して終始、音で繋ぐ場面展開には油断ならない緊張感を感じました。火事🔥で始まる時の虫笛(仲間を呼ぶ)の音や吹奏楽器の音や豪雨の音や地鳴りの音。非常に巧みで上手い。最後の『生まれ変わったんだろ?』と言う場面では『生まれ変わってないよ(お互いの性質)』との言葉には感涙ものです。人は自分が見たいものしか見えない。そんなメッセージが産み出す各々の怪物は、この映画の美しい風景を走る二人のラストが、観客に問いを投げ掛けている様に感じます。それはこの作品が監督と脚本家のマリアージュが見事に紡がれたからだと感じます。個人的には、湊くんに恋心を寄せる隣の席の女の子は人知れずボーイズラブ漫画を読んでるのには驚きました。腐女子なのに乙女かよっ!って微妙な心情の機微のやり取りが物語的にはどうでもいいですが好きです。東京03の先輩先生役も校長先生の旦那役も非常に良かった。そんな緻密な人物描写が面白い脚本の要因です。そして銀河鉄道の夜の様な美しい場面も見ものです。過去色々似た様な手法が取られている構成ですが、綿密な構成には驚きます。『羅生門』『カメラを止めるな』など他多数を見ても見劣りしない魅力的な作品です。
見終わった後、いろいろ考えた。
誰が怪物か
同じ時系列を3回、別々の視点で繰り返しますが、「最後の決闘裁判」と重なりました。
違う点は、「怪物」は視点が変わるたびに見える部分が変わり徐々に真実が明らかになっていくものだが、「最後の決闘裁判は」視点が変わると見える部分が変わるのと同時に同じ事実でも解釈も変わるということ。
怪物もなかなか良かった。
序盤はかなりドキドキさせられました。
特に、進路相談室に母親が入るとみなとがいなくて、戸が開いているシーン。
上から落ちてくるんじゃないかと思いました。
誰が怪物なのか?と考えながら見てましたが、みんな怪物ということですね。
「怪物だ〜れだ?!」
まさに観た後の感想そのものです。
上中下編に分かれる展開の上編、母親(安藤サクラさん)目線の流れは謎ばかりで、中編 ホリ先生(瑛太さん)目線では謎解きであり上編で思ったよりもキチンとした先生なんだと思い直させてくれてホッとしました。母親目線では『友罪』の瑛太さんを彷彿とさせる不気味さでしたが、恋人(高畑充希さん)とのやりとりや謝罪中に飴をなめるあたりはやはり??の感覚が残ります。
下編は観る人それぞれが考えてください!的な突き放し方(?)で最後まで目が離せない作品でした。
それにしてもやはり安藤サクラさん田中裕子さん恐ろしい役者さんたちですね。でもこの2人に勝るとも劣らぬ主人公の子供たち2人の素晴らしい演技に感動です。十数年前『誰も知らない』の時、やはり是枝監督がカンヌ映画祭で発掘した柳楽優弥さんみたいですね。
色々な命題を扱った作品で鑑賞しがいがありますが野党が言い換えた『ジェンダーアイデンティティ』でしたっけ?難しい題材ですね!面白かったですし、考えさせられます。
追伸
途中そしてエンディングの坂本龍一さんの音楽は見事にこの作品として融合してこれも感動しました。ご冥福をお祈りいたします。
怪物だーれだ
是枝監督の作品は最後ハッキリしないものが多く、見るものに委ねられている気がしていたので、そうか、そうだよね。のラストでした。
万引き家族は見始めて、割とすぐ寝てしまって見終わってないので、心配していたけど、終わりまで長すぎる感はなかったし、グイグイと見入ってしまった。
保利先生、かわいそうじゃないですか?濡れ衣。
日本の学校がこんな風だと、海外の人に思われたらやだなぁ。
さすがです。
この手の語り口の映画、最近多い。
複数の視点から見ることにより真実が見えてくるのと同時に、真実が見えなくなってくる。本作はそれをうまく利用して、怪物とは何だったのか?誰だったのか?怪物なんて居なかったんじゃないのか?
誰もが怪物だったのではないか?
、、、と問いかけてきます。
同じ話を何度も見ることになるので下手すると「またかよ、、」と思うのだが本作はテンポもよく上手く変化を付けていて自然に見れた。適度に目線を切り替えて整理し過ぎなかったのが良かったし、それは結末の解釈の幅にもなり読後感が良かった。
脚本、編集、監督、そして役者達の素晴らしさ。
受賞も当然だと思う。
エンドロールで坂本龍一の名前が出た瞬間、グッと来た。
ありがとうございます、そしておめでとう御座います。
みんな怪物
タイトルや予告から怪物当てサスペンス映画かと思ってましたが、内容は想像と違ってました(笑)
それでも期待以上に面白かったです。
安藤サクラは相変わらずの名演技でした。小学生2人も可愛いし、演技も自然だしで引き込まれてしまいました。
ある視点から見たら「怪物」に見えてた人が、別の視点から見ると良い人だったりする。
自分の視点からは、その人の一部分しか見えていない。
同性愛を自覚するシーンはすごくリアルでした。
好きなことを認めたくなくて離れようとしたりとかケンカしたりとか。
何気ない一言で「幸せになれない」と感じたりとか。
あの2人には幸せになってもらいたいなぁ。
自分の中にも「怪物」がいることを自覚して、コントロールして生きていかないといけないと感じました。
面白いけど理解難易度は高め
おすすめできる人
いつもの是枝監督の作品が好きな方には自信を持っておすすめ出来ます!
今作はある出来事を色々な視点から描いていくものとなっているので鑑賞中に先の展開を予想したり、終わった後で話を振り返って考察する方向けです
この映画について一緒に見た人と意見交換するのも面白いと思いますよ!
おすすめできない人
最後には全部分かってすっきりしないとダメな人にはおすすめできません
「怪物だーれだ」のキャッチフレーズの通り様々な怪物候補の人物が出てくるのですが、それを表すため怪物的な人間性を多様に描写しているところを難解に感じてしまうかもしれません
難しくて見終わってもモヤモヤする映画、雰囲気が暗い映画よりも爽快感のあるアクションが好き!という人には微妙です
坂元さんが紡いだダイアログはやはり印象深い
坂元さんの脚本が好きです。人と人との会話の中で生まれる言葉に不思議なパワーや魂が宿っていると感じます。
最終的に少年二人の心に爽やかな風が入り込むようなラストだったのだが、1回観ただけでは消化不良になる点があるかもしれない。2回目3回目を見て、自分の中でゆっくりと各登場人物の心情を噛みしめていくような作品だなと思った。
目に見えていることだけが全てではなく、事実ではなく。自分から見た他者、他者から見た自分、それらはいつもすれ違いが起きている。他の先生からの視点や、星川くんの視点が描かれたとしたら、どんなだったのかなーと思う。湖、火事、廃電車、横たわる金魚、猫…人間以外のものが、どういう意味を投げかけているのか?とかも考え出したらキリがなく、やはり2回目を見なければ。
印象的なセリフを挙げてみる。(映画のシナリオ本、ぜひ欲しい…)
・誰かにしか手に入らない幸せは幸せなんかじゃない、誰にでも手に入る幸せが幸せなのだ
・牛丼は牛に戻って、うんこはお尻に戻る(笑
・親って気使うよね
最近、宮藤官九郎さんがラジオで言っていた。記憶はバケツのようなもの、と。ここ2〜3年の出来事はほぼ覚えていないのに、バケツの底にある昔の記憶はいつまで経っても忘れない。坂元さんは小学校時代の自身の同級生を思い出したそうだが、本当に、子供の頃のこういう記憶って消えないものだ。自分の幼少期を思い出し、切なくなったり、後悔が湧き上がってきた作品でもあった。
子供を怪物だと思い込んでいたのは周りの人達か…
なにが人を怪物たらしめるんだろう?視点によって怪物が変わる。
序盤は、いじめ?→母親が怪物?→先生たちが怪物だ…
と思ったら、息子の湊くんが怪物なのか!?→担任の先生ヤッバ…→あれ?誰も怪物じゃない???
→結論、中村獅童が演じる父親と校長教頭が、根っからの怪物だと思いました。
とかなり揺さぶられました。
そして、伏線がかなり上手く気持ちよかったです。
片方ない靴、水筒の泥、怪物のカード、耳の怪我などなど、見方によって捉え方が変わる面白い伏線でした。特に水筒の泥は感動すらしましたね。
最近の流行りなのか何でもかんでも伏線と叫ぶ人らがいますが、考え直して欲しいなと思いました。
・"人に潜む怪物"が伝播していたと感じました。
最初は湊くんの友達(星川依里)のクズゴミ父親です。
いじめがあり、対応が分からない湊も悩みを抱え、担任の先生にも誤解を産み、そこから母親まで…
・証拠がないことによる恐怖っておそろしいですね。特に担任の先生がガールズバーにいたらしいという噂から先入観を持ってしまい、もう冷静ではなくなっていました。誤解による怪物誕生。
ガールズバーにいたのは、クズ父親でも担任でもなく、前の先生じゃないかなって勝手に思ってました。
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不思議に思ったのは、
なんで飴を食べたのか?
湊のとなりの席の女の子
前の教師はただの教師か
ってとこです。
隣の女の子はたぶん、依里のことが好きなのかなと思いました。初めは湊のことが好きで猫の件を咄嗟に庇ったと思ったのですが、それだと猫の件を密告した理由が分からないので…
あの女の子は、湊が依里をいじめている→本当は仲良し、ってことに1番初めに気付いたんじゃないかな?
飴は流れ的に、周りの先生からの指示かな
前の先生は今の担任の先生との比較で出していたと思うんですが、結局面倒事が嫌なだけの普通の先生だったので、良いキャラでした。
映画館で観るべきかと言われたら、断言は出来ないけど、少なくとも1回は観るべき映画だと思います。
とにかく演技も、ストーリーの早い流れも、決して難しくない理解しやすさも、観客に考える猶予をくれるところも全部満足しました!!!
【追伸】
2回目観ちゃった
個人的には、ラストシーンあの二人は死んでいると思います。
立ち入り禁止表記や天気など全てが二人にとって都合の良い、二人だけの自由な世界に行けたんかなーって
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