劇場公開日 2023年6月2日

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「あのラストをもってハッピーエンドと受け取りたい」怪物 たいよーさん。さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5あのラストをもってハッピーエンドと受け取りたい

2024年3月30日
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鑑賞方法:映画館

もう、思い出しただけでも泣きそう。エンドロールが終わっても泣きっ面が直らなくて、油断すればまた泣きそうで…。とにかく素晴らしいの一言。是枝作品の中でも断トツの傑作かなと。

坂元裕二氏がカンヌで語っていた「自分が加害者だと気づくのは難しい」視点、それを秀逸な点で浮かび上がらせる。奇妙な会話と不気味な輪郭におどろおどろしく感じていたはずが、その渦の中心から見える景色がこんなにも違うとは。足りない想像は簡単に創造出来ない。だからこそ、広がった景色に驚くのだと思った。

やはり今回も、というべきなのは、子供が持つ未熟を是枝監督は愛している点だと思う。小学生特有のイジり、といえばそれまでで、大人は年々それを拒む。それはきっと、単純化を求めすぎた大人故の弊害だ。それを3つの視点を繊細に描くだけでなく、三原色が重なった時に色が変わるように、その真実も変えてゆく。矛先に伸びた影はあまりにも残酷で美しく、圧倒されるばかりだった。

安藤サクラさん、永山瑛太さん、そして子供2人の視点から描きながらも、それぞれが抱えた正義も共鳴する所がまた突き刺さる。張り詰めた糸をそっと撫で下ろして観ていた分、涙腺となって溢れたのかもしれない。

ラストシーン、絶対に忘れることは無いと思った。怪物とは何か、カンヌの賞がこの作品に与えた意味も含め、僕はそれをハッピーエンドだったんだと受け取りたい。

たいよーさん。