「そこまで分かってるなら救ってくれよ!」怪物 おもちさんの映画レビュー(感想・評価)
そこまで分かってるなら救ってくれよ!
Twitterをみてると、この映画がLGBTQをオモチャにしてるとか、傷つくから観ない方が良い、みたいな批判がバズってたけど、僕はそんな風には感じなかった。
子供の頃、女子みたいって揶揄われた事とか、親に本当の事を伝えようとしたけど、TVに映るゲイタレントを「気持ち悪い」って言ってるのを聞いて伝えられなかった事とか、色々思い出して心がグッてなったけど、「消費されてる」なんて感じなかった。
寧ろ、何が湊や星川くんを追い詰めていったのかが緻密に、的確に描かれてて、こんな風に自分達と同じ目線を描いてくれるんだなって感覚の方が強かった。
でもだからこそ、描いているモノのリアルさに比べて、ラスト(救い)が抽象的すぎないか、という戸惑いもある。
この映画のラストは、湊たちが生きてるのか死んでるのか、どう捉えても正解な作りになってる。だって、他人が思い込みで誰かに、こうなんだよって言えないって事がこの映画のテーマなんだから。
だからもし、今まさに問題に直面してる人がこのラストをネガティブに捉えてしまわないかって考えが頭の片隅にあって、手放しで絶賛できない。
この映画が「答え」じゃなく「問いかけ」に重点を置いてるのも分かるし、多くの人に観てもらうためには効果的なのも分かるけど、ラストだけは大勢の観客の為じゃなく、今泣いてるたった1人の誰かのために作って欲しかった。
少なくとも、現実的な救済(解決策)を1つでも良いから描いて欲しかった。
校舎の屋上から下を眺めてた当時の自分がこのラストをみても、明日を頑張ろうとはならなかったと思う。
今、自分は大人になって少なからず理解してくれる人がいるけど、学生で同じ様な問題に1人で直面している人達が観たら、かなりキツいんじゃないだろうか。
でも、そういう人は必ずいる。ってか居ないはずがない。湊みたいに、なんで自分は生まれてきたのって、人が望む幸せは絶対に手に入らないのにって苦しんでる人が。
だから、そういう人に伝えたい。
そんな事はないよって。
止まない雨なんて絶対ないって。
嘘だって思うかもしれないけど、今抱えてる苦しみは必ず和らぐ時が来る。
誰にも言えなくて、苦しくて、もしかしてずっと自分は1人ぼっちかもしれないって不安に押しつぶされそうになってる人がいたら伝えたい。
諦めないでって。
大人になって世界が広がれば、貴方を理解してくれる人が必ずいる。あなたの味方になってくれる人が、あなたのことを信じてくれる人が。
だから、あなたのままでいて欲しい。
願わくば子供が、なんで自分は生まれてきたの、なんて悲しい事を言わなくてすむ世界が、2人が駆け抜けた、晴れ渡った柵のない世界が、少しでも現実に近づきますように。
Twitterとか見ないのでよくわかりません。この映画はある一つのテーマに収斂できない広がりがあっていいなと思いました。親や教員、大人なのに理性的に話せない、形ばかり、失礼な位なことをする親。親のあり方はシングルだろうが、ママ二人だろうが、パパ二人だろうが、どうでもいい、なのに「シングルマザーはねー」などと言う。根拠なく先生の悪口を言う。映画ゆえに有り得ない行動(いくら先輩教師に言われても仕事での話し中にいきなり飴は口に放り込まない方がいいよね。「男だろ」、「普通の結婚・家庭」っていう言葉を如何に大人も子どもも無意識にあるいは意識的に使っていることか。それにまず声をあげたのは女性、そして今はマイノリティーに属する私達みんな。マイノリティーは数の問題じゃなくて権力構造の上に属さない私達。映画の最後、私はキラキラしていて幸せに思いました。オープンな終わり方にして、それをどう思うか、物足りないかは見る人が決めたり望めばいいかな、それも日によって気持ちも揺らぐと思うけれど。おもちさんのレビューの答えにまるでなってないけれど、考えるきっかけを頂きました。ありがとう。LGBTQっていう名称、早くなくなって欲しい。