「ホモセクシュアリティな感情と人間の幸せとは」怪物 三輪さんの映画レビュー(感想・評価)
ホモセクシュアリティな感情と人間の幸せとは
この作品は、安藤さくらが単純に教師の子供への暴力(本当は暴力ではない)を、勇気凛々と解決していくストーリーと最初は思っていましたが、途中からその想像は見事に打ち砕かれました。結論を言ってしまえば、本当の主人公である2人の少年のホモセクシュアリティな感情が、嘘を誘発し、引き起こした人間模様だと私には思えました。いじめ問題をさまざまな視点から見ると、真実は全く違うのです。その不思議なストーリー展開は、脚本家の面目躍如なのでしょうか。物語が進行していくに従って、真実が全て明らかになっていくところは、まるで鮮やかな謎解きのようです。時間軸は何度も引き戻されて、これでもかこれでもかと真実を明らかにして行きます。つまり安藤さくらの正義も、永山瑛太の正義も、全て意味を持たなくなるほど昇華していくのです。怪物というテーマについても、出演者たち全てが怪物に見えましたが、最終的には怪物でもなんでもないのです。ただ、全員が縁起の法則によって絡み合い、感情をぶつけ合い、時には憎み合ったり、罵り合ったりしていますが、結局全ての事象はなんの意味もなく、ただ、それを見る人が、幸福だの不幸だのと判断しているに過ぎないということを、この作品では教えてくれている気がしました。ラストの、少年たちが走り回る姿は、青春の喜び、至高の喜びに満ちていましたが、これはどんな人の人生も、完璧なのだと示唆してくれているように思えました。
追記 田中裕子のセリフ。「誰もが手に入れられるものが本当の幸せ」。含蓄のある言葉です。
三輪さん、
私は、二人の少年の関係に恋愛が芽生えたことが全てを起こした原因だったのかなと、今さら思い始めました。
そんな段階で三輪さんのレビューを拝読し、府に落ちました。
行き過ぎ指導も組織的隠蔽も、サスペンスの撹乱情報だったことは理解してましたが、やれやれ、坂元裕二と是枝裕和にやられました❗
三輪さん、コメント有難うございます。
田中裕子のセリフ「誰もが手に入れられるものが本当の幸せ」がLGBTを自覚し始めている少年にとって、とても勇気づけられる言葉であることに、見終わってからしばらく経ってからようやく気がつきました。
この映画、本当に良く考えられてますね。
私が思うに問題提起型作品であり、おっしゃるようなご意見もまさに正しいと思います。勉強になります。🙇
ただ、単細胞な、答えをもとめる私には厳しいかも、私的な見解としては①見てる時には生死の問題は関係なかったのですが、時間が経って皆さんのレビュー拝見した上で考えると明らかに天国へ行った模様 ②性的嗜好は不明 ただおっしゃる方向でリードする制作者是枝監督、脚本坂元さんの思惑がミエミエです。
ただ抱き合っただけ キスならば別です。巨人の星の星と花形、伴宙太も抱き合ってますが、特に性的嗜好では無いですから③安藤サクラさんの役は 怪物以前に、育ちが悪く、行儀も悪い【あんな形で校長に詰め寄るのを 描くのはさすがに非常識かと 父兄とはいえ許されない】
まあそういった、見解が分かれるのは 是枝さんの目論み、術中にハマった正しい見方かと・・イイねありがとうございました😊😊😊
私はこのレビュー最後の校長先生の言葉の意味がよくわかりませんでした。
でも、怪物は誰だったのかという点は、全く同じ結論に達しました。
最初は「学校」という組織が怪物だと思っていました。しかし、一緒に見た人と話す中で、「全員が怪物」で、それが見る立場で違って見えるだけだ、という結論になりました。表現は違いますが、三輪さんの考える怪物と一緒なのかなあと思います。
別件ですが、二人の少年の感情については、つい、「またか」と思ってしまいました。よく左利きの割合くらいいると言われますが、映画では右利きかそれ以上の人が該当者になってそうです。(というかすべての映画の9割以上)これは明らかに実際の割合よりも多いと思います。
クィアパルム賞を取った事もあり、おっしゃるように、セクシャリティもテーマだし、少年や取り巻く子供、大人の行動のトリガーになってるのは間違いないのですが、そこに重きを置く映画とは思えませんでした。この時期の一つの顕われにも思え、時代が匂わせ以上を許容するようになった故の表現と受け止め