「二面性を持つピースどうしの複雑な関係性から浮かび上がるもの」怪物 penさんの映画レビュー(感想・評価)
二面性を持つピースどうしの複雑な関係性から浮かび上がるもの
ちょっとした何気ない一言や仕草が、妙に何十年も心に残っていて、『あのとき大丈夫だった?』当時のことを聞いてみると、『そんなこと言ったっけ?』と本人は何も覚えていないといった反応を示されることがたまにあります。
当たり前ですが、多分同じ事でも感じ方や受け止め方は千差万別で、その千差万別が少し通常とは違う形で、増幅されたときどのような物語が生まれるのだろうか。そんな一つのシュミレーション実験のような印象を受けました。
物語を構成する一つ一つのピースは、それぞれが別のピースと複雑にいりくんでいて、かつそれぞれのピースの全てが、一見悪のようでいて、実は悪ではない。強いようでいて実は強くない、黒のようでいて、実は白でもある・・・そんな二つの相反する性質が同時に存在しているような不思議な二面性をもっているような印象を持ちました。まるで量子系のように。そのことが徐々に明らかになる過程が実にスリリングであり、一時も目が離せませんでした。
そしてなおそれぞれのピースは互いに依存関係を結び、他のピースの弱い部分を互いに補い合っていたような印象を持ったのです。儚い夢のように、微妙なバランスのうえに成り立っているその関係の全体像が見えたとき、浮き彫りになっていたのは・・・・人が生きていくことの哀しさと微かな希望の光でした。
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