「上質な文学のような…⭐︎」怪物 ☆ムーミンさんの映画レビュー(感想・評価)
上質な文学のような…⭐︎
是枝監督、坂元裕二、音楽 坂本龍一という個人的にはオールスターの製作陣。
物語は、予告編でも何度も言われたように子供の喧嘩と瑛太演じる教場の暴力ということから
始まるが、もちろんそれはプロローグに過ぎない。
最初に安藤サクラ演じるシングルマザーが教師の暴力に対する抗議をし、見ている者は学校側の
強調されていること勿れ主義に苛立ちを感じる。
(このシーンの校長役の田中裕子が不気味。)
次に瑛太の教師側からの目線で、最初の母(安藤サクラ)の時に感じた気持ちとは全く逆方向とも言える感情を
抱えることになる。
物語は、時間軸を言ったり来たりしながら進み、最初に現れた伏線が次から次にと回収されていく。
このあたりは、脚本が見事で、特に大きな事件らしきものがおきないのにどうなるのか?という不穏な
空気が溢れてくる。
是枝監督の子役遣いは相変わらず冴え渡り、二人の子供はとても演技とは思えぬ自然さでこの物語を
引っ張っていく。
この二人、黒川想矢と柊木陽太の受賞がなかったことが不思議。
この二人の関係性に対してのクィア・パルムだったのだろうが、自分はそこまで意図したものだったのかと
疑問に思った。
ただ、11歳の仲の良い二人、それだけで良かったような気がした。
ラストシーン、大雨の中 隠れ家にしていた廃線なら二人が抜け出し、光溢れる世界へ走りでる。
衣里の「生まれ変わったなかなぁ?」に対する湊の「そんなわけないじゃん!」という返事。
坂本龍一の繊細で美しく哀しみを抱えたようなピアノ…。
泣くところじゃないと思いながら、何だかジーンとしてしまった。
是枝監督の作品(万引き家族依然の)を観てきた人なら共感するところもあるだろうが、坂元裕二の脚本と
いうことで、「花束みたいな恋をした」風な作品を期待して来場した人にはどうだったのだろう。
終映後、若い女性が「何か良くわからなかった。」と言っているのが聞こえて来た。