「怪物だーれだ?」怪物 しーげんさんの映画レビュー(感想・評価)
怪物だーれだ?
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これぞ是枝作品という現代社会に斬り込む一作。観了後に得られるのは、何本もの作品を観たかのような満足感だ。なぜなら、親/教師/子どもそれぞれの視点から描かれる三部構成だからである。
序盤に描かれるのは、早織(安藤サクラ)の息子湊(黒川想矢)をめぐる不可解な行動だ。得体の知れぬ不穏さを充満させ、謎解き要素を強める。第2章までは、保身や駒として使われる社会の構図など大人目線で描かれる"怪物"が目につく。
しかしこれらは、クライマックスに向けたカモフラージュだと感じる。なぜなら、最終章で張本人の立場から、本作の主題であり"怪物"の正体と言える性的指向を浮かび上がらせるからだ。
素直に受け入れられず悩み偽り苦しんできた気持ちに、楽器を通じて吐露するのが非常に印象的。その手助けを、"あの"校長がする設定も大変興味深い。
衝動に駆られた末でのラストカットは、一皮剥けた新たな自己で突き進んで行く希望を感じさせる。
時系列を整理するために、各章で共通する天気や音を散りばめているのが巧みである。
また坂元脚本は、「皆が手に入れられないものを幸せとは言わない」など、今回も数々の名言・掛け合いを残してくれた。言わずもがな最高である。
ここまで制作者目線を中心に記したが、是枝/坂元作品の常連であり、今クールの連ドラ主演も含む豪華キャストの表現力ももちろん見事。しかし今回は、ミスリードを含め複雑で多面的心情を表現していた2人の子役が主役だろう。
上記はあくまで主観、怪物は一体誰(何)なのか、ぜひ劇場で確かめていただきたい。
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