「【”人心に潜む様々な怪物。そして自覚無きある資質を持つ二人の小学生が起こした事と生まれ変わり。”今作は、視点が変わる事で、出来事の見方が全く変わる現代情報社会に警句を鳴らす作品でもある。】」怪物 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”人心に潜む様々な怪物。そして自覚無きある資質を持つ二人の小学生が起こした事と生まれ変わり。”今作は、視点が変わる事で、出来事の見方が全く変わる現代情報社会に警句を鳴らす作品でもある。】
ー 今作は、序盤はミナト君の母親(安藤サクラ)の視点で、中盤はミナト君の担任であるホリ先生(永山瑛太)、校長先生(田中裕子)を始め学校側の視点で描かれている。
観ている側は、序盤の展開でミナト君の付いた”嘘”を含め、母親の視点で学校側の不誠実な態度に苛立ち、その後ホリ先生たちの視点で描かれた内容を観る事で、ミナト君と喧嘩をしていたホシカワ君との真なる関係性に気付くのである。ー
◆感想
・ホシカワ君はその衣装や女の子のような顔つきも含めて、自らのクィアの資質を自覚している小学生であると思う。
ー 彼の愚かしき保守的思想を持つ父(中村獅童)の訪ねて来たモリ先生に対して言った言葉。”アイツは駄目です。豚の脳ですから・・。人間に戻すんです。”
そして、ホシカワ君の身体中にある痣は、この父親が付けたモノであろうとすぐに分かる。尚、ホシカワ君の母親は、既にこの世にはいない。-
・ミナト君の母親は、亡きラガーマンだった父の遺影の前で、ミナト君に自覚無き”呪”をかけている。
”お父さんみたいな、男らしい男になって普通の結婚をさせるまで、お母さんは頑張るよ!”
ー 母親の自覚無き”呪”により、ミナト君は”男は男らしく生き、女の子と結婚するのが幸せ。”と刷り込まれている。
故に彼は、ホシカワ君に対する想いと彼からの想いの狭間で苦しみ、学校では皆の前では仲良くしないようにするのである。-
・赴任して来たホリ先生が、ミナト君の付いた”嘘”により追い詰められて行くシーンが恐ろしい。
ー ミナト君の母親から見るとモリ先生は明らかに教職者としては不適格な人物であるが、学校側の視点では、ホリ先生は生徒に対する接し方も問題なき良き先生である。逆に学校側から見るとミナト君の母親はモンスターペアレントなのである。
だが、孫を不慮の事故で亡くした校長は学校を守るために、ホリ先生を父兄会を開き謝罪させるのである。-
・ミナト君とホシカワ君は廃線跡にある、列車を秘密基地にして、相言葉を”怪物だーれだ。”にして、列車の中で楽しそうに遊んでいる。
ー あの列車内の二人の楽しそうな姿が、彼らの真なる関係性を示していると思う。-
・そして、台風が近づく中、二人が遊んでいた秘密基地を土砂が襲う。
ー 必死にミナト君の母親と、ホリ先生は列車の中に入るのだが・・。ー
■これは、勝手な個人的意見であるが、ミナト君とホシカワ君は二人の秘密基地で、土石流に呑み込まれてしまったのではないかと思う。
故に、ラスト、陽光が燦燦と降り注ぐ中、ミナト君とホシカワ君が誰の眼を気にすることなく、楽しそうに手を繋ぎ走って行く姿を見て、私の琴線は震えたのである。
<今作は、人心に潜む様々な怪物(場合によっては、ミナト君の母親のように、自覚はない。)と共に、幼きクィアの資質ある二人の男の子の姿を、親、学校側、及び二人の視点から描いた作品である。
そして、今作は自分に都合の良い情報を取り入れる傾向にある現代社会への警句とも取れる作品なのである。>
こんにちは!お疲れ様です。
午前中に本作のBlu-rayが届いて観たんですが、改めてNOBUさんのレビューを読んだら鑑賞力、観察力が凄いっすわ!
ここまで細かく書いてたら分かってるかもですが中盤辺りでミナト君は、自分のベット上、母親との会話でミナトは何に生まれ変わるんだろ?ってセリフを話してるんですよね。
嵐の夜、列車の中に入り、列車に当たる土砂の音を聞いて「出発の音だね」と言ってから…横たわった列車の下から出る、嵐の後の晴れた原っぱを走る二人の姿って感じでした。
正直繰り返し観ても何とも絶妙なラインで生きてるんだか、亡くなってしまったのかは分かりにくいけど話の流れ的には死んだ、ミナト的には生まれ変わりたかったってのは分かりました。
ちなみにラストのチャプタータイトルは「新しい世界」でした。
長文になっちゃいました、すみません🥂
レビュー拝見しました。
なるほど最後はそうだったのかもと思わされました。
私はとても清々しいエンディングだと思ったのですが、そう考えるとちょっと悲しい
でも、どちらだったとしても、
このエンディングが好きです。
男は男らしくあれと言う呪いは、みなの母だけでなく、中村獅童や、担任の先生も無自覚にしてますね。
子供の異変に気づいているのは安藤サクラと中村獅童ら親だけ。
学校側はトイレでいじめの現場を見ていながら何も気づかない。
一つ疑問です。
湊の父親は、女性とドライブ中に事故死したと、湊は依理に語ってましたが、湊の母親にはソレは無い事の様になってるのが、不思議でした。
そりゃ子どもの前で、そんな事大っぴらに語らないでしょうが。
「お父さんみたいな立派な・・・」と語る母の件は、湊にはどう映ったのでしょうかね。
ミナト君の「生まれ変わって…」という言葉がこの映画のキーワードになってますよね。
ラストシーンをそこから考察すると…ですね。
ドラマ「わたしたちの教科書」では、転落しした少女の「世界を変えることはできますか?」という言葉がキーワードでした。
レビューとても分かりやすかったです。ありがとうございます。
誰が怪物なのか考えていましたが、ひょっとして物語の各視点で見方を変えて視てる鑑賞者側が怪物なのかと思ってしまいました。
本筋と外れてるかもしれませんが。
今後のものの見方を気をつけないといけないなと感じました。
こんばんは!
久々にこちらのレビュー読んだら共感数凄っ!(笑)
水は海へ良かったですよ!
A5ランクの肉は買って帰ろうとは思わなかったですけど(笑)
近所に美味い焼き肉屋があるんで食べに行きたくなりました!
詳細に記憶したものを丁寧にまとめ考察もした素晴らしいレビューですね。
終盤は、仰る様に事故では私も推察しましたが、
作品としては深追いをしませんでした。
敢えて明確にしませんでした。
厳しい現実を示唆するのに留めていました。
ラストは、二人の親密ぶりを描いています。このシーンは作り手のイメージであり、現実は厳しいが希望はあるという作り手の想いが込められているように感じました。
どんな、作品でも、ラストは希望を感じるものであって欲しいです。
本作のラストはハッピーエンドとは言えませんがグッドエンドでした。
希望を感じました。
では、また共感作で。
ー以上ー
なるほど、さすがのレビューですね。
初見の時は訳のわからないラストだなぁ、って思いましたが、2度目を観賞して、やっとあの2人は死んだのかも、って思いました。
そうじゃなかったら、お母さんと会えたシーンとかが入るでしょうね。
素敵なレビューありがとうございました。
私も最後のシーンは希望に満ちた最期なのだろうと思います。
お母さんと先生が、台風の助けに来た、でも2人は秘密基地を出て、明るい方へ、以前は行き止まりだった橋の方へ、笑顔で走っていきます。映画の中で何度も「生まれ変わり」を暗示しているので、願わくば、生まれ変わった時は、彼らを受け入れる事が出来る社会になっていると良いですね。希望のメッセージです。
おふたりの秘密基地のシーンは、とても酸っぱい初恋と「性の目覚め」のシーンはドキドキしました。どうやったら小学生が?
たくさんの作品を観てひとつひとつにしっかりとした感想を書かれているから共感が多いんだと思います。観ようかどうか迷っている作品はいつもレビューを参考にさせてもらっています。
急なコメント失礼します。最後はそう意味な気がしてきました。だから光の方に走って行ったんですね。土に埋もれて生まれ変わったともとれるし納得です。
失礼しました。
ラスト、翌日の朝に別の場所から脱出出来たのかと思ってましたが、、
なるほど納得です。非常に的確でまとめられていて感謝です!^ ^
やっぱり是枝監督の子ども演出手法はすごいですね。子役の二人の素質もあると思いますが、すごいです。
同じシーンでも、それぞれの視点に立つとその人の主観によって見えている映像が歪められてしまうものですよね。子どもの世界と大人の世界では違う景色が広がっています。
おはようございます!
めっちゃ細かく覚えてますね!
ラストの土石流部分の正解は何なんですかね?
私は土石流に飲まれたけど、そこから何とか脱け出してのかなと思ったんですけどNOBUさんのレビューを読んで何か納得って感じもします!