「一応、公式サイト等で基本ルールの把握はしたほうがよさそう。」それいけ!ゲートボールさくら組 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
一応、公式サイト等で基本ルールの把握はしたほうがよさそう。
今年153本目(合計804本目/今月(2023年5月度)10本目)。
…ということで、こちらの作品です。
まぁ、扱うターゲットが特殊すぎて大ヒットはしないと思いますが、テアトル系列さんがかかわっている事情もあり、最低限以上のクオリティはあります。
※ 公式サイトに最低限のゲートボールのルールの理解の説明はありますが、Youtubeほか、ルールを説明する動画サイト等多いので、これらの理解が「ある程度」前提になります。
介護サービスセンターの倒産の危機を救うために、その一つの施策としてのゲートボール大会で優勝なりしてテレビ等でとりあげてもらうために(かつて、別のスポーツで楽しんでいた当事者が)ゲートボールで戦う、という趣旨の映画で、趣旨としては介護問題やアルツハイマーの当事者等の論点、さらに背景として「ゲートボール自体の現在の(消極的な)在り方」が消極的ながらにも取り上げられている(この映画は、ゲートボール連合会が協力関係にあるので、あまりにもネガティブには描けない)点などがあります。
一応、趣旨的には問題提起型の映画とみる向きもあると思いますが、今現在「いろいろな事情で」(後述)衰退しているゲートボールに「3回目の」(後述)陽があたる日が来るか…という論点の映画だろうというところです。
なおタイトルにも書いた通り、ごく基本的なゲートボールのルール(何をすれば1点が得られるか、2点が得られるか…)がわからないと、「なぜ逆転できるのか」等がわからなくなるので注意です(この点は、映画の公式サイトや、Youtubeの連合会のルール紹介等で簡単にわかります)。
採点に関しては下記の通りで4.6を4.5まで切り下げたものです。
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(減点0.3/不動産の物権変動と温泉に関する権利の説明不足)
・ 不動産の物権変動は、当事者どうしでは契約だけで成立しますが、第三者対抗要件が不登法による登記なので(177条)、基本的には登記がされます(これは司法書士しかできません。行政書士がやるとアウトなので注意です)。
一方、この映画の一つのポイントになる「足湯」は、その「湯」が温泉法でいう「温泉」になる限り、温泉法の適用を受けるため、その権利移転の手続きは(当事者が自力でやることを前提にしないなら)行政書士の単独業務です(都道府県によって出す書類が違う。中核市以上か、一般市以下では扱いがさらに異なる)。
この説明が全部抜けているので(まぁ、不動産の物権変動に登記が必要、というのは「ある程度」知っている方も多いと思いますが)、不動産の登記と温泉の権利移転の話は別扱いなので(後者を司法書士がやるとアウト)、ここは明確に説明が抜けているように思います。
(減点0.1/自転車の不適切な利用)
・ テアトル系列さんの映画でなぜか妙にこの点よくあがるのですが、自転車の片手運転は当然、法に触れます(もっとも、おまわりさんに注意される程度だとは思いますが…)。この点、バイクのノーヘルメット運転については説明があった(「さかなのこ」)点と明確に異なり、やや配慮を欠くところです。
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(減点なし/参考/ゲートボールの現状について)
・ 映画内では高校部員との練習試合があるようにあたかもヤング層にも広がっているように見えますが、ゲートボールそれ自体は、当事者であるところの高齢者の競技者数は(コロナ事情を除いても)1/10以下になるなど厳しい状況で、公式(連合会)が小学生や中学生ほかに普及を図って現在の「何とか維持ができる状態」があるもので、これは「ルール自体が抱えるトラブル」がいくつかあるものです。
映画内では「ゲートボールはやめてパットゴルフをはじめた」というように、ゲートボールは衰退をたどる一方です(特にゴルフ類等に流れる類型が多い)。
そもそもゲートボールは映画内で描かれるように、チーム戦の様相を持ちます。
各ゲートを通過すれば1点、ゴールにあてると2点(この「2点」の部分が映画内で描写不足)ですが、ゴールにあてたプレイヤーはその場でゲームから除外されます(=結果的に相手の手番が続くことにつながる)。つまり、「早上がり」するのはルール上損なのです。一方、公式ルール上「30分」が制限時間です。
つまり、「早上がりして除外される」と、チーム戦である以上損得関係が発生する関係上、ただ単に相手ボールを邪魔するための配置を延々と行い、残り5分なり10分なりの宣言が審判からなされると、一気にゴールを目指すという、「ややルールの趣旨を逸脱する」プレーが標準的な戦法として普及したため、「個人としての力量より相手を邪魔するだけのプレーがチームプレーとして求められることへの抵抗感」、あるいは「チーム戦であることから、1人のミスが大きく響く」ことの抵抗感(このことでチーム内のメンバー間トラブルになる事例がきわめて多かった)が一般的にあげられます(ゲートボール自体は地方自治体も把握しているスポーツなので、衰退した理由については行政からの多くの研究事例がある)。
※ そもそも、ゲートボール自体が「高齢者のスポーツ」ととらえる向きはほぼ一致するものの、「ガチで都道府県なり市町村のゲートボール大会で優勝するぞ」と考える向きと、「勝ち負けは二の次で、体を動かしてリハビリをすること」と考える人とで参加意識がバラバラだったことも実際問題存在します。
また、ゲートボールは発祥が日本(北海道)で、当時は戦後の混乱期で最低限の道具で楽しめるゲームという形で1度ヒットし、一度衰退すると、今度はいわゆるフェミニズム思想の普及により女性の社会進出が当たり前になったころに、いわゆる「婦人会」への普及で2度のヒットの機会を得ましたが、上記のような事情もあり、やめていった方が多いのもこれもまた事実です。
多くの方が言うのは、結局「ルールを若干逸脱した邪魔的なプレーへの抵抗感」「いわゆる「教えたがり屋」(いちいちプレーに干渉する人が一定数いた)への抵抗感」、あるいは「ルールの不統一」(当時は地域のローカルルールがバラバラで、何度か日本統一ルールを定めようとしたがトラブルになった)であり、そうした方が、ほぼ同じルールで基本的に個人戦になる(要は勝ち負けが当人だけになるのでトラブルになりえない)パットゴルフ等に流出していったという事情が実は存在します(ほか、ディスクゴルフ等。ルールは違っても同趣旨なものはすべて同じ)。
実はこういった事情がゲートボールには存在し、何とか小学生、中学生ほかにルールを普及させたり、あるいは「邪魔的なプレー」がしにくいように2人~3人制等の普及がはかられたり…といった流動的な機会でもあります(今はその「3度目のチャンス」といえる)。