劇場公開日 2023年12月8日

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VORTEX ヴォルテックスのレビュー・感想・評価

全41件中、21~40件目を表示

3.0睡眠不足の状態で観るものじゃなかった。半分寝てしまった…。ので正確...

2023年12月20日
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鑑賞方法:映画館

睡眠不足の状態で観るものじゃなかった。半分寝てしまった…。ので正確にはわかりませんが、画面を2つに分けた効果がイマイチ感じなかった。
年をとるのが嫌だなあと沁みる作品でした。

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まるぼに

4.0運命。

2023年12月20日
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鑑賞方法:映画館

元精神科医でもああなってしまうのか。
もしどちらかが健常なら起こらなかった悲劇だ。
こういう映画を観る度、運命には逆らえ無いのか、明日は我身かもと感じてしまう。

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あらじん

2.5実験映画なのか?

2023年12月18日
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ほぼ二分割画面で見にくくどちらを観れば良いのか?そこが狙いなのか、上映時間に対して全く長さを感じさせない作品。全く救いもなくただただ死に向かう人間を描いている。これはホラー映画なのかと思うほどに観ていて辛い、精神をえぐられる。

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るい

4.0引き込まれる

2023年12月18日
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鑑賞方法:映画館

怖い

知的

ダリオアルジェント が主演とは驚き。人の映画に、しかも主演で出るなんてこれはもう映画史的な事件ではないかと。評判もいいようで。

結論からすると本当に良い映画でした。むしろ、どんよりとした重たい空気に包まれる映画ではあります。でもこういう現実は世界中そこかしこにあるんだろうし、この先自分の親にも、自分自身にも起こりうるだろうと。いや、映画では夫婦揃ってるだけもしかしたらまだマシなのかも知れません。
独り者の高齢者の現実ってもっと悲惨なんだろうと容易に想像できるような。題材はなんにせよ、映画を観て現実を顧みて、何かしらの影響を及ぼすってこれ映画の究極の理想な気がして。その意味ではガッツリ術中にハマったと言わざるを得ません。

画面サイズでの試みはスタンダードサイズで始まり、開始早々に画面は分割されます。途端にスタンダードの画面が横並びになる。間の黒味も含めるとトータルでほぼシネスコサイズ。シネスコサイズにスタンダードを2つ詰め込んでる。部分的な画面分割はデパルマ はじめ色んな監督がやってますけど、全編分割しっぱなしというのは初めて観ました。

なので言うなれば2本の映画を同時に鑑賞しているような感覚で最初のうちは人物関係や状況設定の説明なども含めて情報量多すぎてぶっちゃけこれはついていけない、諦めようと思ったりしました。ですが、2、30分したあたりから次第にグイグイ引き込まれて、終わった時にはもう一度観たいという気持ちになっていました。本当に術中ハマりまくっちゃいました。

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ヘルメット

4.5老夫婦と彼らの家の「在りし日のスライド」

2023年12月18日
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鑑賞方法:映画館

スプリットスクリーンで印象的に描かれる、共に暮らしながらも食い違っていく老夫婦の終末。
カット切り替え時の暗転はギャスパー・ノエの特徴的な演出であるけれども、妻の葬儀時のやはり暗転を挟んで展開される「在りし日のスライド」やそれに続く家の片付けのシーンを見て、この映画全体が老夫婦と彼らの家を送る「在りし日のスライド」であったのかと思い至った。
特に印象に残ったのは家の描写で、大量の草花で飾られたバルコニーから始まるオープニングを皮切りに、溜め込まれた書類や本、貼られまくるポスターや写真や手紙などが執拗に描写され、彼らの時間と暮らしが刻み込まれた第三の主人公として機能していた。
家が夫婦と不可分の存在であるがゆえに、妻が書類や原稿を捨てるシーンが彼女の病の、ひいてはこの映画のクライマックスとなり、夫は妻の病がいくら進もうとも介護施設への引越しを決断できない。

思わずうるさいと叱りたくなるような、大事な話をしているときにミニカーをぶつけてうるさくする男の子もすごく良かった。

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jinmin

2.5高評価が多いが、私には退屈な映画だった。

2023年12月17日
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鑑賞方法:映画館

 今日はこの作品と「ポトフ」をはしごした。私には2本とも外れの映画だった。まぁ、そんな時もある。心が打ち震えような新作を待望しているが、正直なところ年に1本あるかないかだ。

 今年、68歳になった。人の死が他人事でない歳だ。見たくない現実を見せつけられているようで楽しめない。感動もさせてくれない。スクリーンを2分割してそれぞれの対象人物を同時進行で撮影する実験を行っている。試みとして面白いけれど、成功しているとは思えない。

 先日、小津安二郎の「東京暮色」を観ていて、その構図の美しさにうっとりとさせられた。それに比べたら、と感じる。俳優による演技だがドキュメンタリータッチで画面構成を考えることは難しいだろう。

 画面分割することで浮かび上がったのは、親子それぞれが抱える苦悩がよく分かること。くらいかな。家族と言っても、所詮自分以外は他人か。

 いつ終わってくれるんだろうと退屈だった。この映画と関係ないが、「東京暮色」は小津安二郎の失敗作と言われている。とんでもない。秀作だ。また、音楽がいい。斎藤高順が担当。

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いなかびと

3.5どう生きるかと人は問う、どう死ぬかと己に問う

2023年12月17日
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老夫婦のもう心が通じていない様子が画面分割により物理的にも伝わる。加齢による病気・老い・親子関係の変化・最期など、誰もが通る道を素直に丁寧に映し出している。
話として必要なのは理解できるが、息子が出てくるまで冗長に感じた。

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ななな

4.0妻から夫が、あの人になってしまうときとは?

2023年12月17日
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鑑賞方法:映画館

難しい

同時、二画面分割進行で分かることは、
心なければ会話も対話も意識の交流もなく、
相互の立場の責めぎあいとなることが分かり良い。

妻の認知症も夫の心臓病も、
夫によるトラウマではないかと、
精神科医の妻が無意識のうちに発する片言に胸が痛い。

家内は帰宅する夫を何時も待っているのだ。

生老病死という渦中の流れでは、
二人の病と死に方は、
当然の因果応報の結果あろうか。

分割のため字幕が読み難いので最前列鑑賞をお勧めします。

( ^ω^ )

VORTEX ヴォルテックス

「アレックス」「CLIMAX クライマックス」などで知られる
フランスの鬼才ギャスパー・ノエ監督が、認知症の妻と心臓病の夫が過ごす人生最期の日々を、
2画面分割映像による2つの視点から同時進行で描いた作品。
「病」と「死」をテーマに、誰もが目を背けたくなる現実を冷徹なまなざしで映し出す。

心臓に持病を抱える映画評論家の夫と、
認知症を患う元精神科医の妻。

離れて暮らす息子はそんな両親のことを心配しながらも、
金銭の援助を相談するため実家を訪れる。

夫は日ごとに悪化していく妻の認知症に悩まされ、
ついには日常生活にまで支障をきたすように。

やがて、夫婦に人生最期の時が近づいてくる。

ホラー映画の名匠ダリオ・アルジェントが夫役で映画初主演を果たし、「ママと娼婦」などの名優フランソワーズ・ルブランが妻、「ファイナル・セット」のアレックス・ルッツが息子を演じた。

VORTEX ヴォルテックス

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カール@山口三

5.0凄すぎる。

2023年12月15日
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鑑賞方法:映画館

あのダリオ アルジェント監督の演技はどうなのか見たくて、、あ、ノエの新作なんだ、、程度の知識で見に来ました。

演技の素晴らしさでどう見てもドキュメントに見えます。アルツハイマーのあの不安そうな目の動き、、じょじょに壊れていく妻の姿を見守る自身も心臓に問題のある夫。大枠だけ決めて脚本無しで会話してるから実に自然です。

画面のスプリットもコミュニケーションがすれ違っていく2人のやるせなさを上手く表現する方法として成功してたと思います。

オープニングからスタッフロールが出ますがエンディングの喪失感のためだったんですね。
凄い映画です、全力でお勧めします。

Vortexは渦巻の意味。

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masayasama

3.5思ってたより良かった。75点ぐらい。

2023年12月14日
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静かで眠くなる映画だろうな…と思ってたら、全然に眠くならなかった(笑)

画面が縦で2つに割れていて、左と右で別々に物語を追っていく特殊なスクリーンで、左を観たり右を観たり忙しいです(笑)

最初は観ずらいと思っても、観てるうちに慣れてきて、終わる頃には、このスクリーン良かったと思うはず(笑)

他にも前衛的でして、オープニングそうそう面食らいます(笑)

ビックリしてほしいので、ご自身で確かめて下さい(笑)

あの映画と同じだよ(笑)

この仕様は成功だと思う。

この仕様だからこそ、この終わり♪

ダリオ・アルジェント監督が俳優として出てるので、ホラーファンとして楽しみに観賞したんだけど、思ってたより良かった。

アルジェント監督の演技は自然で素晴らしかったです♪

残念ながら、ホラーテイストは、ございません(笑)

4寄り3.5で、75点ぐらい。

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RAIN DOG

4.0ギャスパー・ノエの本質

2023年12月14日
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鑑賞方法:映画館

別のつぶやき投稿で
まさかあのギャスパー・ノエ作品で泣かされるとは…
今まで通り実験的ではあるが、まさに『ファーザー』の夫婦版であり、人間の狂気ではなく普遍を描いた作品になっている。
一体どうした?、今までのギャスパー・ノエ
と述べたのだけど、私の本作の感想はほぼほぼこれで全てです。

でも個人的には非常に刺さったので、もう少し覚書き程度に書き残しておきます。
一応ネタバレはありますが、本作の場合ネタバレなどよりテーマが重要なので鑑賞の弊害にはならないと思います。
まあ個人的に何が刺さったのかというと、人生も2/3を過ぎたら誰しも自分の死に際位考えると思うのですが、本作の場合も上記した『ファーザー』の様に、ある老夫婦の死ぬまでの数日間か数週間か数か月間の記録映画の様な作品になっています。
映画.comの簡単なストーリーも紹介しておくと
「心臓の持病がある映画評論家の夫、認知症を患う元精神科医の妻、離れて暮らす息子ステファン。古いアパートメントで穏やかに暮らす老夫婦だが、日常生活に支障をきたすようになった妻と、ステファンに提案された介護ホーム入りを頑なに拒む夫の人生は、静かに崩れるように終わりの時へと向かっていく。」
これを読むとまさしく『ファーザー』の夫婦版ですが、このちょっとした違いが多くのシニア階層の観客には身につまされる様にも思えます。
私は母親と息子ですが老々介護という面は同様であるので、様々なシーンで恐怖を感じていました。普通の当たり前の“老いる事の残酷さ”を描かれいるだけでもそれが恐怖となるのです。

本作の特徴も書いておくと、本作の殆どが左右2画面で構成されていて、一部マルチ画面の作品は今までにも多々ありましたが、全編ほぼ2画面というのは初めての体験でした。なので視覚情報量が多過ぎて最初は慣れませんでしたが、途中からはあまり気にせず見れるようになっていましたね。
あと『ファーザー』の時も感じたのですがヨーロッパの古いアパートメントの構造がよく分からないのですよ。入り口や廊下などは狭いのにやたら部屋数も多くキッチン・バス・トイレ・バルコニーなどがどのような配置なのか画面を見ているだけでは全く把握できなくて、2画面で二人が歩き回っているのに全く出会わない時もあり、これも敢えて2画面で行う事の効果なのかも知れません。
画面と画面の間の隙間が凄く重要な役割を果たしている様にも思え、愛情とは関係のない個々の人間としての隔たりを表していた様にも感じられました。
(余談ですが、本作パンフレットにアパートメントの部屋の推測見取り図が載っていたので、私と同じように感じていた人もいたのが分かり嬉しかったです)

本作で今までのギャスパー・ノエらしさを敢えて探すなら、大事な会話中に執拗に(現実では当たり前の)孫の遊ぶノイズを強調していたり、タイトルの“ヴォルテックス”(渦)を詰まったトイレに異物を入れ流れない渦で表現し、これは結局人間の人生(死に際)に対する比喩表現でもあった様な気がして、この辺りもノエらしさの様な気がしましたね。
結局2画面構成も、敢えて視線を合わせない方法論で、美術表現で言うと“キュビズム”に近い表現方法を実験した様に感じられました。

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シューテツ

4.0生き物誰にでも平等に訪れる老い。 恐れているばかりではいけないと思...

2023年12月13日
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鑑賞方法:映画館

生き物誰にでも平等に訪れる老い。
恐れているばかりではいけないと思いつつも、
こんなにまで現実的なものをみせられてしまうと
やっぱり不安はあって。

今のわたしにできること、
自分とまわりを愛し、心からの感謝を伝えようと
改めて思えた。

まずは両親に会いに行こう。

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ユリ

4.0「演技する」ダリオ・アルジェントを堪能する眼福の2時間。老々介護のシビアな現実に迫る。

2023年12月12日
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鑑賞方法:映画館

まさか、ダリオ・アルジェントが演技してる姿を2時間近く拝めることになるとは、思ってもみなかった。
生きているといろんなことが起きるもんだ(笑)。

てか、ふつうに演技できてるじゃないか!
マジで感心したよ、ダリオ爺さん!
さすがは自分の監督作で、必ず殺人鬼の「手」の役だけは自分でこなしてきたと豪語するだけのことはあるぜ。

思い返せば、僕の映画道は、小学生の時ばあちゃんと一緒に日曜の朝っぱらからTVで観た『サスペリア』&『サスペリアPART2』に端を発してると言っていい。
それから、VHS時代にすべて手に入るパッケージは手に入れ、DVD時代になって手に入るものはすべてDVDに買い換え、知人を通じてフランス語字幕の『4匹の蠅』まで手に入れた(ずいぶん後になって正規盤が国内でも出た)。新婚旅行先のイタリアでは、ローマでダリオ・アルジェントの店にも立ち寄った(アルジェントには会えなかったが、店番をしていた弟子のルイジ・コッツィに会えた)。その後、何本カスみたいな新作映画を撮ろうが、僕はダリオ・アルジェントの信者であり続けてきたし、彼への敬慕の念は変わらなかった。
それがなんとまあ。
いまさら主演映画だなんて。
どんなご褒美だよ。

今回、僕としてはきわめて珍しいことに、
●前準備として、相手役のフランソワーズ・ルブランを知るために、『ママと娼婦』をわざわざ観にアテネ・フランセまで行った。
●事前に前売り券を買った(ここ10年くらいで初めてかもしれない)。
●公開初日に観に行った(これも10本に1本もないくらいの頻度)。
何せこれは、単なる映画鑑賞ではない。ある種の「信仰告白(コンフェッション)」だ。
受肉し、眼前に「俳優」として降臨する監督「神」を崇めるための神聖なる儀式なのだ。

というわけで、拝んできました。
ダリオ・アルジェントの雄姿を。
もう、出ずっぱりですから。
ずっとおじいちゃん役で画面内をうろうろしてますから。
あと、寝たり。泣いたり。倒れたり。
控えめにいっても最高です。なんて幸せな時間。
思っていたより、ずっと温厚で、
ずっと常識的で、ずっと慈愛溢れる感じの老人だったな。
目に焼き付けました。僕の幼少時のヒーローを。

しかも、ちゃんとフランス語の台詞しゃべってるのも凄い。
(もともと彼は若いころフランスに遊学していたことがあるらしいが)
「フランスに移住して現地で結婚したイタリア人映画評論家」という役どころではあるが、母国語じゃない映画で初主演を引き受けちゃうとか、ほんと頭が下がります。

考えてみると、たいがいの監督は巧みに演技をこなす。
オーソン・ウェルズやクリント・イーストウッドのような俳優あがりの監督はもちろんのこと、トリュフォーやゴダール、ヒューストン、クローネンバーグなど、やらせてみたらそのへんの俳優よりぜんぜん上手いという監督はいくらでもいる。そういや庵野さんっていう究極の飛び道具もいたっけ(笑)。
いろんな俳優に演技指導をして、自分の望むプランを伝えているわけだから、基本は下手なわけがないのだが、たまに蜷川幸雄みたいに演技者としては大根ってタイプもいるので、一概には言えない。
アルジェントの場合は、演技というよりは、ふだんのままの人柄と風格がそのまま役に投影されているんだろうね。実に自然に、当たり前にその場にいるかのように、老いた映画評論家役を訥々と演じていた。

しかも、思いがけないご褒美として、ヌードシーンまで!!
え、脱いじゃうの??
ああ、脱げてく、脱げてく、いやーん、乳首まで見えちゃった!
必要なのか?? アルジェントのヌードシーン???
などと、若干興奮しながら、オジサン、オーバー80の老人のシャワーシーンを食い入るように観てました(笑)。

てか、若干髪振り乱した老婆が外でよからぬたくらみを抱きながらうろうろ徘徊してて、かたやシャワーブースで様子もわからずにシャワー浴びてるのって、まんま『サイコ』(60)のパロディだよね!
実際、アルジェント自身も何度も何度も『サイコ』パロのナイフ惨殺シーンを監督作でやってるし、ギャスパー・ノエも『カルネ』(91)でバスルームで娘を洗うシーン、『アレックス』(02)でシャワーカーテン越しのモニカ・ベルッチのシーンをやっていたはずだ。
しかし、まさかアルジェントのシャワーシーンが見られるとは思いもよらなかった。

相手役のフランソワーズ・ルブランはさすがの名女優。
アルツハイマー型認知症のかなり進んだおばあさんという難しい役どころを、静かに、穏やかに、でも鬼気迫る危うさも存分に漂わせながら、きちんと演じていた。
まあこの人『ママと娼婦』のとき(ほぼデビュー作)からメチャクチャ演技できる人だったからね。
ギャスパー・ノエも、インタビューで、アルジェントには自由に即興で演じてもらったが、ルブランには認知症の患者として演技を作り込んでもらったと言っていた。
それにしても、なんてすごいキャスティングだろうか。
最晩年の二人の姿をこうやって画面に焼き付けることができただけでも、本作を撮ってくれた甲斐はあるというものだ。

― ― ―

老々介護映画の傑作といえば、なんといってもミヒャエル・ハネケの『愛、アムール』(12)にとどめをさす。あれを観たとき、僕は本当にわけがわからなくなるくらい泣いた。
今回の映画についても、ギャスパー・ノエは「ぜひ泣いてくれたらいいと思ってる」と述べていたが、残念ながら個人的に具体的に泣けるような場所はほぼなかった(笑)(とても良い映画だとは思うけど)。
まあ、『愛、アムール』の山場でかかるのはシューベルトの即興曲やバッハのコラールだけど、『ヴォルテックス』の山場でかかるのはエンニオ・モリコーネの『ミスター・ノーボディ』(73)のサントラだからなあ。それで泣けって言われても僕には難しいよ(笑)。
ちなみに、エンニオ・モリコーネはダリオ・アルジェントの初期動物三部作『歓びの毒牙(きば)』(70)『わたしは目撃者』(71)『4匹の蠅』(71)の音楽を担当しており、この映画で引用するにふさわしい作曲家であるともいえる。

ギャスパー・ノエは、かつて「最も好きな映画」の投票で『愛、アムール』を選んでいるそうで、ハネケの映画は間違いなく『ヴォルテックス』の直接的な霊感源となっている。ハネケもまた、『愛、アムール』を撮る一方で『ファニーゲーム』(97)のようなえげつない暴力と狂気の映画をも平気で撮る監督であり、意外に両者は似通ったメンタリテの持ち主なのかもしれない。
さらにノエとアルジェントの影響関係に関していえば、たとえば『カルネ』や『アレックス』を観ても(その2本しか観ていないのだが)、どぎつい赤や黄色の原色使用、後ろから追いすがるような一人称カメラ、突発的に発生する身体破壊的な暴力描写など、あからさまにアルジェントの影響を受けていると思しきショットやアイディアが多用されていて、もともと彼がアルジェントに私淑していた痕跡には事欠かない(『カルネ』の若者襲撃シーンとか、まんま『インフェルノ』(80)で皆既月食の夜に起きる惨殺シーンのパクリだし)。
『ヴォルテックス』でも、ギャスパー・ノエは今までの作品同様に、「シネフィル的」な過去作の引用&オマージュを挟み込んできている。部屋に飾られている大量の映画関連書や、古い映画ポスターの類。途中で流れるカール・テオドア・ドライヤーの『吸血鬼』とおぼしき映像。エドガー・アラン・ポーからの引用。
そもそもアルジェントを引っ張り出して、映画評論家の役をさせつつ、相手役にヌーヴェル・ヴァーグの隠れたミューズをあてがってるというだけで、十分にシネフィル的な映画だともいえるだろう。

映画としては、スプリット・スクリーンを全編で実験的に用いた、徹底して作り込まれた「ギミック」重視の作品である一方で、今までのド外れた「暴力&ドラッグ&セックス」に彩られた「露悪趣味」の傾向をかなぐり捨てて、オーソドックスに一般大衆向けのスタンスで撮られた、きわめて「まっとう」で「正攻法」の作品でもある。

ふたりの幸せで平穏な憩いの時間は、冒頭の数分で終わりを告げる。
老妻の徘徊が始まってからは、延々と続くスプリット・スクリーンによって、同居する老夫婦それぞれの「孤独」と「分断」が、シビアに紡がれてゆく。
序盤の徘徊シーンや静かな生活ぶりの描写はあまりにも長すぎて、ちょっと退屈で眠たくなってしまったが、中盤で起きる「事件」の数々で眠気もふっとんだ。

あの、唐突に身体に力をみなぎらせながら、らんらんと目を光らせて「抗てん●●●」とか言いだす瞬間の、なんとおそろしいことか。
そのあとのシーンも『子連れ狼』の金田龍之介演じる茶坊主みたいで、超×超こわい。
で、それらすべてを「まとめて忘れてしまう」というのも、考えてみるとすごいオチではないか。いや、あのまま行ってたら俺のアルジェントの出番はあそこでもう終わってたんだけど(笑)。
そのあとのアレとか、アレとかも、まあまあホラーすぎて、もうね……。
結局、自分で自分が何をやっているかもはやわからなくなっているサイコ犯ほど、ガチで予測不能でデンジャラスな存在はいないのだ。

しかも、息子は決して悪いヤツじゃないけど、あんなだし。
てか、息子の息子(孫)の挙動とか観てると、子供にも明らかに結構なストレス兆候がでてるしね。全体に、中盤以降に「新たに明らかになる事象」の大半が、げんなりするような(状況がよくなるとは思えない)現実ばかりで、なかなかにしんどい映画だった。

ただ、ギャスパー・ノエなら、本当はもっと「えげつない」映画にできたはずだ。
もっと奇矯で、もっと薄気味悪くて、もっと過激な「ボケ」を描けたはずだ。
しかし、彼は今回それをしなかった。
あえて盛り上がるドラマに仕立てなかった。
終わり方も、そこまで「劇的」ではない。
淡々としていて、そこそこコワいけど、それなりに情愛に満ちた、生々しいドキュメンタリーっぽさもあるけど、相応にフィクションであることも諦めない、そんな「しぶいいぶし銀の映画」に仕上げて来た。

ギャスパー・ノエはインタビューで言っている。
「銀行強盗を題材にした映画はたくさんあるけど、銀行強盗はほとんど起こらないだろ。でも認知症は、ほとんどすべての家族に起こるんだ」
そう、「老い」は人類ひとしくすべての生を受けた者に訪れる、普遍的なドラマだ。
誰もが死を恐れるが、死ほどに公平で不可避の出来事もまたなく、言ってみればこんなに平凡で、ありきたりで、特別さのかけらもない当たり前のことなど、他にないくらいのものである。
人生で言えば、いい学校に受かったり、綺麗な奥さんと巡り合ったりのほうが、よほど「他人より特別」でドラマチックな要素を含んでいるのではないか。
それでも、人は誰しも、その最期を「泣けるドラマ」として悲しむ。
万人に訪れるとはいっても、やはり「死」は特別で重大な瞬間なのだ。

『ヴォルテックス』は、そんな死の悲劇性と死の凡庸さを、ノエ監督独自の「バランス感覚」で描いてみせた映画だ。
そこには、監督のお母さまが晩年に重い認知症を患ったという経験や、監督本人が脳出血で亡くなりかけるという死と隣り合わせの体験をしたことも反映しているだろう。
そこに、アルジェントとルブランという、本当に人生の終焉を目の前に控えた老監督と老女優のエッセンスが加わって、この映画はできているといえる。
決して泣ける映画でも、
ことさら感動するような映画でもなかったけど、
割合に良い映画だった。
それで今回は十分に成功であるように思う。

でも、ラスト近くの趣向は、泣けるってより、
ちょっと笑ってしまったなあ。
本物のダリオ・アルジェントとフランソワーズ・ルブランの若いころの写真使ってあんなことやるの、反則だよ(笑)。

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じゃい

3.0認知症の母と心臓病の父の最期を引き取る息子の物語

2023年12月11日
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知的

冒頭のテロップで「心臓の前に脳が壊れるすべての人へ」贈られ本作。70代後半の老々介護の日々を送りながら近づく死期の不安感が、2画面のスプリクトスクリーンで噛み合わない夫妻の心の綾をリアルに描いている。

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JC-LORD

4.0冷徹なまでに

2023年12月11日
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なにか劇的なものが起こると思いきや、現実を冷徹なまでに描写していて響いた。
死というものに対して誰しもが幻想を持っているのかもしれない。その幻想を砕くような作品。

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ドラゴンミズホ

4.0終わらない悪夢をずっと見せられているような···この先、自分もこの...

2023年12月11日
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終わらない悪夢をずっと見せられているような···この先、自分もこの構図に組み込まれる可能性が有る怖さは、ホラー映画のそれよりズシリと来る。精神的な削られ含め疲労困憊だ。

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こち

3.0重い現実、考えさせられた作品

2023年12月11日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

難しい

寝られる

色々と考えさせられた作品だった。昨年公開したPLAN75の欧州編かと。
とにかく世界の高齢者社会はどれも重いが、今回の作品は今後の日本を予測するかの作品だった。
序盤のオープニングのスタッフ紹介、テーマソングは斬新だったが、とにかく時間が長すぎる。もう少しコンパクトにしてほしい。
しかし、観ておきたい作品。

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ナベウーロンティー

3.5良質のドキュメンタリー作品と言っても良いのでは??

2023年12月10日
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凄い、けどもう一度は観たくない。
苦し過ぎる。

運転免許の更新に行くと見させられる“教習ビデオ”みたいだなー、と感じた。
『みなさんが向かって行ってる先はこんな感じなので、今後どうすべきか考えておきましょうねー』的な。もしくはドキュメンタリー。

『ファーザー』のアンソニーホプキンスは一人称目線だったけど、今回は二人称・三人称目線。世界的に問題になってる“老老介護”が他人事ではない人は一度は観ておくべき。目を背けられない現実がそこにはあるし、自分とは無関係とは言ってられない話。

初めの方で昔の記憶が時間の経過とともに曖昧になることについての説明がされていて、なるほど納得してしまった。
起きた事象自体は(当然ながら)変わらないけど、それを描写する自分自身が成長する事で描写の仕方が変わるから最初に経験した時と時間が経過してからとでは変化してしまい、だんだんと曖昧になっていく、というもの。
昔のことをハッキリと覚えていないのは老化現象なのかと思っていたからこの説明にはなんだか救われた✨(逆にいつまでも鮮明に覚えている人は……成長してないってこと⁉️😅)
ただし、『トラウマ記憶は除く』ってやはりトラウマになるほどのインパクトの事象は多かれ少なかれ脳にも精神にもダメージを与えるって事なのね…こわいこわい。

とにかく観たうえで強く強く感じたのは、人間死ぬ時は何も持っていけないんだからモノに執着するのはやめよー、でした。
断捨離します。

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らまんば

4.0人生は夢の中の夢 =映画の中の映画

2023年12月8日
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老いるのがすごく怖くなった。という意味で、へたなホラー映画よりずっとホラー。最後まで見てもまったく救われない。
唯一無二のフィルモグラフィーを築いている鬼才ギャスパー・ノエ監督らしい画面二分割。たまに両者の動作が一致することもあれば、実際の距離を超えてまるで相手を見ていたり、その逆も然り背中を向け合っているように見えたりもする。また、同一カット内で突然瞬きのように黒コマがインサートされる瞬間があったが、それが徐々に片方の画面だけで起こるようになって、まるで両者の間を隔て断絶する黒い線のように、心の距離のスレ違いや歩みの速さ、過ごす時間の一致していかないさまを表現しているようだった。そうした2画面ならではの対比や表現が画作りやクロスカッティングばりに生きていた、と思う(ex. ドラッグとドラッグ)。
正直、見るのがツラかったが、不思議と見ているときは画面から目が離せなくなるように見ていた自分もいた。

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とぽとぽ

3.5テラスで一緒に食事していた時は幸せそうだったのに

2023年12月8日
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夫が愛人の方を向いていたのを容認しているようで、そうではなかった
認知症って別人格が出てくるって言うけど、実は寂しさとか憎しみとか本音が出てくる

監督がハネケの愛アムールを見た翌年、アルツハイマーのお母様が亡くなったらしい

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