「今しかできない物語」名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン) 笹本さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 今しかできない物語

2025年12月4日
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鑑賞方法:映画館

名探偵コナンは長期連載となりました。連載が長期化したことで、初期の設定と多くの齟齬が生じています。何せ新一が失踪してから作中でまだ半年しか経っていませんからね。ファンは細かい矛盾に仕方ないな、と目を瞑り、あるいはツッコんでネタにし、楽しんできました。そんなファンたちは、この映画を観て思ったのではないでしょうか。「今だからできることもこんなに増えていたんだな」と。黒の組織の内情。新一ではないコナンと蘭との関係性。この映画には、初期のコナンではできなかった、今だからある楽しさが贅沢に盛り込まれています。

また、今回のメインである、灰原哀。彼女の成長と恋心も、初期では描けなかったであろう深度で観られます。彼女の魅力は何かと言われれば、(酷い言い様ですが)負けヒロインであることと答えます。コナンに恋しながらも、自分が新一と蘭を割いた一因であることを理解している為、決してそれを口にすることはない。言わば絶対に報われない切なさ、いじらしさが、彼女の魅力です。この描き方が非常に上手でした。灰原ファンは絶対に観ましょう。

笹本