「新しい香港映画の波の可能性」香港の流れ者たち 和田隆さんの映画レビュー(感想・評価)
新しい香港映画の波の可能性
主演はジョニー・トー監督作品などで知られる実力派俳優のフランシス・ン。トー作品で颯爽と銃を放つ裏社会の男を演じていた彼が、本作では薬物中毒のホームレスの人生の悲哀を表現し新境地を切り開いています。また、1990年代に活躍したロレッタ・リーが本作でカムバックし、チョウ・ユンファ主演「風の輝く朝に」などの作品で知られるセシリア・イップも特別出演するなど、香港映画を代表する俳優たちが集結しているのも胸アツ。さらに「燈火(ネオン)は消えず」などの話題作への出演が続くセシリア・チョイや、ウィル・オー、チュー・パクホンなど、若手俳優たちの演技も新鮮で、新世代の可能性を感じます。
「香港の流れ者たち」は実際のホームレス荷物強制撤去事件から、香港の片隅で生きる人々に光を当てた意欲作です。再開発の陰で追いやられるホームレス“流れ者”たちの排除問題を軸に、移民問題や薬物に蝕まれる貧困層など、様々な問題を浮き彫りにし、人間の尊厳やお互いを思いやる心について問いかけています。
フランシスやロレッタがホームレスを演じていることで、かつて隆盛を誇っていた香港映画の斜陽と重ねて見てしまうのは私だけではないでしょう。新しい香港映画がどこへ向かおうとしているのかを指し示している1本です。
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