「日本エンタメの歴史がうかがえる」ゴジラ-1.0 ミカさんの映画レビュー(感想・評価)
日本エンタメの歴史がうかがえる
なんと生誕70年!日本でここまでゴジラが愛されるのは、戦後の日本人の魂がゴジラと共に歩いてきたからではないでしょうか。核の象徴で作られたゴジラ。戦争で生き残った当時の制作スタッフのトラウマは、戦後生まれの私のDNAにもそして本作の制作スタッフにも深く刻まれていると感じました。
特効隊で死ぬよりも生きる方法を模索した本作のラスト。反戦を感じました。戦争で死ぬことを美しく描く作品が出てきて久しいですが、私は大嫌いです。やはり、人は戦争で死んではいけないし生きなくてはいけないのです。初代制作スタッフも現在の制作スタッフもその思いは一緒なんですよね。
私はゴジラは《シンゴジラ》しか鑑賞したことがないですし怪獣作品も全く観ませんが、本作に感じたシンパシーはこういうところだと思います。
先の大戦で日本軍は部隊の全滅を玉砕と美化しだしたころから、国のために死ぬということに歯止めがかからなくなったような気がします。アッツ島での玉砕を皮切りにいたるところで玉砕が生じました。本来戦力の差は歴然で米軍は投降を呼びかけますが聞く耳を持たないのです。当時の日本兵は捕虜の扱いについても教わっておらず、戦陣訓の文言を信じて死ぬまで戦いました。だから一人も生き残らない。そんな全滅状態を玉砕と言って新聞ももてはやし、特攻、そして一億総玉砕寸前というところまで追い詰められたんだと思います。
もし原爆投下がなかったら降伏もなく本土決戦まで行って沖縄のようになっていたのかもしれません。原爆を肯定するわけではありませんが。いかに当時の大日本帝国が狂っていたのかがよくわかります。
おっしゃる通り戦争で死ぬことを美化するような作品は玉砕という言葉と同じで私も大嫌いです。
そしてアメリカの対中戦略に利用されて南西諸島の島々を要塞化してる今の政府を見ていても同じく愚かだと思います。
僭越ながら「人間の境界」と「ミッシング」は素晴らしい作品でした。お時間あれば是非。