「現在にも警鐘を鳴らす日本の為の反戦映画」ゴジラ-1.0 平成モンド兄弟さんの映画レビュー(感想・評価)
現在にも警鐘を鳴らす日本の為の反戦映画
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山崎貴監督作である「アルキメデスの大戦」での冒頭に描かれた、戦艦大和の戦闘場面、対空砲で米軍機を撃ち落とし喜ぶ若い日本兵が、その機体からパラシュートで脱出して、海に着水したパイロットを、直ぐに味方の飛行艇が着て救出していく様子を、啞然と見ているシーンが出てくる。
決して、本編とは関係のないシーンだが、この「ゴジラ−1.0」で回収される伏線だったのかもしれない。
ゴジラとの決戦を前に、兵士の生命を粗末に扱ってきた旧日本軍を否定し、生きるための戦いを宣言する吉岡秀隆。特攻から逃げた過去と愛する者を奪ったものへ、死を持って決着をつけようとする神木隆之介に、生きろと伝える青木崇高。
無能な国家指導者による、無謀な戦争ではなく、自分たちと自分の大切な人たちが生き抜く為に、目前の脅威に立ち向かおうとする姿には、感動させられた。
「シン・ゴジラ」が政治家をトップに官僚たちなど国家権力に携わる者が戦ったのに対し、今回は民間人たちでゴジラに戦いを挑む設定は、フランスからの撤退に多くの民間人が協力した、ダンケルクを彷彿とさせる。
そして、ラストの神木隆之介とゴジラの一騎打ちに、あの「アルキメデスの大戦」の冒頭シーンが回収される。
殊更、過去の対米戦争を正当化し、権力の側に媚びる昨今の風潮をも否定する、日本人による日本の為の反戦映画であり、やはりゴジラは、逆説的な反戦、反核兵器の絶対的なアイコンなのだと確信させられる作品だった。
それでいて、VFX技術の凄まじい進歩によって、最もリアルな生物としてのゴジラを見れる作品でもある。
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