「これはゴジラ映画か?」ゴジラ-1.0 底冷え冬太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
これはゴジラ映画か?
まず最初に断っておくと、おそらく自分はターゲット層ではなかったのだろうな、と漠然と感じているところです。
以下、感想。
あまりにも「シン・ゴジラ」に引っ張られすぎている。
監督がゴジラを撮るにあたって、過去作品が好きなのは構わないが、あまりにも直近の作品と類似してしまうのはどうなのか、とは思う。
そも、山崎貴監督作品が苦手だとという前提もここに添えておく。
今回のゴジラは「ゴジ泣き」なるワードを推しているようだが、根っからの天邪鬼なもので他人に「泣きなさい」と示されることが滅法嫌いで、映画においては自然発生的に泣きたい面倒くさい思いがある。
その点、泣けなかった。
(というか、ゴジラと感動は最も程遠い場所に位置してそうな気がするのだが……。)
正しくは、泣けそうなシーンは多々あるのだが、その度に山崎貴監督の(余計な)シナリオが水を差してきて、涙が引っ込んでしまうのだ。
シーンごとの落差が大きく、感情の分断がすごい。
海溝よりも深く深く分断されてしまう。
例えば、もうラストシーンだが、敷島と坊主が港に戻ってきて熱い抱擁を交わすシーン。
あそこは良かった。
ウルッと涙腺が緩んだ瞬間、果たして作中におけるネームドキャラクターとして存在する意味が薄い安藤サクラ扮する澄子が登場し、典子が生きていることを伝えにくる。
あ、うーん。
涙ひっこんじゃう。
さらに遡って、銀座で典子がゴジラに襲われるシーン。
さながらSASUKEのごとく一人電車に取り残され、絶対絶命、さあどうなる……!?
いや……あの……
そ う は な ら ん や ろ。
そしてその直前のシーンで「自分は絶対に生きなければならない」と言いながら、ゴジラに接敵した後は生きる方策をとっているように見えない。
(あまりにも巨大な存在に価値観を打ち砕かれたとも見えるが)
熱光線のシーンは敷島がどうにか助かっている点から、もっとこう、やりようがあったでしょ!? となる。
さらに、敷島の「自分の戦争が終わってない」という言葉、それは確かにそうだろうが、だからと言って、じゃあ何をしているのか。
キャラクターの言動や行動理念が理解できない瞬間がある。
だから、話が入ってこない。
さらに、安藤サクラや佐々木蔵之介といった錚々たるメンツではあるが、こと今回のゴジラにおいては異物にしかならなかった。
安藤サクラ扮する澄子は、戦争で子供を亡くしてしまい、アキコを育てる手助けをする口は悪いが心は優しい隣人だが、どうにも台詞回しがいちいち奇妙。
「バッド・ランズ」ではその軽妙な口調はひどく堂に入っており凄みを感じたが、今作の背景美術の中でその演技をすると、如何ともしがたく異物感が生まれる。
また、佐々木蔵之介。
こちらは、最後まで「どのポジションの誰」なのかわからない。
ちょいちょい名台詞っぽくカッコ良さそうなことを言うが、あまりにも唐突なのと演技演技しすぎているせいで、頭に入ってこないのだ。
こちらも安藤サクラと同じように演技が絶妙に軽い。現代劇なら良かろうが、元軍人然とした人たちに混じって飄々とした態度と口調で存在しているので、それもまた違和感を得てしまう。
この二人は役者ありきで役があるような、そんな邪推が立ってしまう。
例えそうでなくても、そう思ってしまって作品を観る邪魔になるのだ。
結局、ゴジラに余計な朝ドラのような脚本は要らない。
戦争(終戦)を描きたいのか、ゴジラを描きたいのか、朝ドラがしたいのか、全てが片手落ちのように思えてしまい、せっかくの良いシーンが全部勿体無い出来になってしまった。
最後に、色々書いたが良かったシーンは以下。
ゴジラの全部。
ゴジラ登場から戦闘、それら全ては格好良く絶望的なまでに強く、とてもよかった。
お決まりのBGMは映画音響で最高の出来だし、テンションぶち上がる。
戦艦高雄との海上ファイトなんて二度と見られないであろう画作りで、これまた素晴らしい出来映え。
だからこそ、本当に惜しい。
悪くない。
悪くないのだが……。
自分が求めていた「終戦直後の復興に向かっている日本にやってきたゴジラの映画」とは違うものが作られたな、というどうしようもなくなった感想はこれにて終わる。
結論、これはゴジラ映画ではない。
「神木隆之介・浜辺美波のW主演映画」でしかないのだ。
ほんのちょっとのスパイスとしてゴジラを添えて。
あと、これで本当に最後にするが、山崎貴監督作品の演技指導というか、演技の作り方が苦手。
いわゆる「自然な会話」を好まない監督なのだろうな、と思う。
常に「演技している感じ」を求めて、「大仰さ・わざとらしさこそ最良」とする作品作りに終始している気がする。
(今回でいえば「これからの時代、お前たちに託すぞ」的なセリフ。何コレ?)
うーん、苦手だ。
ドラマパートのご都合主義に唖然としました。ストーリーに全く説得力がなく途中から見る気が失せてしまいました。
ゴジラが熱線吐くところは良かっただけに、、、脚本は専門家に書いて貰った方が良いのではないでしょうか。