「どの観点で見るかによって評価は割れるかな…(評価でネタバレを含みうるので注意)」レッドシューズ yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
どの観点で見るかによって評価は割れるかな…(評価でネタバレを含みうるので注意)
今年61本目(合計713本目/今月(2023年2月度)27本目)。
ときどき放映される、ボクシングをテーマにした映画です。
もっともボクシング「だけ」をテーマにした映画というのは少なく、その背景にあるものをセットに描くことが多いですが、こちらは「親権の在り方」や「シングルマザーゆえの経済的弱者の救済の在り方」などが背景として見られます。
もっぱらボクシング映画と見る向きもあると思いますが、個人的には背景にあるもの、つまり、この映画では親権の論点やシングルマザーの論点、あるいは、映画内でも示されている「お金さえ払えば何でもできるんだ」というような人に対するメッセージ(例の介護施設の話のところ)等も論点に入っているのだろうと思います。
どうしても法律系資格の資格持ちなので気になる点はいくつかあります。
評価は以下の通りで、4.4を4.5まで切り上げています。
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(減点0.2/介護施設での一幕の部分)
・ あの描写のレベルでは、民法上も刑法上も正当防衛が成立しますから、あのような展開にはなりません(むしろ、暴力を振るわれたとして訴えることすら可能。もっとも、老人を被告に民事訴訟を起こしたところで「まともに」裁判が進むかも微妙ですが…)。
したがってそのあとの展開もそれにつられて変になっていますが、この部分はそうしないと映画のストーリーが成立しないのでやむを得ないというところです。
(減点0.1/弁当屋?惣菜屋?のトラブル)
・ 即時解雇は非常に重い処分になるので、相手方に告知弁解の機会が必要というのが一般的な考え方です(これを欠くと、解雇そのものが無効と判断されてしまいます)。映画内の描写は適切ではないように思えます(ただこれもストーリーの展開…)。
(減点0.3/親権のお話)
・ これは「監護者指定審判事件」と呼ばれるものですが、この決定に対しては即時抗告が可能です(家事事件手続法)。
映画の描写を見ていると弁護士の方が写っていることはわかりますが、即時抗告をしたような雰囲気は見当たらず…。
なお、審判ですから(裁判ではない)、憲法が定める「公開裁判の原則」は適用「されず」、非公開になります(このように親権を争ったり、離婚の有効無効を争うようなプライバシーが強いものは非公開が原則で、当事者以外誰も入れません)。