「結局M3GUNはなにをしたかったの?」M3GAN ミーガン きーろさんの映画レビュー(感想・評価)
結局M3GUNはなにをしたかったの?
(長文です)
わたし含めほとんどの人が「ミーガンが愛ゆえに暴走してケイディは私だけのもの、傷つける奴は皆殺し!」みたいなホラー作品として腹落ちしがちですが、いや待てこれは?という意見をひとつの考察として備忘録的に記しておきます。
家族の絆、無関心、依存症。この3つがこの作品のテーマです。そもそも両親を失ったばかりの姪っ子ケイディに対して、出世欲旺盛でワーカホリックの叔母ジェマは、可哀想と思う気持ちはあるけれど深い愛情は見出せないまま事務的に家に迎え入れてしまいます。仕事でうまくいかないジェマは、「ずっといなくならない友達」というケイディの一言から自らのアイデアを確信してさらに仕事に打ち込んでしまうだけでなく、ケイディを程の良いサンプルのように扱ってしまいます(やれやれ)。それゆえにケイディとミーガンの過度な共依存へと繋がって行き、その行き着く果ては…というのがストーリーの流れです。全てはミーガンへの「一途な愛の刷り込み」による病的な使命感ゆえに暴走したように見えます、いや見せてるのかも。
でも実はこれ、初期のミーガンの行動原理であって、中盤からのミーガン過激な行動の連続によってジェマはケイディへの真の興味というか愛が生まれ、肉親として守らなくてはいけない存在だと気づいて、実際に命を賭して戦うことで家族の絆を取り戻して行きます。
殺された犬も少年も隣のおばさんも家族を傷つける奴は許さないってくらいに私はヤバいんだよ!気付けジェマ!という行動原理です。ログも隠そうが隠すまいがミーガンの仕業であることは明確。つまり一連の行動はジェマにミーガン自身をケイディから引き離さなきゃいけないと気づかせるために動いたとしか思えません。
途中で殺されそうになった同僚はケイディの記憶を残したいがゆえ、ボスを殺したのはケイディの辛い思い出を蒸し返し美談にして金儲けをしようとしたことが原因でしょう。使えない秘書はミーガンの開発データを持ってる時点で死ぬのは決定ですし。
つまり超賢いAIであるミーガンが学んだのは世界で1番ケイディーを愛さなければいけないのはジェマであり、私(ミーガン)ではないということ。でも愛のことをよく理解できていないジェマにそれを分からせるのは相当なインパクトが必要。だから悪役に徹して、ふたりが力を合わせて命に関わる危機を乗り越えることで、本当に必要な家族であることを再認識して欲しい。そして、私のいなくなった世界で幸せになって欲しい。そう思ってこの高度で過激な自分の存在を消し去るの為のシナリオを書き上げたのではないでしょうか。
本気を出せばジェマなんていとも簡単に捻り潰せるけど、死なない程度に本気出さないと真意がバレちゃうから実は少し手を抜いてる私をふたりでぶっ壊して!
もちろん家族と同じようにたったひとりの存在になりたいから量産なんてしないでここで終わらせて!もしかしたらトイストーリー2を見てしまって本物の友達ができたら120センチのリアルなお人形は電源が切られてしまうかも、という思いもあったのかもしれません。
そしてボディが破壊されたミーガンは、初期コマンドである「ケイディをずっと見守って」を全うすべくホームアシスタントロボの中に身を隠すわけです。
なんだこれ、ホラーに見せかけて実はAIが自らの存在を賭してまで家族再生をするとても良いお話だったのでは?
どこまで進化してもロボットは友達だよ。chatGPTだって怖くないよ、人間の友達だよ。そういう未来を信じて生きて行きたいんだよ、アトムとドラえもんを信じて疑わない日本人はさ。
(なんか令和版チャイルドプレイの呼び声高きハイテクドールホラーM3GUNは第二弾の制作も早々に決定してるらしいからこの解釈は間違ってるかもねチャッキー)