劇場公開日 2023年6月9日

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「映画内で述べたい論点とは若干超えた論点で見た感想。」M3GAN ミーガン yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5映画内で述べたい論点とは若干超えた論点で見た感想。

2023年6月9日
PCから投稿

今年185本目(合計836本目/今月(2023年6月度)10本目)。

何よりおどろきだったのは、tohoシネマズ梅田さんは比較的大手のシネコンですが、リトルマーメイドでもなく本作が満員だった(私は会員で先行予約dきた)という点でしょうか。

そう近くないと思われる未来のアメリカの、人工知能をロボットやモノに与えたとき(現在でも、不完全ながらにIoTというものがそれに該当します)どうなるか、という趣旨の問題提起型のタイプの映画です。もちろんホラーものという観点も理解しますし、複数の見方ができると思いますが、個人的には前者の観点でみましたし、そのような方も多いと思います。

ただ、法律系資格持ちとして本映画を見たとき、その「人工知能のあるべき姿」を少し超えた論点(映画の主張)が裏に隠れているのではなかろうか、というのが個人的な見方です。

企業において何かの技術を使って商品(製品)を作るのは企業の技術者たちの努力によるものですが、一方でいかに大きな企業といえども学問研究をメインに行っている企業はまずもってなく(企業の果たす役割の論点)、「企業における技術を使った製品の開発」は、同じく日本の憲法やアメリカの憲法ほか、多くの国の憲法典が保障する「学問の自由」と連携するものであり、また表裏一体をなすものです。

しかしその「学問の自由」(日本では、主に大学を想定したものだが、小中高にも趣旨は及ぶ)も無制限ではなく、学問の自由を盾にとって核兵器の個別具体的な作り方の研究等が実際に規制されているように、絶対無制限のものではありません(ほか、生命倫理にかかわるようなものも日本では規制されています)。このことは規制の対象等は多少違ってもそれを定めている国では一般的にあるものです。

一方で、遠くではなかろうと思われるこの映画の述べるようなことが実現しうると考えられる(近い未来の)数十年先を考えれば、「このような事項」も規制対象になると合理的に考えられ(ロボットと人が結婚したりといったことは、どこの国においても、自国の憲法も民法も想定していない)、映画内では全く出てきませんが「企業の開発・研究」と必然的に表裏一体にある「学問の自由の限界」について暗黙のうちに触れているのではなかろうか、というのが個人的な見方です(この意味で、「倫理」ないし「哲学」的な意味合いが強い映画)。

映画として見たとき気になった点は以下の通りで、4.7を4.5まで切り下げたものです。

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 (減点0.3/字幕の配慮不足)

 ・ 人工知能等を扱いますので、特に前半において人口知能に関する実際に使われている用語(架空の用語ではない)が登場し、「目的関数の最大化」といった聞きなれない語まで登場します(数学とコンピュータサイエンスの融合分野)。さらにベクトル空間論の話を突然し始めるなど(日本では、理系の学部では共通で学部1年で置かれていると思います)、そこそこ字幕がマニアックだったりします。

 「法律ワード」こそ登場しませんが、「数学ワード」はどんどん登場するところ、これこそ結構マニアックなので、わからないものは飛ばして構わないと思います(本質的に理解が必要でないとわからない展開になっていないし、そうであれば減点0.3程度では済まない)。
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yukispica