ティルのレビュー・感想・評価
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目を逸らすべきでない事実
大人になると、映画作品を観たことをきっかけで「知りたくなること」に事足りなくなります。その一つが「アフリカ系アメリカ人公民権運動」ですが、関連する作品や資料にも紹介されることのある「エメット・ティル殺害事件」については、その残忍性も相まってとても印象深い出来事の一つです。とは言え、この事件をクローズアップしたような作品は少なくとも日本で殆ど見当たらず、残念ながらこの事件自体、日本人にとってはあまり認知度が高くないのではないかと思います。
今回は日程調整が難しかったため、サービスデイの鑑賞を諦めてポイントを使い初日のシャンテへ。18:50の回でしたが正直客入りは少なかったです。確かに重い作品であり気楽に観られるものではありませんが、アメリカの歴史を考察するうえで重要な事件であり、むしろこの事件の凄みは、事件後、殺されたエメットの母であるメルミーの決意の行動こそが、当時の公民権運動に大きな影響を与え、後のBLMにおいても語られる「人間がやったことの証拠」として目を逸らすべきでない事実です。
実際、本作においてもエメットは物語の序盤でアッサリと殺害されます。語弊のある言い方に聞こえるかもしれませんが、むしろ、その尊厳のない扱いそのものを感じさせるほど唖然とする演出で、作品を観続けながらも意外に後々まで引っかかります。
そして、以降は終始メルミーの凄み押しです。メルミーを演じるダニエル・デッドワイラーについては全く存じ上げませんでしたが、これはアカデミー賞主演女優賞あるような気がするほどの「圧巻の演技」だと言えると思います。
はっきり言って、この事件すら知らない方に興味を持てと言っても難しいかもしれませんが、逆にこの作品をきっかけに事件を知ることで、公民権運動やBLMに対しても改めて興味が出てくるだけの影響力はあると思います。知るべきことを知れる作品です。
ブラックライブズマターの必要さ
数年前、映画「ウィンド・リバー」を見た。
ネイティブアメリカンの命が軽く扱われている現実を描いたサスペンス。
30年ほど前、「ロス暴動」の引き金になったのは、黒人を暴行した警察官たちが、無罪になったことだった。
3年ほど前、「息ができない」と訴えた男性が警察官に殺害される事件もあった。(こっちは有罪になった)
で、本作。
南部で黒人の命は軽い。
レイシストの白人にとっては、「虫けら」同然の軽さだろう。
それは「昔話」であればともかく、現代でも続いていて、そうした人種差別を公言する人物が大統領になったりする。
それだけ「白人の危機感」つまり「国が黒人に乗っ取られる」とか「黒人が大手を振ってあるく」ことへの危機感、嫌悪感が強いのだろう。
しかもそれが宗教的後ろ盾があり、「愛国心」とも言える、という特異な思想。
大昔の事件ではあるが、それが本作が今の時代に作られた意味、意義だと思う。
世界を動かした愛の物語
ボブ・ディランの曲にもある『エメット・ティルの死』を取り扱った映画
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