ティルのレビュー・感想・評価
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【"僕は綺麗な白人女性に口笛を吹いただけなのに。”1955年の夏、アメリカ南部の黒人蔑視の風潮を理解していないシカゴから来た少年の身に起きた事。少年の母の毅然とした態度・行動が沁みる作品。】
■エメットは1955年の夏休みに、ミシシッピ州の叔父の家を一人訪ねる。彼は初めての南部の生活を楽しんでいたが、当時のアメリカ南部で黒人が白人に対してしてはいけない事を何気なくしてしまう。
◆感想
・序盤はエメットが少しお調子者だが、そんな彼を愛する母メイミー(ダニエル・デッドワイラー)の姿が描かれるが、その後の展開がフライヤーなどに記載されているので、憂鬱な気分で鑑賞する。
・エメットがミシシッピ州の叔父夫婦の家に行き、小作人である彼らと共に綿花を収獲するシーンも、エメットが南部の人種差別の事をキチンと理解していない事が伺える。
■エメットは叔父の子供達と、ブライアント食料品店に行き、中を興味深げに見まわしながらレジに立っていたブライアント・キャロライン(ヘイリー・ベネット:素敵な女優さんなのに、役に恵まれないなあ。)の顔を見て、”映画女優さんみたいですね。”と言い自分の財布に入っている白人女優の写真を見せる。
そして、店を去る時にエメットはキャロラインの顔を見て”口笛”を吹いてしまうのである。
ー 当時のアメリカ南部では白人にとって黒人から口笛を吹かれるというのは侮蔑されたと捉えられてしまう行為なのである。
(現代でも、口笛は揶揄の表現と捉えられる事がある。)ー
慌てて逃げる叔父の子供達。何が起こったのか分からないエメットの困惑の表情。
そして、翌晩にキャロラインの夫ブライアントと仲間のマイラムが叔父の家に銃を持って押し入り、エメットを連れ去ってしまうのである。
・行方不明になったエメットの身を案じるメイミー。だが、そこにエメットの訃報が入り彼女は失神する。
■だが、そこからメイミーの息子及び全ての黒人たちの尊厳を取り戻す行動が始まるのである。彼女はNAACP(全米有色人種地位向上協議会)の支援の中、ミシシッピ州に乗り込み変わり果てたエメットの遺骸と対面し、足の先から膝と指でなぞって行き、最後は銃弾を撃ち込まれた頭部にキスをするのである。
更に、メイミーはエメットをミシシッピ州で埋葬する事を拒否し、シカゴに運ばせ正装させて、”敢えて”息子の顔が見えるように棺桶の顔の部分の蓋を開け、弔問者に見せるのである。
ー 物凄い胆力であるし、勇気のいる行動である。今作では、母親の強さをダニエル・デッドワイラーが、見事に演じていると思う。ー
・ミシシッピ州で行われた、”限りなく白い裁判”で、キャロラインが行った嘘の証言を聞いている途中でメイミーは憤然として席を立つ。
そして、大勢の黒人たちの前で言い放った彼女の言葉は、値千金である。
何故ならそれが、公民権運動を推し進めるきっかけになったからである。
<エンドロールでテロップで流れた事実には、猛烈に腹が立つ。ナント数年後にブライアントと仲間のマイラムが雑誌のインタビューに応じ、エメット殺害を認めインタビューの報酬として多額の謝礼を貰い、生涯安穏と暮らしたと流れるテロップである。1955年当時のアメリカの司法制度は、メイミーが言う通り、人種差別に寛容だった瑕疵ある制度であることが良く分かる。
だが、僅かなる救いは、皮肉じみたトーンでテロップで流れる2022年に「エメット・ティル反リンチ法」が成立したことであろうか。事件から60年以上も後に・・。>
正義と自由とは…
1955年、黒人差別が特に酷いアメリカ南部地域にて、親戚宅に出かけた14歳の少年が理不尽に殺害されてしまい、苦難と逆境に立たされつつも闘う母親の物語。
14歳のティルは、南部地域での差別事情を解っておらず、白人女性に冷やかしの口笛を吹いてしまい…。
それにしても哀しい現実ですね。
只でさえ、一人息子が亡くなり哀しみの底にいるというのに…。
それでも、この現実を伝えるために立ち上がることを選んだ母親。にもかかわらず彼女に向けられる言葉や目線。絶望が二重にも三重にものしかかってくる展開は見ていて辛い。
被害者でありながら、正義を貫きに行くのにも危険がともなうなんて。おばあちゃんの気持ちもわかりますよね。
法定もまた…。思わずハァ?と声が出てしまいそうになるほど、加害者が守られる空気には怒りがこみ上げる。そしてこの猿芝居。あんたも人の親だろ…。
この時代程でないにせよ、未だに問題は残っているし、自由や正義を声高に叫ぶ国ならば、本当の正義を国全体で貫き通して欲しい、そう願わずにいられない作品だった。
自分には少しドラマチック過ぎたかな
大好きでもあるけど大嫌いな1950年代。
アメリカングラフィティなどで描かれた、華やかな1950年代アメリカが大好きで、白人文化に影響を受けてきたけど、大嫌いな面もあるのです。それは白人による黒人の人権分離が合法だった最悪の時代だから。1964年公民権法制定までの間、とてつもない迫害を受けてきた黒人たちのことは、グリーンブックなどさまざまな映画でも描かれてきました。
1955年、白人女性に口笛を吹いただけで拉致され、リンチ殺人をうけた黒人少年。エメット・ティル殺害事件が映画化されたと聞いて、かなり観るのに躊躇ったけど、うん観て良かったです。
無惨な息子の姿をあえて葬儀で公開することで、世間の注目を集める母親。公民権運動への強い原動力になりました。差別主義者の保安官に、全員白人陪審員だった絶望感など、理不尽のオンパレード。実話の強さを改めて感じます。
「天使にラブソングを」の名優ウーピー・ゴールドバーグが、企画プロデューサー兼、ヒロインの母親役です。すっかり太ってしまったけど、確かな演技はさすが。母親のメイミーを演じるダニエル・デッドワイラーの熱演は、数々の映画賞で主演女優賞を受賞。しかし2022年のオスカーはノミネートすら無しで残念。
保守とリベラルの政権が交差するアメリカでは、未だに警察官のリンチ事件などが後をたたない。そんな中、昨年やっと白人から黒人へのリンチを厳罰にする「エメット・ティル・リンチ防止法」が成立したらしい。少年が亡くなってから実に67年後なんて、僕たちには理解できるわけもない根深さを感じます。この作品は、観ておかなければいけない一本だと思います🤔
愛情と憎悪
1955年のミシシッピ州マネーでひとりの黒人の少年が、白人女性に向かって口笛を吹いたという理由だけでリンチされ殺された。
しかも殺した二人組の犯人は起訴されることもなく自由に暮らしている。
今なら誰が考えてもおかしいと思うし、許すことが出来ない行為のはずだ。
しかし今から70年前のアメリカ南部ではこのような蛮行が罷り通っていた。
正直、今年観た映画の中でも一番ショッキングで正視するのが辛かった。
ほとんどの黒人が泣き寝入りするしかない中、殺された少年エメットの母メイミーは世間に何が起こったのかを知らせるために勇気ある行動に出る。
彼女は暴行され変わり果てたエメットの顔を見えるように棺を開いて葬儀を行う。
そして死体はエメットではないと主張する犯人の弁護側に対し、母親としての強い証言をするために裁判に出る決意をする。
しかし白人のみで形成される評議会は全く公平な裁判を執り行わない。
メイミーは好奇と憎悪の目に曝され、誹謗中傷を浴びながら苦痛に耐え続ける。
そしてエメットは二度殺されたのだと悔しさを噛みしめることになる。
この映画の中では良識的な白人はひとりも登場しない。
そのことがこの時代のミシシッピ州の黒人が本当にマイノリティーな存在で、誰の助けも得られないのだという絶望的な事実を観る者に突きつける。
なぜ一人の少年が無惨な殺され方をしたのに、ヘラヘラと笑いながら被害者の母親に向かって暴言を吐くことが出来るのか。
それは当時の南部の多くの白人が、黒人を自分たちと同じ人間だと認めたくなかったからだろう。
彼らを同じ権利を持つ人間だと認めることで、自分たちの存在が脅かされることを恐れたからだろう。
結果的にメイミーが勇気を振り絞って行動したことが、後の公民権運動へと繋がっていく。
それでもエメットという少年が犠牲になってしまった事実はあまりにも悲しい。
メイミーはエメットをボボと愛称で呼ぶのだが、彼女のボボへの愛の深さが画面を通して何度も伝わってくるので、彼女が自分の悲しみの中に沈み込まずに、すべての黒人の未来のために立ち上がる姿に強く心を打たれた。
またこの映画を観て人種的憎悪が助長されないことを願った。
確かに白人が黒人に対して行ってきた差別は許されないし、「エメット・ティル反リンチ法」が2022年になって成立したことからも、未だに根強く差別が残っていることは確かだ。
しかし今はほとんどの人間がこの映画を観て、これが異常なことだったと理解することが出来る。
大切なことは二度と同じような差別による悲劇を起こさないことだ。
世界で起こっているどんな出来事も決して他人事ではないのだと強く感じさせられた。
全てにおいて憧れられる国に!
この様な差別、迫害的な実話作品は残念ながら多々ありますがこの事件から70年…
なのに今でも解消されない現状…
スポーツやエンタメの世界に憧れアメリカへ!
世界へ!と夢を抱く若人達にこそアメリカの
未来の為に過去から蔓延る陰や悪を学ぶ重要さを伝えるべき作品だと思います
この先、哀しき現状が起こらない
本当の意味で世界中の人たちから憧れられる国になる事を願います
殺された息子の母親役ダニエル・デッドワイラー…彼女の怒りと哀しみ、気高く社会と闘う姿リアル過ぎる圧巻の演技に更に胸が痛くなりました…
加害者の妻役のヘイリー・ベネット
憎らしさが止まらないほど不快にさせてくれる
ベイビー・フェイスなシレッとした演技も中々の物でした
孫を南部に行かせてしまった事を後悔する
祖母を演じたウーピー・ゴールドバーグ
制作にも携わった彼女の強い想いと意義を
知る為にも、何かと忙しないこの時期にこそ
劇場で向き合って観ていただきたい貴重な作品です!
差別について
主人公メイミーの装いが非常にセンスが良く上質で、空軍ってこの時代の黒人女性でもそんなに給料が高いのか?と気になった。
公民権運動の前の時代の実際の黒人差別事件を真正面から描いていて、日本に住む日本人にはそれ以上のものはあまり感じられないと思うのだが、差別については考えた。
今の日本に差別は少ないというのは表面的な見方で実際には差別と戦ったり苦しんだりしている人は多いのだと思うが、それでも昔よりは減ってきている。女性差別なんかは分かりやすく、昔はある程度は許容されていたことが、今は許されなくなっている。教育というのが如何に大事か、どうすれば上手く行くのか、と考えさせられた。
思ったことをつらつらと
同じ黒人映画のグリーンブックが牧歌的に思えるぐらい当時の黒人差別の酷さ、命の軽さを見た。
事前学習ゼロで見に行ったらフィクションだった。。
「些細な理由で殺される」ことの理不尽さや抗うと全てを敵にまわすことになる
コミュニティで生きることの生きにくさ。
誰かを守るということは自分や自分の家族にも危害が及ぶ。
しかも危害を及ぼす相手が当事者ではなく社会の全てとなれば差別があることを
受け入れてそれでいていかに摩擦を起こさないように穏やかに暮らす(暮らそう)
って間違っている。
戦死するときはアメリカ国民なのにアメリカ国内じゃ黒人なんだよなっていうのは
やっぱり間違っている。
公判も公判内容以前に入廷するとこからすでに差別的であるけど
人は信じたいものを真実であると信じる
あるいは偽りであるとわかっていても信じている(誘導する)
いけしゃあしゃあとよくも嘘とつけるものだと。
50年代の内装や建物や車や服装など生活様式がクラシカルだけどかっこいい
論評など、できない。
他の黒人差別や法廷問題についての作品との違い
85点ぐらい。観るべき。
過酷な時代背景
事前にエメットティル事件の概要をwikiで見てから鑑賞。差別問題は今でも世界中で起こっているが当時のアメリカ南部における黒人差別は歴史的な背景も影響して過酷な状況であったと推測されます。日本でも古来から差別問題は存在しており、出自、外見、学歴、性的嗜好等々、多くの差別が今でも潜在的に存在していると思います。本作に関しては映画より事実の方が残酷であったようです。このような作品を通じて差別的な風潮の馬鹿らしさが無くなると良いですね。
食品雑貨店店主、ロイ・ブライアントの妻キャロライン・ブライアント(21歳)に口笛を吹いたと、ロイと兄弟J. W. ミランから因縁をつけられた。二人は、後日ティルの大叔父の家からティルを無理やり連れ出し、納屋に連れ込んでリンチを加え、目玉を一個えぐりだした。その後銃で頭を撃ち抜き、有刺鉄線で70-ポンド (32 kg)の回転式綿搾り機を首に縛りつけて重りにし、死体をタラハシー川に捨てた。ティルの死体は3日後に川から発見され、引き揚げられた。
母は強し
母の深い深い愛
かなり重い作品です
こういうテーマの作品を何作も観ていますが、今作も本当にひどい差別が描かれていました
14才というまだ中学生の男の子に
今はというか、日本では想像もできない事です
最初息子を心配するメイミーが過保護のようにも思いましたが、それくらい心配するのが当然のような社会だったのでしょう
平等な世界を実現させるために多くの方々の命懸けの努力の積み重ねで今のようになったのですが、そのための犠牲が大きすぎます
エンドクレジット前の説明でメイミーの努力が報われたようにも思えますが、あまりに時間が掛かりすぎた事や完璧ではない正義、それでも息子は帰ってこない事に虚しさも感じました
変わり果てた息子との対面、裁判での証言、ラストのスピーチ、涙がポロポロでした
その息子との対面のシーン、最初泣いていたメイミーが泣くのをやめて戦いを決意したのが伝わってきました
平等な社会のためにというよりは、息子への愛から始まったメイミーの戦い
だんだんと差別のない社会に進んでいっているアメリカだけど、過去の悲しすぎる出来事があっての今と思うと本当に悲しくなります
ストーリーとは全然関係ないけど、あの頃のワンピース、手袋、帽子、イヤリングのコーディネート、どれもステキでした
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