ティルのレビュー・感想・評価
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大好きでもあるけど大嫌いな1950年代。
アメリカングラフィティなどで描かれた、華やかな1950年代アメリカが大好きで、白人文化に影響を受けてきたけど、大嫌いな面もあるのです。それは白人による黒人の人権分離が合法だった最悪の時代だから。1964年公民権法制定までの間、とてつもない迫害を受けてきた黒人たちのことは、グリーンブックなどさまざまな映画でも描かれてきました。
1955年、白人女性に口笛を吹いただけで拉致され、リンチ殺人をうけた黒人少年。エメット・ティル殺害事件が映画化されたと聞いて、かなり観るのに躊躇ったけど、うん観て良かったです。
無惨な息子の姿をあえて葬儀で公開することで、世間の注目を集める母親。公民権運動への強い原動力になりました。差別主義者の保安官に、全員白人陪審員だった絶望感など、理不尽のオンパレード。実話の強さを改めて感じます。
「天使にラブソングを」の名優ウーピー・ゴールドバーグが、企画プロデューサー兼、ヒロインの母親役です。すっかり太ってしまったけど、確かな演技はさすが。母親のメイミーを演じるダニエル・デッドワイラーの熱演は、数々の映画賞で主演女優賞を受賞。しかし2022年のオスカーはノミネートすら無しで残念。
保守とリベラルの政権が交差するアメリカでは、未だに警察官のリンチ事件などが後をたたない。そんな中、昨年やっと白人から黒人へのリンチを厳罰にする「エメット・ティル・リンチ防止法」が成立したらしい。少年が亡くなってから実に67年後なんて、僕たちには理解できるわけもない根深さを感じます。この作品は、観ておかなければいけない一本だと思います🤔
愛情と憎悪
1955年のミシシッピ州マネーでひとりの黒人の少年が、白人女性に向かって口笛を吹いたという理由だけでリンチされ殺された。
しかも殺した二人組の犯人は起訴されることもなく自由に暮らしている。
今なら誰が考えてもおかしいと思うし、許すことが出来ない行為のはずだ。
しかし今から70年前のアメリカ南部ではこのような蛮行が罷り通っていた。
正直、今年観た映画の中でも一番ショッキングで正視するのが辛かった。
ほとんどの黒人が泣き寝入りするしかない中、殺された少年エメットの母メイミーは世間に何が起こったのかを知らせるために勇気ある行動に出る。
彼女は暴行され変わり果てたエメットの顔を見えるように棺を開いて葬儀を行う。
そして死体はエメットではないと主張する犯人の弁護側に対し、母親としての強い証言をするために裁判に出る決意をする。
しかし白人のみで形成される評議会は全く公平な裁判を執り行わない。
メイミーは好奇と憎悪の目に曝され、誹謗中傷を浴びながら苦痛に耐え続ける。
そしてエメットは二度殺されたのだと悔しさを噛みしめることになる。
この映画の中では良識的な白人はひとりも登場しない。
そのことがこの時代のミシシッピ州の黒人が本当にマイノリティーな存在で、誰の助けも得られないのだという絶望的な事実を観る者に突きつける。
なぜ一人の少年が無惨な殺され方をしたのに、ヘラヘラと笑いながら被害者の母親に向かって暴言を吐くことが出来るのか。
それは当時の南部の多くの白人が、黒人を自分たちと同じ人間だと認めたくなかったからだろう。
彼らを同じ権利を持つ人間だと認めることで、自分たちの存在が脅かされることを恐れたからだろう。
結果的にメイミーが勇気を振り絞って行動したことが、後の公民権運動へと繋がっていく。
それでもエメットという少年が犠牲になってしまった事実はあまりにも悲しい。
メイミーはエメットをボボと愛称で呼ぶのだが、彼女のボボへの愛の深さが画面を通して何度も伝わってくるので、彼女が自分の悲しみの中に沈み込まずに、すべての黒人の未来のために立ち上がる姿に強く心を打たれた。
またこの映画を観て人種的憎悪が助長されないことを願った。
確かに白人が黒人に対して行ってきた差別は許されないし、「エメット・ティル反リンチ法」が2022年になって成立したことからも、未だに根強く差別が残っていることは確かだ。
しかし今はほとんどの人間がこの映画を観て、これが異常なことだったと理解することが出来る。
大切なことは二度と同じような差別による悲劇を起こさないことだ。
世界で起こっているどんな出来事も決して他人事ではないのだと強く感じさせられた。
全てにおいて憧れられる国に!
この様な差別、迫害的な実話作品は残念ながら多々ありますがこの事件から70年…
なのに今でも解消されない現状…
スポーツやエンタメの世界に憧れアメリカへ!
世界へ!と夢を抱く若人達にこそアメリカの
未来の為に過去から蔓延る陰や悪を学ぶ重要さを伝えるべき作品だと思います
この先、哀しき現状が起こらない
本当の意味で世界中の人たちから憧れられる国になる事を願います
殺された息子の母親役ダニエル・デッドワイラー…彼女の怒りと哀しみ、気高く社会と闘う姿リアル過ぎる圧巻の演技に更に胸が痛くなりました…
加害者の妻役のヘイリー・ベネット
憎らしさが止まらないほど不快にさせてくれる
ベイビー・フェイスなシレッとした演技も中々の物でした
孫を南部に行かせてしまった事を後悔する
祖母を演じたウーピー・ゴールドバーグ
制作にも携わった彼女の強い想いと意義を
知る為にも、何かと忙しないこの時期にこそ
劇場で向き合って観ていただきたい貴重な作品です!
差別について
主人公メイミーの装いが非常にセンスが良く上質で、空軍ってこの時代の黒人女性でもそんなに給料が高いのか?と気になった。
公民権運動の前の時代の実際の黒人差別事件を真正面から描いていて、日本に住む日本人にはそれ以上のものはあまり感じられないと思うのだが、差別については考えた。
今の日本に差別は少ないというのは表面的な見方で実際には差別と戦ったり苦しんだりしている人は多いのだと思うが、それでも昔よりは減ってきている。女性差別なんかは分かりやすく、昔はある程度は許容されていたことが、今は許されなくなっている。教育というのが如何に大事か、どうすれば上手く行くのか、と考えさせられた。
思ったことをつらつらと
同じ黒人映画のグリーンブックが牧歌的に思えるぐらい当時の黒人差別の酷さ、命の軽さを見た。
事前学習ゼロで見に行ったらフィクションだった。。
「些細な理由で殺される」ことの理不尽さや抗うと全てを敵にまわすことになる
コミュニティで生きることの生きにくさ。
誰かを守るということは自分や自分の家族にも危害が及ぶ。
しかも危害を及ぼす相手が当事者ではなく社会の全てとなれば差別があることを
受け入れてそれでいていかに摩擦を起こさないように穏やかに暮らす(暮らそう)
って間違っている。
戦死するときはアメリカ国民なのにアメリカ国内じゃ黒人なんだよなっていうのは
やっぱり間違っている。
公判も公判内容以前に入廷するとこからすでに差別的であるけど
人は信じたいものを真実であると信じる
あるいは偽りであるとわかっていても信じている(誘導する)
いけしゃあしゃあとよくも嘘とつけるものだと。
50年代の内装や建物や車や服装など生活様式がクラシカルだけどかっこいい
論評など、できない。
人間には皆、自己防衛本能の裏返しとして、他者への憎悪の種があるのだと、改めて思わされた。それをコントロールできる人とできない人がいる。もちろん自分にもその種はある。
どんなに文明が進化しても争いや戦争はなくなっていない。それでも1ミリずつ融和に向かってゆこうとするのが人の歴史なのでは。
2時間以上、一瞬、誰とも集中が解けない濃密な作品でした
他の黒人差別や法廷問題についての作品との違い
本作では、当時の南部の黒人たちが北部とは酷い待遇格差の下に置かれていたことを伝えてくれるものでもある。そうした黒人待遇の南北格差を描いた作品としては、『それでも夜は明ける』『グリーンブック』が思い浮かぶ。
法廷を白人が圧倒的に支配している条件のなかで、弁護士が黒人の名誉のために奮闘した過程を描いた作品としては、『アラバマ物語』『黒い司法』がある。
そのような小さな成功に留まらず、人種差別に基づくリンチを憎悪犯罪とするための連邦法が成立するまでに長い年月を要し、典型的な犠牲となった67年前の少年の名前を冠していることを記念して、その事件をわかり易く伝えてくれる作品だということはできるであろう。
85点ぐらい。観るべき。
事実に基づく映画です。
白人女性に口笛を吹いただけで、黒人少年の身に何が起きたのか…
この映画の基になった出来事を知らない方は、
そのまま、調べないまま、あらすじ読まずに観ても、いいかもですね…
見応えタップリ、引き込まれて観ました。
観やすかったです。
痛ましい話で不謹慎だけど、
舞台が1955年のアメリカ南部で、車、ファッション、街並み、など、超オシャレ。
アメリカの50年代てホントにイカしてる。
この50年代に、黒人のブルースと白人のカントリーが合わさって生まれたのがロックなのにね…
こんな事、赦される事じゃない。
観るべき。
過酷な時代背景
事前にエメットティル事件の概要をwikiで見てから鑑賞。差別問題は今でも世界中で起こっているが当時のアメリカ南部における黒人差別は歴史的な背景も影響して過酷な状況であったと推測されます。日本でも古来から差別問題は存在しており、出自、外見、学歴、性的嗜好等々、多くの差別が今でも潜在的に存在していると思います。本作に関しては映画より事実の方が残酷であったようです。このような作品を通じて差別的な風潮の馬鹿らしさが無くなると良いですね。
食品雑貨店店主、ロイ・ブライアントの妻キャロライン・ブライアント(21歳)に口笛を吹いたと、ロイと兄弟J. W. ミランから因縁をつけられた。二人は、後日ティルの大叔父の家からティルを無理やり連れ出し、納屋に連れ込んでリンチを加え、目玉を一個えぐりだした。その後銃で頭を撃ち抜き、有刺鉄線で70-ポンド (32 kg)の回転式綿搾り機を首に縛りつけて重りにし、死体をタラハシー川に捨てた。ティルの死体は3日後に川から発見され、引き揚げられた。
母は強し
悲しい結末が想像されるなかでの前半の展開は観ていて辛かったですね。
でも最後には、本当の強さは、腕の力でもなく筆の力でもなく、何かを変えようとする勇気なんだと気付かせてもらいました。
その後、事件発生時になすすべをなくしていた牧師を母親が責められる機会がもてていた場面があったのは、観ていて救いのように感じました。
アメリカだけでなく、いまだ悲しいニュースを聞くことがありますが、子どもに対して「小さくなってなさい」なんて教育しないといけない環境が変わるため、努力を続けないといけないということかと考えさせられました。
事実より相当ソフトな映像表現。
それでも胸が痛む。
50年以上前にディランのLPに入っていた実話。
残念ながら母親の全歯ホワイトニングが気になってイマイチ没入出来なかったな。
母の深い深い愛
かなり重い作品です
こういうテーマの作品を何作も観ていますが、今作も本当にひどい差別が描かれていました
14才というまだ中学生の男の子に
今はというか、日本では想像もできない事です
最初息子を心配するメイミーが過保護のようにも思いましたが、それくらい心配するのが当然のような社会だったのでしょう
平等な世界を実現させるために多くの方々の命懸けの努力の積み重ねで今のようになったのですが、そのための犠牲が大きすぎます
エンドクレジット前の説明でメイミーの努力が報われたようにも思えますが、あまりに時間が掛かりすぎた事や完璧ではない正義、それでも息子は帰ってこない事に虚しさも感じました
変わり果てた息子との対面、裁判での証言、ラストのスピーチ、涙がポロポロでした
その息子との対面のシーン、最初泣いていたメイミーが泣くのをやめて戦いを決意したのが伝わってきました
平等な社会のためにというよりは、息子への愛から始まったメイミーの戦い
だんだんと差別のない社会に進んでいっているアメリカだけど、過去の悲しすぎる出来事があっての今と思うと本当に悲しくなります
ストーリーとは全然関係ないけど、あの頃のワンピース、手袋、帽子、イヤリングのコーディネート、どれもステキでした
綺麗な女優さん。
1955年代のアメリカって舞台が黒人に対する壮絶な差別がある事はおおよそ予想が出来たけれど、
驚きなのは其れから67年経った最近まで見過ごされてきていた事。
人種を嫌うのは自由だけど命まで奪う権利はないといつも思う。と言っても、きっと奪う側は正義だと思って害虫でもコ◉ス感覚なんだろう。
たった1人の家族を奪われた時の人の悲しみを見させて貰った、そこに信仰(多くの支え)があるからこそ彼女は立ち上がる力を主から与えられたんだろうね。
“あなたの力を私にお与え下さい。”
家族と教会に行く時に自分もいつも叔母や母に祈って貰っていた事を思い出して見ていた。
現在進行形の問題
主演のダニエル・デッドワイラーがとにかくすごかった。
ヒステリックでなく、極めて理性的に状況を学んでいき論理的な活動をする女性の姿を体現。
「こいつら(ミシシッピ州の白人ども)に、私のボーイは二度殺された」というセリフは圧巻。
映画そのものの出来もよいのですが、事実ベースの映画であり、メッセージ性からいろいろ考えさせてくれるのが良い点。
犯人が無罪判決後に雑誌へ殺害を自白しているうえ、後の世にDNA鑑定で被害者がエメット・ティル当人と判明しているのを、のちの世の観客は知っている(ググって調べればすぐわかる)ので、憤りがすごかった。
忘れそうになるけど、アメリカで公民権法成立が1964年、黒人の選挙権施行が1965年。
わずか60~70年前のこと。
最近も2014年、2020年と白人警官が黒人を窒息死させたり撃ち殺したりしながら不起訴、無罪なんてのもあって、全く過去の出来事ではなく現在進行形の問題。
差別、ヘイトによる殺人は起こさせてはいけないし、もし起きたらきちんと裁く世になって欲しい、と改めて思わせてくれる内容でした。
違う側面から観たら
なぜボボはキャサリンに対して、口笛を吹いたのか。
なぜボボはキャサリンに対して、パスケースの中の写真を見せたのか。
なぜボボはキャサリンに対して、不快感を与えるような行動を取ったのか。
言い方が不適切かもしれないが、母エイミーからボボへの教えが不充分だったように感じた。14歳であれば、ある程度の理解はできたのではないか。
エンドロールまで観て、真の結末がどうだったかを知り得たが、「人種」「人権」を考える作品だった。
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