オーバードーズ 破滅の入り口
2022年製作/119分/フランス
原題または英題:Overdose
スタッフ・キャスト
- 監督
- オリビエ・マルシャル
- 製作
- シドニー・デュマ
- 脚本
- クリストフ・ガバ
- オリビエ・マルシャル
- 撮影
- ドゥニ・ルーダン
- 音楽
- エルワン・クルモルバン
2022年製作/119分/フランス
原題または英題:Overdose
薬物の過剰摂取とその結果
この作品のタイトルでもあるが、売人たちの異常な執着を表現している。
物語の発端 「勘違い」 裏切り 代償は一家皆殺し 執拗な異常さ
入院中の子供まで殺害することを求められる。
麻薬カルテル
「なぜ?」
そこまでする理由が、CIAにあるように思う。
彼らによる裏切りと横取りこそカルテルが最も用心しているのだろう。
さて、
この作品はヨーロッパにおける麻薬捜査に加え、病院で児童が殺害された事件とがひとつになっていくのを描いている。
ただ、
日本やアメリカのようにサスペンスタッチはなく、銃撃戦はあるものの警察による護送のお粗末さという一昔前のプロットを使用している。
警察のすべてが「情報屋」を疑うことなく信じている。
情報屋の情報だけで動いている。
また、
それがフランス社会なのだろうが、どんな凶悪犯でも弁護士によって何とかなるような世界観が描かれている。
そのなかで脱走したカルテルの幹部が警官によって射殺されるシーンは、フランス社会への一撃として描かれており、多くの共感を得るのだろう。
「間が悪すぎたために事件は起きた」
麻薬捜査官サラは呟くように一連の事件を回想する。
同時にリシャールの負った怪我の功名で、彼の妻と娘が見舞いに来て仲良さそうなところを目撃する。
ほぼ離婚状態だったはず…
見舞い用の花束をベンチに置き捨て、病院を去るところでエンドロールとなる。
この間の悪さも、この作品が描きたかったことだろう。
些細なことが思い込みと決めつけになり、一家皆殺しという事件を引き起こした。
組織のひとつを壊滅に追い込んだものの、警察の被害も大きかった。
スパイ
イゴールが寝返った理由がピンとこない。
サラはその理由をリシャールに話すがピンとこない。
それを疑うことなく信じ続けているのもわからない。
また、元警官の奥さんの探偵ごっこは出来過ぎている。
しかし、組織が一般の家を強盗に押し入るように、また殺害する鬼畜さは見事だった。
ここまで物語が大きくなってしまった原因
最初に殺害された一家 息子の病気 入院手続きのために行ったフランス大使館
組織の勘違い
それを裏切り行為とみなしたカルテル
そして「破滅」
あまりにお粗末な展開
そして多くの犠牲
この天秤の不釣り合い。
2022年の作品
ヨーロッパでは未だガラケーが残っているんだと思った。
プリペイド携帯なのだろうか?
「海賊版のSIMだからわからない」という意味不明のセリフ
また、
麻薬カルテルと捜査があまりにもかっきりと主体化されているのでピンボケがない分、考える必要もないことが若干寂しい。
二人のロマンスも割と突然で、お互いの駆け引きもない分切なさも感じにくくなってしまっている。
オーバードーズ
カルテルの重要取引で最初に起きた麻薬中毒女性の死
テーマがないからこのタイトルになったように思えてならない。
物語そのものは面白かったが、テーマが欲しかった。
overdoseとは麻薬の過剰摂取のことらしい、冒頭は連続殺人の犯人探しのようだが本流は残虐非道な麻薬組織とフランス警察の攻防戦。さっさと逮捕すれば済む話を何度も取り逃がすものだから2時間もの長丁場、この手の映画でお約束の汚職警官が出てこないのは珍しいが、脚本・監督のオリビエ・マルシャルさんが元警察官出身という異色の経歴のせいかも、下ネタやヌード、セックスシーンは出てきます。それより悪役のガルシアの残虐性が酷いのでうんざりの展開。散々、悪逆非道振りを見せておき、成敗されるカタルシスを煽るドラマツルギーでしょう。
一応、最後になって冒頭の殺人事件の背景が語られますが今更の感、モロッコの麻薬村の掟とか言っていましたが移民の多いフランスですから因習に縛られた2世にありがちな悲劇と言いたかったのでしょうかね。
映画の前年に亡くなったフランスを代表する俳優ジャン・ポール・ベルモンドに捧ぐとのクレジットが出ました、最もオファーしたかった俳優さんだったらしい、ベルモンドさんとマルシャルさんは演劇の講演会などで一緒になることもあったようです。